這い寄る蠱惑の混沌 1
そんなこんなで。
重傷者は何名かいたものの、死者を出すことなく無事に戦は終わりましたとさ。
私が何してたかって? ドロータスちゃんはエールを送ってたよ。ドロータスちゃんはみんなに一生懸命頑張ってほしかったんだ。ドロータスちゃんにありがとうと言って。
まぁ、あんまし私達だけの力で勝っちゃうとね。あちらさんのメンツってものがね、あるからね。でも大きな被害が出ないように、泥沼とかでさりげなく支援はしていましたとも。しごでき。
「此度は世話になったな」
「お互い様ですよ。今後ともよろしくお願いいたしますね」
戦後処理も(大体マイファミリーに任せきり。いつもすまないねぇ……)片付いて一段落~、と、いきたいところなんですがね? だが残っているっ……! まだ……! 始祖のお仕事っ……!
そうです。保護した泥系種族の方々約千体の処遇をどうするか、早急に決めねばならんのですよ。
マッドノイド達以外は不可抗力だったとはいえ、ドロータスちゃんのこと好き好きクラブに入会したみなさんをいつまでも野ざらしにしておくのは、同じ推し活族である私の矜持が許しません。
姫様はついてくる者に夢を見せてなんぼの商売。ドロータスちゃんのハイパー魅力パワーの元に下ったこと、後悔させねーからなぁ。
うーん。でも現実問題、急にこれだけの泥数の行き先を用意する手段なんて――……あるわ。あったね、そういえば? どうやら切り札は、常に私の手の中にあるようだぜ……!
もっと情報集めてからのんびり決めるつもりだったけど、このままじゃ泥達は不安よな。ドロータスちゃん、動きます。
「オーじ……辺境伯様。眷属から聞いた話によると、ダルターロス山脈はどの国の領土でもない空白地帯とのこと。具体的にどの辺りまでがその領域に該当するのか、教えていただけませんか?」
「……もうオー爺でよいぞ。そうだな、お主らが冒険者の斥候と遭遇したゲエンナ大森林中間部、あの辺りから山脈までは、未だ領有権を持つ国家が現れたためしがない。開拓したくとも、維持が非常に困難であるからな。人族国家側も、明確に国境を引いておるのは大森林の林縁部までのはずだ」
「ほうほう――大体分かりました。ありがとうございます、オー爺。なるほどなるほど」
「……待て、今度は何をするつもりだ? まだ短い付き合いだが、お主が何事かやらかしそうな気配は察せられるようになってきたぞ……」
オーマイガー! まるで私がトラブルメーカー筆頭株主かのような言い草ですよ! 失礼しちゃうわ、まったくもー。
いいかい? 私はただね?
「ちょっと国でも興そうかな~、と思っただけですよ」
「そこらへ散歩に行くような気軽さで何を言っておるのだ???」
えー、だってドロータスちゃんからしたら、場所決めてスキル使用ボタンをぽちっと押すだけで、カップ麺より早く建国可能だからね。
そうです。我が頭脳が導き出した、たった一つの冴えたやり方。ここが、スキル【泥の城】さんの使いどころですよ。じゃあいつ使うか? 今でしょ! この案が、いいねと私が言ったから、八月三日は建国記念日。
さあ、観念して相談に乗ってくださいな。
***
「――――ううむ……話は分かった。が、スキルで建国とは……。常識外れにも限度があろうに……。各国の王が聞けば卒倒するぞ」
常識なんて誰かが勝手に決めたこと! Wow wow wow スイッチON! 出来るんだからしょーがないでしょー。
とりま気になってるのは、いくら誰かの土地じゃないって言ってもいきなり国建てるのはヤバイんじゃない? ってところ。その辺聞いてみると、開拓した範囲が土地所有の条件を満たしたとシステムが判断すれば、周囲の反応はどうあれ世界に認められたという事になるから、文句言われる筋合いは無いんだってさ。
ただ、当然偵察が派遣されたりとか、人族国家議会とかいう国を跨いだ組織みたいなのがちょっかい掛けてきたり喧嘩売ってきたりだとか、そういった懸念事項はあるみたい。魔王国ともお隣さんになる予定だから、仲良くやらないとね。
「儂は建国を見届けてから帰るとしよう。天幕で報告書をまとめておるから、準備が整ったら呼んでくれ。魔王様に報告すべき案件が、山のようにあるからな……」
「分かりました。準備ができ次第お呼びしますね」
さてさて、それじゃ泥達にも事情説明と意思確認しなきゃね。ヴァージニアちゃんとスイヒちゃんにお守りしてもらってた千体の泥系魔物、改めて見るとすげー数だよ。全校生徒の前で話してるみたいなもんだもんね。
でもまっ、去年の文化祭で講堂すし詰め状態の中、バンドのボーカルを経験した私にかかれば楽勝ですよ。なんか反響ヤバくて、今年もやる羽目になりそうなんだよな……。観客煽るの楽しかったからいいけどさ。まぁそれは置いといて。
じゃあまずは元気よく挨拶からいきましょーかね。せーの?
「泥系魔物のみんな~~! こ~んに~ちは~~!」
『ヴォ~ンヴィ~ヂヴァ~~!!』
「私はマッドノイド系種族の始祖、ケイオスイヴの~~? ドロータスちゃんで~~す!」
『ヴォオオオオオオオオ!!』
……こいつらノリいいな? 流石はドロータスちゃんの直系・傍系種族のみなさんですよ。
そっから真面目なお話タイム突入。ドロータスファミリーの立場や、国を興すこと等、現在の状況を説明しました。それらを踏まえた上で、ウチの国民になりたいかどうか答えてもらいましょう。さーて、どうなるやら。
「それじゃあいくよ~? 国民になりたい子は手を上げて~!」
『ヴォ~~~イ!!』
少女確認中……えっとこれは~、うん、全員だな! 挨拶の時からそんな気はしてたけどね。しゃーーないな~~~まったく~~、まとめて面倒見たるか~~~!
「よっしゃぁおまえら~~! ドロータスちゃんについてこいや~~!!」
『ヴォオオオオオオオオ!!』
うむ、これで最大の懸念事項は解決っすね。あとは国土面積……どのくらいにしとくかな。いくらマイファミリーと将来有望国民の能力が高いにしたって、平均的な市町村の大きさだと今の泥数じゃ維持するの難しそうだし。警ら範囲も広大な上に、超過っ疎過疎カントリーになっちゃうよ。
私一人じゃ決めらんないから素直に本人達に聞いてみたところ、見回りだけで言えば60㎢ほどなら探知スキル等駆使して三人でもギリいけるらしいです。一人のカバー範囲クソデカすぎんか?? ヒューマッドが数人増えてくれれば尚余裕が出来る、と。この世界基準ってみんなこうなのマイファミリー??
「いえ、姫様に育てて頂いた我々が特殊なだけですね」
「ですよねー」
ウチの子はすごい。終 制作・著作DHK(ドロータスファミリーほんとすき協会)
そういうわけでひとまず我が国の国土面積は、約60㎢の小国家スタートに決まりました。リアルのサンマリノ共和国と同じくらい。あの国の街並み好きなんだよね。国民が増えてきたら、あんな風に情緒のある都市に出来たらいいな。夢が広がりんぐ。まだまだ人口としてはクソ田舎の過疎町に等しいけども。
大体決めることは決めちゃったかな? 後は実際に建国してから考えればいいか。内政とかね。
そしたら次は、国土予定地を地ならしタイム。仮想リアルナワバリバトル、はっじまっるよ~!
「ほい、泥沼~」
「泥沼」
「どろぬまー!」
「ど・ろ・ぬ・ま♡」
まぁドロータスちゃんとマイファミリーで、塗り残しが無いように気を付けつつ泥沼に沈めていくだけなんですが。およそ30分で制圧完了。この泥侵食ムーブ、マジで制圧力ハンパないわ。オー爺とAWAO世界は、私にアホみたいな野心が無かったのを感謝すべきそうすべき。
こうやって毎日泥沼お手入れしてれば、システムさんも「維持出来てるな、ヨシ!」って判定してくれるでしょ。
さーて、これで下ごしらえも終わったことだし泥の城のメニュー画面を……あー、沼地を設置するとかあったなーそういえば。混沌の厄泥でいきたいとこなんだけど、そうすると敵側の根源を自ら自国内に誘致することになるんよな。原初の目覚め具合によっちゃ、いつ厄泥から恩恵受けられなくなるかもしれぬ身の上だし。
う~む……どうしたもんか――――。
『(――ドロちゃん、聞こえますか? 今、不思議パワーであなたに直接話し掛けています――)』
こいつ、直接脳内に……! って、いやいやいや誰誰誰?? ドロータスちゃんには唐突に愛称呼びでお姉さんボイスの脳直ASMR届けてくる嬉しい知り合いなんていませんけど??
『(もう~、せっかく武器におまじない掛けてあげたのに、知らない子呼ばわりは酷いんじゃないの~? まぁいいわ。ちょこーっとだけお話があるから、こっちに呼ぶわね。はい、カウントダウン、スタート~♪ さーん……♡ にーい……♡)』
「ちょちょちょっ、ちょっ!? あ、ちょ、ごめん三人とも! なんかヤバそうな存在に呼ばれたからちょっと離席するわ、あとよろしく!」
『(いーち……♡)』
「え!? 姫様、ヤバそうとはどういう――――」
『(ぜろ……ぜろ……ぜろ――……♡)』
システム「そこまでしなくても……」
現地住民とのふれあい回1に一文だけ空白地帯の説明を追加しました。その方が説明パートがスムーズにいきそうなので。




