MUD MAID 家族 2
そこから話を進めていくと、どうやら二人は特に行く当てもないらしいから「今、家に誰もいないんだ……来る?」と誘ってみると「ぜひご一緒させてください!」と大感激状態だった。こんなろくでもない誘い方する相手にホイホイ付いてくるなんて心配になっちゃう。まったく、悪い泥たらしだよドロータスちゃんは。
それによって二人……二泥? 泥の人だし、人でいっか! ……は、友好NPCとなり、設定で『友好NPCへの攻撃』をオンにしない限りはフレンドリーファイアの心配もなくなり安心。これで帰り道も泥沼作り放題だぜ。
ところで気になったのが、なんか二人とも生まれたてのバブちゃんにしては普通に会話成り立つし、色々と知識あるの何でなのかなという点。
そこらへん聞いてみると、混沌の厄泥にはやっぱり色々と混ざってるらしく、知能の高い生物の因子を多く持って生まれた個体というのは、厄泥とその源流の中に混在している知識とかもある程度継承するのだそう。
でも個体ごとに知識の偏りは結構あるみたいで、この洞窟のことは知らないんだって。残念。
ますます厄泥に対する危険度と忌避感が高まるお話、ありがとうございます。ドロータスちゃんなんてそれらがもう凝縮されちゃってんじゃん……。バーチャルで良かったと思ってなんとか受け流しとこう。
あとマッドンは、一定量を超える魔力が含まれた泥に魔物の因子が混ざって生まれるらしいんだけど、通常だと人の因子が融合することはないんだってさ。何の因子だろうが混ぜ合わせられちゃう混沌の力が無いと、マッドノイド系列にはならないとのこと。
ちなみに、そのマッドノイドが発生する『流れ』を混沌の中に作ったきっかけはなんと! 他でもないこのドロータスちゃんの進化だよ! あれ? もしかして私って世界的な大戦犯……?? 言わなきゃ、バレへんか……!
まぁそういう理由で、ある程度以上の知能を持ったマッドンってのは、通常だと中位・上位の魔物を取り込んでないと発生・進化しないみたい。
例えば、沼地にゴブリンキングやらドラゴンやらの死骸が放置されてるとかでもなければ、頭がいいマッドンなんて滅多に誕生しないと。
そんな状態だから、現在マッドンには群れレベルの集まりは存在しても、村や町といった規模の社会的集団は皆無って話。
仮想異世界と言うだけあって、ちゃんと色々な設定があるんだね。
ん? ひょっとして泥系種族市場って、マッドノイド系列からしたらやりたい放題のブルーオーシャン状態じゃない?? 国とか興しちゃうか~?
でもドロータスちゃん、始祖だからって上に立つお仕事はしたくないな~。ドロータスちゃんは政治が分からぬ。ムカつく方は直接おビンタで分からせて差し上げたいですわ!(申し訳程度のお上品要素)
そんな泥トークを交わしながら私達が何をしてるかというと、三人揃って地道なスキル上げ作業ですね。
あれよ、泥地帯作ってMP無限回復しながら魔法を空撃ちしてパッシブスキルもアクティブスキルもまとめて鍛えるぜ~とか、そういう効率重視のやつ。
調べてみると、戦闘しなくても底上げ出来る方法はいっぱいあったからね。まだバブちゃんの二人には、安全地帯で自主トレしててもらいましょう。
うむ。ドロータスちゃんは、この子らを育てることに決めたよ。初めてまともに会話したこの世界の住人だし、私に懐いてくれてるもんね。こう見えて私だってたまには泥恋しい夜もあるんだぞ。独りぼっちは寂しいもんな……!
愛着が湧いてきたからか、あの正気を削られそうな見た目も可愛く見えて……わりぃ、やっぱこえぇわ……。進化後の姿に期待しておきます、切実に。
そんな二人を養うため、明日からせっせと泥集めに励みますよ。まずは厄泥だけで種族値一万貯めてもらわないとね。ドロータスちゃんと同じような道を辿らせれば、まぁ間違いはないだろうし。家長って大変ね。
***
ドロータスちゃんは考えました。現状の泥スポットだけじゃごはん不足なのは確定的に明らかだと。
解決策はカンタン。泥が無いなら採取場所を増やせばいいじゃない。ズバリ、5階から下の泥スポットを探そう! これです。簡単だよな~、言うだけならなぁ?
だってそうなると、原初混沌の使者とかいう三体お得セットの中ボスらしきものを倒さなければならないんスよね~~。あんなクソキモ触手怪人を使者として送ってこないでください。主人の常識どうなってんの。
まぁ死んだらしゃーなしってことで、やるだけやってみますか。昨日そこらへんで暴れ回ったおかげでドロータスちゃんもレベル150になってるからね。なんとかなるなる鳴門海峡! みんな、泥は持ったな!! 行くぞォ!!
「ッシャオラァ~!! ケンカの時間だコラァ!!」
「「「~~~~~~~~♪」」」
なんか聖歌隊のソプラノボイスみたいな声でお出迎えされたんだけど~~~。ギャップ萌え狙いならやめとけ、向いてないから! どうして混沌関係ってホラー寄りばっかなの?? 自称・混沌の泥に咲く大輪の花ことドロータスちゃんを見習うべきそうすべき。
とりま三体固まって動いてる内に、初手威圧泥沼安定ってことでデバフ&沼設置。でも原混くん、天使っぽいシルエットだけあって地面から若干浮いてるんだよね。
これじゃ地面を泥にしても効かないじゃな~い! と思ったそこのアナタ! これで終わりじゃないんです! チャンネルはそのまま、瞬き禁止ですよ!
ドロータスちゃんはね、泥の形を自由に変えられます。ということは~?
「私のターンッ!! 泥を有刺鉄線状に変形させて拘束し、沼に引きずり込むッ!!」
即死は当然効かないだろうし、何らかの状態異常耐性持ってそうだけど、麻痺と衰弱は入ったから無問題! よ~~っし! 麻痺切れる前に火力技しこたまブチかましちゃうかんな☆
「生理的に無理なんでなるはやで死んでくださーい。 泥ビーム充填開始。カオスフュージョン《アースシェイク×ウォーターストリーム》で詠唱開始。では、待ち時間にこちら私からのサービスです♡ 食らえ泥触手!! 触手には触手をぶつけんだよ!! おらおらおらおらっ!!」
新スキルの火力試験に付き合ってもらいましょう。拒否権はないです。
泥ビームは泥飛ばしレベルMAXで覚えた『泥鉄砲』ってスキル。チャージ可能で、チャージ時間に応じて単発、マシンガン、ビームになるからフルチャージは泥ビームって呼んでる。撃つとき絶対「薙ぎ払えッ!」って言いたくなるやつ。
カオスフュージョンは混沌魔法。別の魔法同士を掛け合わせて合体魔法に出来るという、ロマン溢れるカッケー魔法……なんだけど。掛け合わせる対象の魔法は、カオスフュージョンと別枠で詠唱が必要になるから、本来は最低三人いないと合体魔法が撃てないんだよね。おまけに無詠唱魔法は適用外というね。手軽なロマンなんて存在しないんや……!
だけどもだけども~?? 並列思考持ちのドロータスちゃんは、一人で問題なく撃てちゃうんだな~これが。さすがに泥人は格が違った! ちなみに泥触手はただ泥を触手に変形させてベシベシやってるだけの素殴りだよ。
と、言ってる間にも準備が完了してしまいました。裁きのお時間です。たーんと召し上がれ♡
「薙ぎ払えッ!(言った)泥ビィィィイイイーーーッム!! アーンド! マッドストリィィィ~~~ム!!」
泥+泥=最強! 実にシンプルで美しい方程式ではないか。う~ん、マンダム。ちなみにビームは日傘の先端から出してます。これで瀕死くらいまで持っていきたいね。
さっさと死ねこらぁ!!
『クリティカル! 原初混沌の使者Aに743,368ダメージ! 原初混沌の使者Aを倒しました!』
『クリティカル! 原初混沌の使者Bに718,929ダメージ! 原初混沌の使者Bを倒しました!』
『クリティカル! 原初混沌の使者Cに731,274ダメージ! 原初混沌の使者Cを倒しました!』
『MISS! 《マッドストリーム》は対象が存在しませんでした』
『レベルアップ! レベル159になりました!』
『【原初混沌の使者の魔石】を入手』
『【原初混沌の使者の触手】を入手』
『【混沌のリボン】を入手』
『【スキル:泥鉄砲】Lv.3→Lv.4に上昇』
『【スキル:混沌魔法】Lv.8→Lv.9に上昇』
『【スキル:地魔法】Lv.13→Lv.14に上昇』
『【スキル:水魔法】Lv.13→Lv.14に上昇』
『【スキル:魔力操作】Lv.9→Lv.MAXに上昇』
『【称号:混沌に抗う者】を獲得』
「うわぁ~」
あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ……! 『泥ビームを直撃させたと思ったら、合体魔法が当たる前に敵が死んでいた』……! いやね? 確かにドロータスちゃんはそりゃあもうつよい子に育ってたよ? ドリゴブくんなんてもはや、近付いて蹴るだけで六桁ダメージ食らって吹き飛ぶからね。
でもさ、こいつらたぶん中ボスじゃん? ひょっとしたら耐え切られちゃうかな~と思って一応は合体魔法で追い泥しとくじゃん? どうも敵を過大評価しすぎたというか、むしろドロータスちゃんをまだまだ過小評価してたようですね。ワンチャン泥触手もいらなかった説ある。
今度来たら、あらかじめビームチャージしといて開幕ぶっぱしてみよ。慈悲は無い。
さてさて、脅威……と私が勝手に警戒してただけのクソ雑魚ナメクジは消え去った。レッツゴー新階層!
待っててねマイファミリー! 今夜はとれたて泥づくしのマッドティーパーティーだよ!
☆もブクマもたくさん頂きありがとうございます。
まだまだ成長期のドロータスちゃん一行をよろしくお願いします。




