4話 冒険者に出会う
よくある異世界物語だと思いますが楽しんでもらえるとありがたいです。すいません、設定上二郎を呼ぶ後の様子を文章に増やしました。追加、名前を名乗ってなかったのに冒険者が名前を知っていたので文章増やしたのと異世界人が話す文章をこの4話から王雅をオウガに変えました
卵をポケットに入れたはいいけど、リンゴと一緒にしているから少し心配だ。
早めにリュックサックみたいなのが欲しい。
どこかに町か村がないか探す事にした。
探していると、段々と日が暮れてきた。
もうこっちに来て1日が終わろうとしている。
早く寝る所を確保しないと。
魔物に襲われないような何処かいい場所を探した。
しかし、探しても何処もかしこも木ばかりで木の上に寝ると言っても魔物が来そうだし、地面に寝っ転がっていても当然襲われそうで不安だ。
どうしたもんか…
あっ、そうだ!
ピンっと閃いた。
二郎にさっきのリンゴの木を俺の周りに出してもらおう。
そしたら、木の中に人が居るとは思わないだろう。
壁となる側面はは息が出来るくらいに1mmぐらい隙間を開けてもらって、上は枝と枝で隙間をなくしたら完璧だ。
もしかしたら、リンゴに魔物が寄ってくるかもしれないけどそこはリンゴに集中してもらって食べたら帰ってくれる事を祈ろう。若干不安だが、これはいけるかもしれない。
それにリンゴの葉を集めて布団の代わりにすれば地面で寝るよりマシになるはず。
そういう事でここら辺で寝る場所を作ることにした。
「二郎!」
『なんだモヴ?』
俺は二郎に思った事を伝える。
『それはいい案だと思うモヴ。だけどモヴのスキルは2種類とも神様のだから使い放題だけど副作用で常に寝てないといけないモヴ。必要なら起こしてモヴ、それにリンゴの葉よりバナナの葉の方がいいモヴ。下は敷き詰めれるし、上には掛けれるモヴ。』
確かに、二郎の言う通りだ。
まぁ、二郎のスキルは仕方ないと思う。
それだけ凄いスキルだし。
それにバナナも食べたいし、よし!バナナにしよう!
晩御飯はリンゴとバナナに決まりだ。
そして俺は、早速取り掛かる事にした。
作る場所を決めて、そこに俺がそこら辺に落ちていた木の枝で俺が横になれるぐらいの幅の広さを大体で地面に書いて囲んでいった。
二郎がその線上にリンゴの時と同じように蹄で地面にノックして、一滴垂らす。すると、たちまちバナナの木が生えてバナナが実る。
その後は、同じように二郎が能力を使ってバナナの木を生やしていった。
俺はそのバナナの木の葉を何本か取って寝る所に重ねていく。
後は、二郎がバナナの木を囲む際に人一人分出入り出来る隙間が出来るように作った出入り口に葉で隠すように垂らしていく。
これで完璧だ!
外から見ると、違和感はあるが一つの大きなバナナの木みたいだ。
もし、この世界にバナナがあるんだとしたら間違いなく変だとバレる。それぐらいの違和感だ。
バナナの木の部屋に入ると、中からもバナナが取れるから好きな時にバナナが食べられる。
そんなこんなで完成した時には日は完全に暮れて、辺りは真っ暗になった。
明かりが何も無いので暗すぎる。
そんな時に二郎が動いた。
『暗いから灯りになる植物生やすモヴ』
そう言って、バナナの葉で覆われた地面に蹄を当てる。
すると、20cmぐらいの先が風鈴のような形の植物が生えた。
風鈴の中から電球のような雌しべの部分が蛍のお尻のようにチカチカと光り出した。
その植物を3本バランスよく生やしたら夜の電灯の灯りぐらい明るくなった。
これで安心してリンゴとバナナが食べられる。
しかし、この2種類だけで晩御飯というのもどうかと思う。
でも仕方ないじゃないか、この2種類しかないんだから。
そう自分に言い聞かせながらポケットから残り3つあるリンゴを一つポケットに残して取り出しバナナの葉の上に置く。バナナも一房もぎ取ってりんごの横に置いた。
「じゃぁ、二郎食べようか!」
二郎とリンゴを1つずつ分けて、バナナは余るぐらい沢山あるからとりあえず一房を分けて2本を俺の方へ残りは二郎にあげた。
最初はリンゴに齧り付いた。
明るい時も食べたけどやっぱり美味い。
ただ、ずっとポケットに入れてたせいか味が少し劣っているような気もする。
バナナはどうだろうか。
皮を剥いて、一口食べる。
甘いっ!
柔らかく滑らかな舌触りでこのバナナも今までの食べた中で一番美味い。
無我夢中でバナナを食べてしまった。
はぁ〜、美味かった。
「二郎、美味かったな?」
気づいた時には、全て食べ終わって二郎も満足して寝ていた。
俺もそろそろ寝るか…
何枚も重ねたバナナの葉の上に寝転がり、掛け毛布のようにバナナの葉を身体に掛けた。
こっちに来て色々あったけど、驚く事ばかりで疲れた。
明日は布団で寝たいから街か村を絶対探そうと決意して瞼を閉じた。
「お……………」
「………こ…………た……」
「……て」
何か聞こえる。
もう、朝だろうか。
目を開き、大きい口を開けて欠伸をする。
横を見ると、二郎はまだ寝ていた。
しかし、外に誰かいるのだろうか、声がする。
声のする方に耳を傾ける。
「なぁ、兄貴マジでこの木の実美味そうじゃね?」
「よせよ!そんな黄色い木の実初めて見るぞ!」
「いいじゃねーか。兄貴は心配し過ぎだって!」
「おい!」
聞いてる感じ、二人の声しか聞こえない。
それに、兄貴って事は2人は兄弟か何かか?
話してる感じ、お兄さんの方はしっかりしてそうだけど弟さんの方は何も考えずに動くタイプっぽいな。
だけど、ここに人がいるって事は近くに町か村がある可能性が大きい。
弟さんの方はともかくお兄さんの方は声からして優しそうだ。
そぉっと立って、入口の隙間から覗いてみた。
二人の大人が横並びで斜め姿が見えた。
一人がバナナを持って口論している。
バナナを持っている方が弟さんの方だろうか。
お兄さんの方は短髪でガタイが良く、筋肉質の身体に大体180cmくらいで背が高い。20代前半ぐらいだろうか。弟さんは耳に髪が掛かるぐらいの長髪の身体は細身で、こちらも筋肉質そうだった。こういうのを細マッチョというのだろう。身長は俺と同じくらいのお兄さんより少し低い170cmくらいでこっちも20歳前半に見えた。
そんなに歳は変わらなさそうに感じる。
少し怖いがここはこの人達に聞いてみるしかない。
そう思い、バナナの葉で作られた入口から話しかけた。
「あのー」
「「うわぁ!」」
二人とも化け物を見たかのように驚いた。
「なんか、すいません。驚かしたようで。」
急に話しかけて悪く思った。
「いや、大丈夫だ。少し驚いたけど。」
「なかなかやるな!木の魔物っ!人に化けるとは!」
へっ?
お兄さんの方は冷静に話していたけど弟さんの方は変な事を言っていて戦闘態勢をとっている。
いやいやいや、お前何言ってんの!?
「兄貴を騙せても俺は騙されないぜ!」
「いや、俺人間ですよ。」
「そうだぞ、お前何言ってんだ、それに魔物が普通謝るか?」
お兄さん!フォローありがとうございます。
「まっ確かに、兄貴の言ってる事も分からなくもないな。」
そう言って、戦闘態勢をやめてくれた。
「ほら、お前謝れよ!」
「すまん、すまん、悪かったな。」
お兄さんの言葉で弟さんは謝ってくれた。
「弟が変な勘違いして悪かったな。」
「いや、こちらこそなんかすいません。」
ってなんで俺謝ってるんだろう。
これは日本人の性なんだろうか。
「俺は、ロウっていうんだ。よろしくな。」
お兄さんは手を差し伸べてきた。
握手だろうか?
俺はその手を握る。
「俺はライだ。よろしくな!」
弟さんも手を差し伸べてきたので握った。
お兄さんの方がロウで弟さんの方がライっていうのか。
なんか海外の人の名前みたいだな。
「俺は、王雅って言います。」
「オウガっていうのか、よろしくな!それにしてもなんで木の中にいたんだ?」
ロウさんが不思議そうに聞いてきた。
「いや、それは魔物に襲われないように寝たかったからですけど。」
「えっ、魔物除香は持ってないのか?」
なにそれ!?
初めて聞く言葉で改めて違う世界に来たんだなと痛感した。
「魔物除香?それ、何ですか?」
「「えっ?」」
二人とも驚いていた。
「オウガ、そんな事も知らないのか?魔物除香は火を付けると煙が出てその一帯を煙が漂っている間は魔物が近づかないんだ。」
ライさんが教えてくれた。
なにそれ!欲しいんだけど!
要は蚊取り線香の魔物用みたいなものか。
「でも本当に知らないのか?冒険者なら町や村の外に出る為に説明を受けないといけないんだけどな。」
ロウさんが教えてくれる。
「冒険者?」
「お前まさか冒険者も知らないって言わないよな?」
「いや、流石に知ってますよ?・・・」
「だよな!」
ライさんが笑いながら答える。
いや、知るわけないし。
でも多分あれだよな。未開の地に行って宝や遺跡を探したりする職業だよな。でも、違う世界だから違う可能性もあるな。
ここは、話を合わせた方が良さそうだ。
「俺とライはその冒険者なんだが冒険者組合の依頼で森熊を狩りにこの霧の森に来たんだ。」
そうだったのか…
知ってるフリしちゃったけど大丈夫だよな。
名前だけ知ってる人もいるだろうし、大丈夫だろ。
それに霧が出てるから霧の森ってそのまんまだ。
「これから狩りに行くんですか?」
「いや、森熊の大物を狩り終わって帰るところなんだ。」
ロウさんは満足そうに笑う。
それを言う割にはフォレストベアというのは持ち運んでなさそうだし、荷物も少なく見える。
皺を寄せた顔に勘付いたライさんは俺に人差し指を向けた。
「オウガ、森熊が何処にいるのかって思っているだろ?」
「だって、見当たらないんで。」
「当たり前だろ。森熊ってのは大きいんだ。3メートルはあったからな。そんなに大きかったら手で運べないだろ?なぁ、兄貴!」
「そうだな。そういう時に便利なのがこの魔力箱だ。」
そう言って、片手で持てる大きさの箱を腰に下げてるポーチから取り出して見せてくれた。
その大きさの箱で何が出来るというのか。
意味が分からない。
「その顔、魔力箱を知らないな?まぁ、しょうがないだろう、高いからな。この魔力具は自分の魔力に比例して入る容量が変わるんだ。」
そう言ってライさんは声を高らかに出して自慢した。
「ところでオウガ、お前どこから来たんだ?魔物除去薬を知らないって事は冒険者でもないだろうし、こんな所に一人でいるって事は普通の領民でもないだろ?」
ロウさんが質問してきた。
この時がやってきた…
この質問が来た時の為に俺は考えていた。
そう、違う世界から来た事が知られたらどうなるか分からない。それにこの世界が魔物がいる事しかまだ分からない中で目立ちたくはなかったからだ。
「実は俺、記憶障害でほぼ何も覚えてなくて気がついたらこの森に居たんです。それに一人じゃないですよ。二郎!」
『もーよく寝たモヴ』
バナナの葉で出来た入口から小さい二郎が顔を出した。
そう、記憶障害で覚えて無いことにすれば分からない事があっても仕方ないよねという思考だ。
二郎を見た瞬間、魔物を見た習性なのか咄嗟に二人は攻撃態勢をとる。
「なんだ?その小さい生き物は見た事ないけど魔物か?兄貴は見た事あるか?」
「いや、最初は小植魔かと思ったが違うようだ。」
「俺の相棒で二郎って言います。魔物ですけど、俺の仲間です。」
「そうか、悪かったな。」
二人とも攻撃態勢をやめて謝ってくれる。
すると、二郎が足に突っ込んできた。
『魔物じゃないモヴ。あいつらと一緒にするなモヴ。』
痛っ!
「でも魔物図鑑に載ってたし魔物じゃないの?」
『この世界に来る為には嫌だけど魔物に偽装するしかなかったモヴ』
そうだったのか。
『それよりオウガ、この二人は誰だモヴ』
「この二人はロウさんとライさんって言って冒険者なんだって。」
「なぁオウガ、誰と話してるんだ?」
ロウさんが困惑した顔で聞いてきた。
「二郎と話してるんですけど。」
「お前魔物と話してどうするんだよ!」
ライさんも眉毛が八の字になっていた。
なんでだ?
二人には二郎の声が聞こえないんだろうか。
恥ずかしい。独り言言ってるみたいに見えたらしい。
『そうだモヴ。』
二郎!どうなってるんだ?
『モヴの声は豊穣の神様に与えられた天啓によって何の能力も使わずに王雅の頭に直接伝える事が出来る念話を使えるんだモヴ』
と言う事は俺が口で話さずに伝わるって事か。
『それ最初に王雅自分で言ってたモヴ。』
言ってたか?
『言ってたモヴ。思った事を読むなよって言ってたモヴ』
そうだったか、悪い悪い。
二郎これからは念話で会話しようか。
変な目で見られるの嫌だし。なっ?
「すいません、言葉が通じなくても心が通じればいいかなと思って。」
「まぁ、お前がしたいならすればいいけどな。」
「なぁ、記憶障害って言ってたが職業カードは持ってるのか?町や村に入るのに必要だぞ。」
ロウさんが教えてくれる。
職業カードってなに?
ここは違う世界で分からない事だらけだ。
「いや、必死に魔物から逃げてきた時に紛失しちゃって。」
「そうか、冒険者組合で登録すれば冒険者カードを貰えるからそれを身分証にすればいいぞ。そうだ、俺達の村に来るか?」
ロウさんが俺の事を心配して言ってくれた。
「そうそう、ドライ村には小さいけど冒険者組合もあるしな。そこで冒険者登録して夜は宿で泊まればいいさ。」
ライさんも俺の事を気にしてくれているらしい。
ほんと2人には感謝だ。
これで今日の夜は布団にありつけそうだ。
「ありがとう!ロウさん、ライさん!」
「ああ!」「おう!」
2人の村はドライ村というのか。
どのくらいの規模の村なんだろう。
「そういえば、その持ってるバナナ食べれますよ!」
ふと、ライさんがずっと持ってるバナナを思い出した。
「おぉ、この木の実バナナって言うのか。美味そうだよな。」
ライさんは涎を垂らしそうになりながらバナナを見つめている。
「オウガは知っているのか?この木の実を。」
「はい、知ってます。俺の故郷の果物なので!」
「そうなのか?だったらこのバナナというのがどこで実っているのかで故郷が分かるんじゃないか?」
ロウさんが当たり前の事を言ってきた。
確かに!?
墓穴を掘ってしまった。
この世界にバナナがあればそこが故郷ではないとわかってしまう。
だけどバナナがこの世界にあるとは限らないし、まだバレないはずだ。
「確かにそうですね。ありがとうございます。」
俺は悟られまいとスルーする。
「兄貴こんなにバナナはあるんだ村の奴らにも持って帰ってやろうぜ!」
「そうだな、オウガいいか?」
「いいですよ!」
バナナを大量にロウさんの魔力箱に入れてドライ村へ向かった。
続
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