ドキドキ!? 現地住民とのふれあいだよ! ドロータスちゃん 2
「そういう訳でして。確かに私達は混沌から生まれた者ですが、あの方々とは袂を別ちました。こちらから皆様に危害を加えるつもりはございません」
現地住民の方に我々の事を軽くご説明中のドロータスちゃんです。はい、全く信じてもらえません。混沌のこと嫌いすぎんか?
私に対するコボルトおじさん一号の態度が悪いので、ウチの子の機嫌も段々悪くなってきてます。それもこれもみーんな混沌勢のせい。ファミリーの平穏のために奴ら殲滅した方がいい気がしてきたな。
「……混沌野郎の言うことを信じろってか? 俺らを騙そうとしてるって考えた方が自然だろ」
「あら、そのような意味の無いことは致しませんわ」
「何……?」
だってねえ。
「敵対するなら、真正面から殴れば簡単に済みますので」
「……そうかよ」
住民を脅しているのかねドロータスくん? いいえ、事実を言ったまでです。
神と同等くらい強いのがいるなら相応の戦術・戦略を考えるけども、たぶん都市一つ程度ならマイファミリーだけでもチョチョイのチョイやで。
「その辺にしとけ。連れがすまない、話は分かった。一つ教えてほしい。つい先程、近くで大きな音や地響きがあったはずだが、何か知らないか? 俺たちはその調査に来たんだ」
コボルトおじさん二号の方は表向き普通に接してくるね。話が進められて助かりますな。しょうがないなー、その理性に免じて教えてやっか~。
「それでしたら、私達が移動のために土砂崩れを起こしました」
「…………申し訳ないが、もう一度言ってもらえるだろうか」
「移動の際に魔物や障害物が邪魔でしたので、土砂崩れを起こして全部押し流しながら山を下りてきました」
おじさん二号、めっちゃ頭痛そうにしながら「何なんだこいつら……」とか呟いてる。失礼しちゃうわ! プンプン!
姫様は退かぬ。媚びぬ。省みるのはさっきしたからとってもエライ! うむ、万事オッケーだな。
じゃ、こっちも聞きたいこと聞いとこっか。
「私からも質問があります。貴方達はこの先の都市から来られたのでしょうか」
「ああ、そうだ」
「まぁ、ちょうど良かったです。私達はそこを目指していたので。それで、一つお尋ねしたいのですけれども」
やっぱりあそこの住民だったかー。よし、これで教えてもらえるね。今後の方針についての重要事項をな――――!
「……何が聞きたいんだ」
「あの街で一番美味しい食事処と、観光名所を教えて頂きたいのです」
「…………飯屋と……観、光?」
「はい。食事と観光です」
それ以上に大切なものなんてある? ウチの子達と街中イチャイチャデートという文化的生活を享受するために絶対必要な情報だろうが……!!
「……なぁ、もういいだろ。俺らで判断出来るような案件じゃねえよ」
「…………そうだな。すまないが、一旦戻って上の指示を仰ぐ形になる。観光場所は……もし入都許可が出れば改めて紹介しよう。だが正直に言って、君達のように混沌の魔力を抑えきれていない存在を都市内に入れる許可は下りないと思うがな……」
えー、どないせーっちゅーねん。一応、魔力操作の練習してダダ洩れ状態は回避出来てるはずなんだけど。天空闘技場的な場所でオーラを閉じる修行とかするわけ? なんか方法ないのかね。
「姫様、『隠蔽』というスキルがあれば可能かと」
「ほう。我が家では誰も習得していませんね。もしかして、貴方達は使えるのですか?」
もしかしても何も、さっき鑑定で見たから覚えてるのは分かってるんだけどね~。
「……ああ、斥候が本職だからな」
「では実際に見せて頂いても?」
「……やむを得ないか。ほら」
お~。おじさん二号の魔力が完全に見えなくなった。色々と使えそうで便利だね。見破るスキルもあるのかな? あ、おじさんのスキル欄にあった『看破』あたりがそうかも。後でマイファミリーに聞いとこ。
『相手のスキルをラーニングしました! 【スキル:隠蔽】を習得』
はい覚えましたー。お手本あざま~す。えーっと、魔力を隠蔽……こうかな?
「これで如何でしょう」
「………………報告に付け加えさせてもらおう。はぁ…………特異進化体に新種族に混沌関係と戦魔神の話に地響きの調査結果……。どう報告すればいいんだ……」
こうしておじさん二人は、背中に哀愁を漂わせながら帰って行きましたとさ。お仕事大変そうだね、かわいそうに。
さて、おじさん達が今回の報告を上げてからその結果をまた伝えに来てくれることになってるけど、当然ウチらはそれまで都市内には入れない。
私もわざわざケンカに発展しそうなことするつもりはないから、大人しく待機してるよ。ドロータスちゃんが何しても良いと思ってるのは、明確に敵と判断した奴だけです。
でもさ、こんな森の中でいつ来るかも分からないお返事を待つなんて、普通は了承しませんよ。普通はね。残念ながらこのドロータスちゃんは常識では測れませんので、こんなことが出来ます。
まず泥をたくさん作りまして、それをこねこねしまして~……はい、どジャアァぁぁぁ~~~ン!
「即席のお家完成~っと。じゃあみんな、中でまったりしてよっか」
『ドロバニアファミリー ~泥の屋根のお家~』と名付けよう。まぁぶっちゃけ、まともな神経してたら私達の機嫌損ねるのが悪手だって考えに至るだろうし、そこまで待ちぼうけ食らうことはないでしょ。
その間に隠蔽をウチの子にも覚えてもらいつつ、待機時間によってはちょっくら山へ泥採りに行ってもよし。泥ティーでもしばきながら、顔良しマイファミリーとイチャイチャしてどっしりと構えていこう。
「姫様、よろしいでしょうか」
「ん~? おじさん達の態度まだ怒ってんの?」
「そこも業腹ではありましたが、姫様がお許しになられたのなら飲み込みます。そうではなく、我々に対して友好的な結論に至らなかった場合の対処、という点です」
ふむ、なるほど。おじさん一号は最後までこちらを疑わしい目で見てたし、二号も表面上は取り繕ってたけど、本心はどう思ってるか分からんよね。一応そうなる可能性も考慮はしてるけど、結局は敵対されてもそれはそれでって感じなのよね。何故ならば。
「こっちの敵になるって言うんなら、返り討ちにしてあげればいいだけだよ。私達が負けると思う?」
「いいえ。全く」
ですよねー。ま、ビャクレンもとりあえず確認してみただけって感じだね。ちゃんとお仕事していい子だからなでなでしたろ。
「ビャクレンは真面目でえらいなー。ほら、こっちおいで。よしよ~し」
「ひゃっ……ひ、姫様……皆の前で、恥ずかしいのですが……」
「姫様~! わたし! 次わたしもー!」
「ふふっ、では私もぉ、お願いしますね♡」
ドロータスちゃんなでなでコーナー、一瞬で行列が出来る人気スポットになりましたね。あ~、ここまで結構波乱万丈な泥生を送ってきたから、たまにはゆっくりイチャついてるだけの日もあっていいかも。
「あ! もしあっちがやる気だったらねー、ぜーんぶ蹴散らして逆に都市占拠しちゃおーよ!」
「あらぁ、それは良いですね♡ では泥の城建設予定地のぉ、候補に加えておきましょう」
「となると、攻め返しの際は速度重視の制圧戦ですね。眷属三人で泥沼を展開すればすぐ済みそうですが、万全を期す為にまず今晩から偵察を出して地形の把握を――――」
え~~っと、推定・城塞都市ハウメイアの皆さん。本当に下手な真似はよした方がいいとドロータスちゃんは思いまーす。
一応ね? 行く先々で武力行使なんてしてたら、結局は混沌勢と同じ扱いになっちゃうから、今後を考えると最終手段ではあるものの。
でも私がナメられた場合にマイファミリーを抑えるの、多分無理だから……。
VRゲームランキング月間一位になってました。皆様、本当にありがとうございます。椅子ごとひっくり返りました。
作者の書きたいものを垂れ流してるような小説ですが、今後もよろしくお願いします。
※序盤の百合成分が無さすぎかなと思ったので、MUD GIRL1と3をほんのちょっとだけ加筆修正しました。リア友ちゃんの性癖はもうダメです。




