創作魔法もある、文明を伝える
本日もヒューラルの人達に信頼されるために依頼をすることに
あれから4人で相談して
俺1人、タスメさん1人、品子さんと蜜巳さんの2人の3組で分かれることにした
本当はタスメさんと一緒に男女に分かれて何かしらの依頼をやりたかったけど、タスメさんのできそうな依頼……主に畜産の手伝いの仕事がどれも「指定人数1人」と書かれていた
しかも、早い者勝ちで周りの冒険者の人達が結構積極的に選ぶから考える暇もなかった
そうして俺も1人で出来る依頼を受け取って
1人で街を歩いている、ちと寂しいが久しぶりに1人か
「………」
首にかけられている者を空に掲げる
キラリと太陽光に反射したギルド証が輝いていた…だけど爽やかな空色に染まっていた視界に異物もあった
「やっぱり、魔王城はどこでもあるんだな」
昨日のペット捜索の時にも見えたけど、魔王城はどこにいても目立つ
……まあ、そのメッチャ先の目標は一旦置いといて目先の依頼を達成するか
改めで依頼書…黒板だから依頼板か?ともかく依頼を再度確認してみる
今回受けた依頼はある家の門の修理
ヒューラルに来てからこの街の壁や城壁や壊れている所を何度も見て来た、依頼掲示板でもその手の依頼が沢山あった、ギルドから無償で直している所もあるらしいけどそれでも手が足りないから常にあるらしい
俺達と比べられている「何か」が原因だと思うけど、尻拭いとかではなく正直直したい気持ちもあった
土木工事などの経験は無いからちょっと「自分の能力で行けえるのか?」と心配な気持ちもあったけど、赤文字の特記事項とか必須条件とかが書かれていない、他にあった修理関係の依頼もそんな感じだろうか?
「我はアルティマ・ザン・ガーゴイルだ
主に水属性を扱うが、それ以外も天領の才を持っておるぞ」
そう自分を鼓舞するように伝える、天領の才とは…まあうん、天賦の才を軽く魔改造した…要は造語だ
思い付きで造語を作るのも楽しいものだ、すぐに忘れるけど
「にしても……」
この街に来てからしばらく、経過して
未だに怯えていたりずっとこちらを見ていたりしている人はいるけど
最初に比べたら結構マシになったか?
王都セカンドルトにいる時はほとんど王城内にいたから街の様子をよく分からなかったけど、見るからに段々マイルドになってきた気がする
今でも石が飛んでくることを警戒しているけど、あれ以来は直接的な被害は一切として受けていない
もちろん、日替わりで止まっている宿にも被害を受けている様子はない
そんなことを考えながら歩いているとたどり着いた
「ここか…?
随分と壊されているな」
ちょっと裕福な家庭なのか、縦だけではなく横方向にも広い家にたどり着いた…家というよりかは屋敷か?
建物自体は他の家と変わらないけど、やっぱり横に2倍ほど広い
裕福と思ったのは周囲に鉄柵のフェンスで囲まれていたからだ、けど入り口が崩壊している
人は通れるが丸出しだ、防犯としては結構危なそうだけど街の平和を考えると大丈夫なのか?
屋敷の扉に鍵がかかっているから大丈夫だと思いたいが
さて、とりあえず依頼人に会いに行くことにしよう
そう思って、扉をノックしたのちに
扉が開く前に一歩下がってその場で土下座をする
「はーい誰で…うわ!?」
「初めまして、俺は異世界より参りました空網千斗と申します
色々と事情でヒューラルの冒険者になりまして人々から信頼を得たいと思います
門の修復と聞いてどうしたらいいかまだよく分かっていませんが
本日はよろしくお願いします」
「ちょ…ちょっと!?そこまでかしこまってどうした!?」
「えっと、いつもいろんな人に初対面で怯えられていたので
思いっきったことをしました」
「わ、わかったわかりました!
誠意が伝わったから頭を上げて!」
結構ゴリ押しなやり方だったけど、恐怖などの感情を驚きなどで上書きする作戦
多分上手く行ったかもしれない
自分のプライドとかは別に考えてない
起きてみると目の前には普通の男性がいた
「はい、改めましてよろしくお願いします」
「ああ……本当にウワサにウワサが重なって、意外と礼儀正しいんだな」
ウワサにウワサが重なって?
元々あった恐怖の象徴に「思ったよりもいい人じゃないか?」と言うウワサも広がっているという事か?
……いい予兆なのかもしれない
「先ほど、門の修理を分からないと言っていたが
土魔法は使えるか?」
「はい、六大元素を扱えます!」
「それなら良かった、ちょっとこちらで作業着など準備するから待っててくれ」
「はい!」
そう言うと一度扉が閉まった、着替えとかもあるかもしれないししばらく待ちそうだ
待っていると何かよからぬ噂も立てられるかもだし、1回敷地から出て周囲を見てみる
この街に来てある程度の日数が経過したし、石を投げられた時のような大変な場合を除いて結構街の様子を見ていたけど、人間以外の種族を見てないな
一応ヒューラルは主に人間の種族が住んでいると聞いているが「主に」であって、少なからずそれ以外のケモミミの生えている獣人、鈴が必ず体についているスズノネ族、マナのケムリ?でできているムロム族の三種族を見たことが無い
少しはいると思ったし見たかったんだけど……こんなにもいない物なんだろうか?
「お待たせしました、これのサイズの作業服なら…………あれ?」
「あっ、すいません、ちょっと街を見ていました」
「街を?どうして?」
「王都にいた時に、この世界の事について勉強をしました
俺のいた世界では人間しかいなかったので、勉強した時に聞いた獣人とスズノネ族とムロム族が実際にどのような姿をしているか見てみたかったのですが…
初めてヒューラルに来てから周りを見ても一切見たことなくて…」
「あーそれですか……この門も含めて色々とありましてね…
元からいるのは少なかったけど、最近は余り見て無いな…」
「湖が汚れたあたりからですか?」
「それよりちょっと前からだな、ここの水害だけでなく世界中のあちこちで問題が起きてから、自国の復旧作業の為に故郷に帰ったりした人もいて、国の往来も相当減ったな…
ほかの種族が見たかったら別の国に行くのがいいと思う」
「分かりました」
この国の事が終わって次の国に行くまで見れない可能性の方が高いみたいだ
湖の汚れよりも前か、比べられている「何か」がそれより前に来たのか、魔王が現れたことによるのが原因か…?
「色々とある」ことは詳しく聞いたら結構長くなりそうだし…依頼前に長話もアレだし、いつか聞けると思うし後にしよう
恐怖の対象にされている勇者によって長時間拘束されるのは相手にとって苦痛になる可能性もあるから深くは聞かないようにしよう
「情報ありがとうございます、では門の修復を始めましょう
では、何からしますか?」
「じゃあ、この作業服に着替えて
破片とかをまずはゴミ捨て場まで捨てに行こう
1年もこのままになっているから」
「分かりま………1年もこのまま!?」
「他の所の手伝いとかをしていたからな
それにここだけでなく、崩れていたことろが多くて1年経っても国中の壁とかも直らなくてな」
……1年も?そんな前から脅威が!?
魔王城が出たのもそぐらいなのだろうか?それとも「何か」か?
そんな疑問を思いながら作業服に着替えて作業開始だ
荷車をお借りして、ちょっとツタやコケのついている門の欠片を荷台に入れていく
2人で持ったり手分けしたり、周囲にいた人も時折手伝ったりした
俺が勇者だったけど、ウワサを気にしない人とか「ウワサにウワサが重なった」礼儀正しいと思っている人が多かった……本当にありがとうございます
手伝った人々に腰を90度曲げて感謝を伝えて行った
そうして午前中の内に片付けは済んで、門のあった所はスッキリした
後は門を作ればいいのかな?
「おつかれさま、休憩しなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫です、全然動けます」
「それだったら次は……石柱を作ってもらおうかな?」
「石柱?!」
「骨組みの鉄柵は作っておくから気にしなくていい
門は買ってあるからそれで後は調整すれば……あ、そういえば初めてだったっけ?」
「はい、先ほど土魔法と聞きましたが
作れますでしょうか?」
「六大元素が使えるほどの想像力ならできる」
「分かりました、では教えてください」
「ああ」
そう言って依頼人は奥から何か持ってきた
なにやら、複数の岩に見えるけど新品の白い石材だろうか?
「魔法は思いの力を使っている、ってあるが
建築物とかの大きいのや剣のように複雑な物は難しいが
石柱みたいな単純である程度の簡単なものは土魔法を使えれば、この石材で作ることもできるんだ」
「そうなんですか!?てっきりモノづくりする創作魔法は出来ないと思っていたが」
でもこの説明だと簡易的な物は作れるみたいだ
剣とかはただの木剣とかは出来ても、鋭さの強い物を作るとかはちゃんと鍛冶の経験をして想像できるようにしないといけないし
家や屋敷のような、長期間保てるようにしなきゃいけないモノは魔法ではなくキチンと建築士にお願いしないと頑丈にならないという事だろう
「まあ、俺の屋敷とかは建築できる人にお願いしたけど
ともかく、この新品の石材を使って石柱を作って欲しい
さっきまであったのはもう風化とかして使い物にならなくなっていたからな」
「……それって、俺の好きなデザイン人していいという事ですか?」
「ああ、普通でもいいし別の世界のセンスとかを取り込んでもいい」
好きなデザイン……たしかに土魔法を使う時は地面の土とか石とかを浮かせてたり壁を作ったりする
応用すれば作れなくはないけど
工業高校の建築科とかでもない普通の高校だからこそデザインは出来ても作れるのだろうか?
取り合えずモノは試しだ、やってみよう
頭の中で脳内に石柱をイメージして目の前の石を動かすように意識する
非常に重そうな石だけどいとも簡単に持ち上がって動かせる
すげえ!まるで自由度の高い建築ゲームみたいだ!
すこしばらしたり固めたりすることもできて、まるで子供のブロック遊びみたいに童心に帰りそう
「初めてなら、色々と試してみてもいいよ?」
「あ、いえ、仕事中なので」
あぶないあぶない、夢中になる所だったが今は仕事中だ
さっきまで遊ん…じゃなくて色々と試していた石材を二等分する、門の石柱は右と左にあるもんだから
そうしてまずは普通に立方体にして見る、自分の身長よりも少し高めの「大体このぐらいの大きさかな?」ぐらいのサイズにして、入り口の両サイドに置いてみる
「立方体か?そのデザインにするの?」
「いえ、取り合えず仮に置いてみただけです
どの位置に置けばいいですか?」
「あっ、それ伝え忘れていた
すまない、今ちょっと寸法を測って来るから」
そう言うと近くの納屋のような所に行き、図っているような様子を見た後に地面にゴリゴリと正方形を描いた
「この枠の太さにして欲しい、高さはこれぐらいでいいから
キッチリではなく大体でいいよ」
「分かりました、ではちょっとデザインも入れて見ます」
「ああ、ちょっと楽しみだな」
ちょっとプレッシャーを感じながらも脳内設計を始める
しかし、俺のデザインか…急に言われても思い………浮かんだ、
俺はアルティマ・ザン・ガーゴイル
そう、ガーゴイルなんだ
何気なく選んだこの仕事は、もしかすると運命であったかもしれない
あっという間に頭の中に構図が浮かぶ
「思い浮かばないか?」
「いえ、ちょっと考えていましたが思い浮かびました」
「じゃあお願いします」
出来上がった立方体の石柱の1本の前に立つ
地面にある正方形を見て太さを改めて確認して、作り始める
石柱を削って外見をレンガ造りにしていく、下のみ大きな土台にして安定感を持たせて…これだけでも白色に影で黒のコントラストがあって我ながらオシャレに見える
「おお、こちらの世界と同じような………」
「すいません、まだです」
「お?まだするのか?」
再び魔法をかけて、更に成型していく
何も整形していない上部の姿を変えていく
ちょっと複雑な形だけど初めての創作魔法で魔力の限界まで全力を出す
頭の中にファンタジーの姿にある悪魔の姿、それも羽を広げて座り込んでいる姿
言葉通りの「ガーゴイルの形」にしていく
「えっ!?こ、これは」
ちょっとずんぐりむっくりな形をしてしまったけど、ガーゴイルの姿を作ることができた
邪悪な笑みを浮かべていて、太い筋肉の手足にコウモリのような大きめの翼
初めてにしては結構満足な形を作れた
「さて…もう1つ!」
石柱は2つある
ちゃんとシンメトリーになるように同じような形に仕上げることができた
「ふぅ…ハァ……できた」
「えっ、これはいったい?」
かなり疲れたけど、翻訳分までの魔力を全部を使ってはいないみたいで良かった
「『ガーゴイル』です」
「がぁ?ごいる?」
「はい、俺の世界にあった文化の1つでありこのように門の石柱の上や入り口の上部などに悪魔を模した飾りであって元々はその口から厄災になるほどの水それも洪水ほどの量を出す悪魔であって恐怖の対象とさせられていたっておとぎ話がありますが最終的には討伐されて見せしめの為に門に飾られると他の悪魔が恐怖して厄災が訪れなかった逸話があり強い魔物を模した石像を飾るように魔除けの為に飾られるようになりましたそれも魔物の一部を武器鍛冶とかに利用するような形であって俺はアルティマ・ザン・ガーゴイルと言う別の名前もありまして憧れているのもありますなので作りましたがどうでしょうか?」
実際に「ガーゴイル」ってノリと雰囲気でしか知らないけど俺はそういう認識をしている
つい早口が出てしまうほどだ
「って!?1人で一方的にまくしたてまくって話しまくってすいませんでした!」
「いや、気にしなくていい
今の話しは早口すぎてよく分からなかったけど、でもこれは…」
「これは……?」
文明の違いとかセンスの違いで引かれたか?
「凄くカッコイイな、本当に気に入りました」
「おお!それは良かったです!」
「今の説明がよく分からなかったけど、要は『魔除け』みたいなもので
勇者ソラアミセントはそれに憧れていてごっこ遊びをしているという事か?」
ごっこ遊び……そう言わるとなんだか恥ずかしくなってきた
「すっげーなにあれカッコいい!!」「おとーさん!うちにも作って!」「ええ~作れるかな?」「あの勇者が作ったのか?」「羨ましいなー」
近くを歩いていた親子たちや通行人ががこちらのガーゴイルを指さしてそう話していた
引かれると思ったけど、魅かれたようで本当に良かった
美的センスに関してもこの異世界でも通じたようで本当に良かった
「人集まってきそうだし、鉄柵や門はこちらでやっておくよ」
「え?大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、ちょっと組み込むのは魔法を使うまでもないからな
はい、じゃあこれで」
そう言うと依頼料を受け取って…アレ?
「ちょっと待ってください?少し多くないですか?」
「オマケだ、いい意味で注目を浴びれそうだからな」
「ありがとうございます!」
こういった善意は変に遠慮はせずにしっかりとした感謝を伝えて受け取った
「それでは本日は失礼します」
「ああ、本当にありがとうございました
礼儀正しくて非常に良かったことを周りに伝えておきますね」
「ええっ!?本当にありがとうございます!!」
良い噂を広げるのは依頼料以上の価値があって本当に助かる、作業着を返して別れを告げてそのままギルドに戻って報告と手数料の手続きが終わった
よし、明日からも次の依頼を見て頑張って行こう
このまま順調にいけば俺たちに怯える人もいなくなるだろう
……それに、いつかあの名前を忘れたけどあの子供と和解もしたいな
途中の句読点抜き改行無しの長い説明は
オタク特有の早口描写と思ってください




