5話 人の優しさ
4話の続きです。楽しんで読んで貰えるように書いたのでよろしくお願いします。追加、異世界人が話す文章の王雅をオウガに変更しました。
俺はロウさんとライさんとドライ村に向かっていた。
「このバナナってどんな味がするんだ?」
唐突にライさんが聞いてきた。
ずっと村に向かってる途中、持っているバナナをチラチラと視線が向いていたのを俺は見ていた。
バナナが美味しいと伝えた時に食べるのかなと思っていたけど全然食べる気配がなかった。あんなにバナナの木の前では食べたそうにしていたのにここまで食べずにきたことが不思議だ。
ずっとバナナが気になっていた様子だったから食べてみればいいのにといつ話題にするのか気になっていた。
「バナナは、甘くて柔らかいですね。」
その質問に昨日食べた味を思い出して教えてあげた。
我慢できなかったのか、それを聞いたライさんはバナナに齧り付いた。
「ラ、ライさん!皮は剥かないと!」
皮を剥かずに食べているのを見て慌てて忠告した。
「通りで食べにくいわけだ。でもこの皮も雨蛙の皮みたいな食感で酒のあてになりそうだけど、結局村まで我慢出来なかったわ。」
そう言ってライさんは笑っていた。
それにしても皮を食べるなんて思ってもみなかった。
似ているそのレインフロッグって魔物だろうか?
フロッグって事は蛙みたいな名前だよな。
蛙だとしても、蛙の肉は鶏肉みたいって聞いた事あるけど蛙の皮を食べるって聞いたことがない。
食べれるんだろうか…
それにこの世界の食生活って俺に合うんだろうか。
少し不安になってきた。
「次は皮を剥いだし大丈夫だろ!」
次はちゃんと皮を剥いで齧り付いた。
「うまっ!!何この食べ物、今まで食べた中で一番美味いんだけど!」
ライさんは興奮して目が見開いてる。
目がギラギラしてなんか怖い。
「そんなにか?」
ロウさんもライさんの反応を見て魔力箱からバナナを一本取って食べたみた。
「確かにこれは美味いな!これなら村の皆も喜ぶだろ。」
バナナを喜んでくれて俺も嬉しくなった。
歩いていると、木が目の前から無くなり森から抜けた。
うっ
目から空を隠すように右手を翳した。
眩しくて、日差しが強い。
目が日差しに慣れると、目の前には平地の壮大な草原が広がっていた。
「やっと森を抜けたか。王雅、ドライ村はこの先だ。」
ロウさんが草原の地平線を指差した。
見る限り、普通の草原だ。
多種多様の岩が転がってたり、ここが温帯地域と分かる緑草も30cmぐらいの高さしかない。
「オウガ、見る限り普通の草原に見えるけどなぁ気をつけろよ!草の中や上からもいつ魔物が襲ってくるか分からないからな!」
魔物を狩るのに慣れているライが注意してくれた。
この低い草の中から?と思ったけど確かに小さい魔物がいても不思議じゃない。
そう言われたら確かに怖くなった。
どんな魔物がいるのか全然知らないし…
毒とか感染する病気とか掛かったらと思うと気が気でない。
こんな時、魔物が何処にいるのか分かる道具があれば…
しかし、そんな都合のいい物はあるはずない。
これは気を引き締めないと!
草原を注意深く歩く中、岩の横を通った。
えっ?岩が少し動いたような…
「ロウさん、ライさん、その岩今動きませんでした?」
「「なに?」」
二人とも岩の方に振り向いた。
見た感じ、何の変哲もない普通の岩にしか見えない。
「兄貴、こいつは…」
「ああ、間違いない。ロックホーン…」
ロックホーン?
魔物だろうか。
二人の様子からしてもしかして強いのか?
魔物なら魔物図鑑で分かるはず。
岩を見て、魔物図鑑と念じる。
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図鑑No.4
岩角獣[硬皮類]
希少度 紫
(説明)
身を丸めて岩に擬態する。動きが遅い。岩と見分けがつかないので価値が高い。皮膚が岩のように硬いので防具に使用される。身は硬めで筋肉質で美味しい。
図鑑効果 魔力+10
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岩に擬態する魔物だったのか。
少しでも動いてなかったら分からなかった。
「オウガ!危ないっ!」
ロウさんが俺の背中を押す。
いつの間にかロックホーンが突進してきていた。
背中を押してくれたお陰で間一髪で躱わせた。
魔物の前で魔物図鑑をゆっくりと見るのは危険だな。
今までは襲ってこない魔物だったからよかったけどこれからは気をつけないといけない。
ライさんがいつの間にか両手に剣を2つ持ってロックホーンを
嗜めていた。
すると、ロウさんは魔力箱から大きい剣を取り出した。
「兄貴、今だ!」
ライさんに向かってロックホーンが突進するが2つの剣で受け流した。
誰もいない所に突っ込んでいったロックホーンは隙が出来る。
そこに、ロウさんが大きい剣を両手で持ち突っ込んで行った。
ロックホーンの横から思いっきり剣を振りかぶって首を切断した。すると、頭が空を舞い体がドスーンっと横に倒れた。
あんな硬そうな外皮を一刀両断していたのを見ていると圧巻だった。
近くに行きロックホーンをよく見ると、赤身と脂だろうか赤と白の入り混じった綺麗な断面は牛肉を彷彿とさせる。頭と体の境目に硬い皮膚が繋がっていないから安易に出来たかも知れないが、その断面には、力業ではなく技量が高いと窺える。
それにしても凄い。
首も相当分厚いのにも関わらず切断するのは普通そんな簡単ではない。もはや、プロの技だ。
「おう、オウガ無事か?さすがは兄貴だよな!」
「はい、大丈夫です。ライさんも凄いですよ!あの重さの突進を受け流すなんて。」
「よせよ、照れるじゃねーか!」
嬉しそうに人差し指で鼻の下を擦っていた。
「ライ!お前の魔力箱の中にこいつを入れてくれ!俺のは武器と森熊とバナナでもう入らん!」
ライさんは、ロウさんに言われて魔力箱を取り出した。
その魔力箱はロウさんのと見た目が違っていた。
「その魔力箱、ロウさんのとは違うんですね?」
「あ、それか?オウガは知らないよな。魔力箱は持ち主の魔力の波長によって見た目を変えるんだよな。よく分からんけど俺のは何故かこんなに尖ってんだよ。」
ライさんのは、ハリセンボンのように銀色の丸い箱に小さい棘が幾つも付いていて、ロウさんのは、赤色の四角い箱にストライプ模様が入っている。
魔力箱にも色々あるんだな。
面白い。
ロックホーンを魔力箱に入れ、三人は村に向かって歩いた。
だいぶ歩くと、車2台通れるぐらいの外道があった。
「ドライ村までもう少しだ。頑張ろう!」
「オウガ、頑張ろうぜ!」
ロウさんもライさんも慣れているのか疲れてない様子だった。
俺は流石に疲れた。
休憩無しでずっと歩いて息切れしているし、魔物に気を張っていて今にでも倒れそうだ。
『大丈夫かモヴ?』
そんな俺をいつの間にか寝ていてついさっき起きた二郎も心配してくれた。
こんな俺の様子に見兼ねたのか止まって待ってくれている。
「ここらで少し休憩するか?」
ロウさんが心配してくれた。
「はぁはぁ…ありがとうございます。」
「大丈夫かよ!これでも飲めよっ!」
とライさんが鉄で出来ているような水筒の見た目をしている入れ物を魔力箱から出して渡してきた。
「はぁはぁ、何ですかそれ?」
「これか?気薬入りの水だ。飲むと疲れが吹っ飛ぶぞ!ついでに水分も取れるしな、一鉱石二魔鳥だ!」
一鉱石ニ魔鳥って何だその言葉…
初めて聞いた。多分、一石二鳥の事だと思うけど。
「はぁ、ありがとうございます。」
その入れ物を貰って蓋を開ける。
開かない、どうやって開けるんだ?
「違う違う、これはこうやって開けるんだ。」
そう言って、ライさんは入れ物の下部分をしっかり持って蓋の部分を真上に引っ張った。
すると、ポンっと弾け飛ぶような音が鳴り蓋が取れた。
あれだと力がないと取れないし、力がある人用すぎるだろ!と心の中でツッコミながらもありがたく飲まして貰った。
上の蓋と下の入れ物の隙間がギリギリ過ぎて閉めるときも割と強めに押して取れないようにしていた。
飲んだお陰か、少し疲れが消えてきた。
「すいません、もう大丈夫です。」
「おっ、行くか?」
「無理はするなよ?」
ライさんは行く準備をして、ロウさんは優しく声を掛けてくれた。この二人はなんて優しいんだ。
一番最初に会った人がこの二人で良かったと心底思った。
続
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次回の投稿は3日後の18時になります。
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