目的は見える、解決策は……
馬車に戻ってみると特に問題なくタスメさんは待っていた
再び馬車の乗り走らせて、多分数分
この異世界に分という概念は無いけど、それぐらい短い時間が経って
嫌なにおいが強くなってきた、あの石で掬った時の腐った匂いが直接漂ってきた
マスクは全員すでにつけていて特に蜜巳さんはマスクを二重にしている
馬は平気らしく普通に呼吸をしながら進んでいる、タスメさん曰く「馬の調子が悪くなったらすぐに分かるッス」と言っていた、蜜巳さんもある程度馬の事を学んでいるから大丈夫なのが分かるらしい
「……」
「……」
「……」
「……」
………いつもだったら4人で楽しく雑談をしていたはずだったけど
息をするのもしんどく、誰もが無言であった
何か話そうと呼吸をすれば嫌な臭いを吸ってしまうし、むせる
何か毒になったとしても、品子さんが治してくれるしタスメさんの荷物の中に各種毒消しがあるが用心するに越したことはない
無言で俺はタスメさんの横に座って魔道具を見ながら指を指す
目的であるアミルクリスタルの位置をタスメさんに教えると
無言でうなずいて先へ進む
一応喋れなくはないけど、最低限に済ませたい
いったいここまで臭いのは何が起きたんだろうか?
たしかにこんなレベルでは水としての使い方は何にもできないだろう
そう思いながら馬車を進めて行くと
「ついたッス、ここが…ゲほ、湖ッス」
湖か、そういえば街以外で名前のついている場所って無いんだったな?
○○湖とかの名前は無いらしい
タスメさんは咳をしながら進んで行くと、湖が見えてき……た?
「は?え?ん?お?」
あまり喋りたくないけど、驚いた声が出てしまった
目の前には絶望な食材だけを入れた闇鍋のような光景が広がっていた
すり鉢状になっている湖で、周囲から中に入って水浴びできそうな雰囲気…と最初は思ったけど、水を見てみれば、何か色が川で見たような玉虫色が尚更酷い色になっていて、もはや雑に絵の具を混ぜたような灰色に見えてしまう
そして、何かしら浮いているけど、それはゴミとか固形物ではなくドロドロとした何か変なヘドロ?のような物がいくつも浮いていた、なんだか…『それが何か』を理解してはいけないような気がする
肉とか思わないほうがいいのかもしれない
そして、その汚れてしまった湖の中心には建物が見える
遠目ではあるけど、何か中心が島になっていてその上にお城がある
黒いレンガか?それで構築されているけどボロボロな雰囲気をしていて、古城って雰囲気を感じる…目立つ雰囲気だけど、こういった場合って大体あそこが元凶になっている時が多い
湖のほとりで馬を止めて、一度降りる
降りた後……何かタスメさんは身振り手振りで話そうとしていた
「タスメさん?何か話したいの?」
「そうッスが…ゴホッ……ちょっと長めのは難しいッス」
「分かった!」
そう言って品子さんはちょっと遠くへ行き、何かを拾うと戻って来た
結構品子さんはマスク1枚で平気らしいな
しかし、周囲の木もこの水の影響が枯れているのが多い、その為にちょっと遠くまで行ってた
「地面に書こうよ!マナで読めるんだったら行けるでしょ!?」
「………(その手があったッスか、ありがとうッス)」
品子さんから枝をそれぞれ数本持ち、全員が所持をしたと同時に会話が始まる
武器を使うと一瞬考えたけど、切れ味が悪くなったりしそうでやめといた
書いている時は俺と品子さんと蜜巳さんの勇者の3人は見慣れている日本語ではあるけど、タスメさんの書いている時は見たことない形をしている、王都セカンドルトでちょくちょくこの異世界の字を見たことがあったけど未だに覚えられない…覚えられる気がしない
理屈とか一切分からないけどそれでもマナのおかげで読めてしまう
「(それでタスメ?何を話そうとしたの?)」
「(その事ッスけど、この湖は元々は綺麗な水色をしていて美しい所だったはずッス
でも、あの真ん中の城?あれも含めて川の汚れが全部変わったッス)」
「(そんなにも、違うんですか?)」
蜜巳さんはいつもだったら詰まっている喋り方だけど、筆談なら関係ない
「(そうッスね、あの子供が言っていた事も気になるッスが
あの城が原因と思われるッスね
綺麗だった時はあの城見たことなかったッスし)」
でも、あの子供は「お前ら勇者のせい」と言っていた、タスメさんも湖が汚れた後に初めてヒューラルに来たから分からないらしいけど
原因そのものはあの城に行けば分かるのかな?
「(村の人に聞けば分かりそうだな、聞ければだが)」
「(聞くこと自体は普通にできるんじゃないの?)」
「(さっきの子供以外は、大丈夫だとおもいますね
怯えられると思いますが)」
「(そうだな…それでも怯えさせるのは可愛そうだし
何か長めの事情があったら会話で長時間拘束するのもアレだし)」
この世界に来て王都セカンドルトの来た時は普通に話せる人は少なかった
怯えている人たちと会話するときは「お店とかの最低限のやり取り」ぐらいしかできなかったし…
「(とりあえずッス、その事情を聞くとかする前に一旦アミルクリスタルの場所を教えて欲しいッス)」
「(あ、ああ、わりい、ちょっと忘れてた)」
「(目先の事が気になるのは分かるッスから大丈夫ッス)」
そうだ、色々とあって川と湖の様子の確認に来ているつもりだったけど、本来この国に来たのはアミルクリスタルを探すためだ、ヒューラル出る前は頭に入っていたのに忘れてた
懐から魔道具を取り出して覗いて見る、青い光が結構近く
王都セカンドルトで乳白色のアミルクリスタルをレンズ越し間近で見た時のような時に比べたらちょっと遠めなぐらいの位置
湖の中にその光が見えて沈んでいるのが分かった
「(湖の中にある、濁ってて肉眼では見えないけど潜水さえすれば取れるかもしれないな?)」
「(……水中ッスか、よりによってこんな状況でッスか?)」
「(そうですね、潜るだけで病気になってしまいそうだし、行きたくありません)」
「(うーん、そういえば千斗?私は泳げるけどあなたは泳げるの?タスメもどうなの?)」
「(俺?俺はほとんど泳いだ経験ないからできないと思った方がいいかも)」
マナの身体能力上昇があっても、泳げる自身が無い
プールの授業の時はクロールとかはしたことはあるけど、潜水とかは出来る気がしないし経験不足が多いと思う、無理をしたら危ないし
「(ちなみに、私は泳げません……)」
「(俺も、泳げないッス)」
品子さん以外泳げないか、身体能力の高さほんとうにすごいな
「(それに、この水はもし綺麗だったとしても行かないほうがいいかもしれない)」
「(え?千斗なんで?)」
「(学校や公共の場にあるようなプールって、泳げるように人工的に作られている所だから楽しく泳げるんだ、けど地球でも異世界でも自然の水辺はそんな想定で作られて無く流れとか不安定だし、底の方に触れたたら切れそうなものを誰かが捨てている可能性もあって素足で触れたら怪我をするかもしれない)」
「(え?泳ぎに自身があるけど、そんなにも危ないの?)」
「(水泳のオリンピック選手という、水泳のすごい人でも流されるって聞いた事あるし)」
「マジで!?」
つい声が出るほど品子さんは驚いた、俺も聞いた時驚いたし
青春的な川辺で泳ぐ描写にちょっと恐怖を覚えたぐらいだ
「(とにかく湖の水が普通でもそうッスし、今は汚れていてとてもじゃないけど行けそうにないッスね)」
「(えっと、千斗さん?)」
「(ん?どうした?蜜巳さん?)」
「(魔法って結構自由にできるんですよね?)」
「(そうだな、ガリウス曰く何でもやったら器用貧乏になるとは言っていたけど)」
「(小説とかの基本魔法とかにありますが、アミルクリスタルを物を浮かせる魔法とかで掬いあげること出来ませんか?
千斗さんは結構魔法が好きなので想像力の豊かさでできなかな?と)」
「(うーん、分かった試してみる)」
とは言っても…実を言うなら、なんとなく出来ない気がしている
浮かせる魔法で行けるんじゃないか?と言うのはここに来る前から思いついてはいたけど、見えない物を浮かせることは目をつぶってどこにあるか分からない物をつかむぐらい困難だからこそ、出来ないと思っている
取り合えず確証が持てないなら一旦試してみよう
落ちないように湖の側に立って、なんとなく手を正面に広げてみる
そして、レンズで除きながら光だけを頼りに「目に見えないモノ」を掬いあげようとして見る
……手ごたえが一切感じない、そう思っていると背中を小さくつつかれる
後ろを見ると蜜巳さんが地面に字を書いて話しかけていた
「(手ごたえが感じませんか?)」
「(ちょっと一旦、普通に行けるか試してみる)」
手に持っていた木の枝を持って浮かせてみる、これは普通に上手く行った
サイコキネシスをしている気持ちになってちょっとカッコイイと思ったけど、今はそれどころじゃない
普通に魔法は行ける、だったらともう一度アミルクリスタルを拾い上げようとする
……やっぱり何も起きない
そう思っていると、両肩に手がおいた
振り向いてみると品子さんと蜜巳さんも手を湖へ伸ばしていて、地面を見るように指を指していた
「(手伝うよ!)」
「(手伝います)」
「(ありがとう、助かるよ!)」
「(俺は何もできなくてすまないッス)」
「(大丈夫だ!その代わり周囲に魔物がいないか見張りを頼めるか?)」
「(分かったッス)」
湖に夢中で後ろから魔物からの襲撃があったらそのまま湖に突き落とされる可能性がある、だから見張りだって本当に大切な事だ
「(千斗?どのあたり?)」
「(ちょっと魔道具を前に伸ばすが、見えるか?)」
「(見えます)」
「(見えるよ!)」
「(その部分を狙いすませるように行けるか?)」
「(やってみる!)」
「(がんばる!)」
そうなって、3人で浮かせる魔法をかけてみる
浮かばないかどうか、やってみたけどやっぱり動く気配が無かった
そう思っていたけど、手ごたえがある?
アミルクリスタルは浮かばないけど手ごたえ、何か違う物をが浮かびそうになっているのだろうか?
「(千斗?何か浮いてきたよ?)」
「(なんか、違う物かな?)」
「(その可能性がある、アミルクリスタルの反応は動いていないし)」
アミルクリスタルの真上を見た感じ、何かが浮かんできた
…いや、なんだこれは?海藻?いやここは湖だしそんなはずはない
何かヘドロの塊が浮かんできて……速攻で沈めた
「(今の汚れは、見ないほうがいいかもしれない)」
「(たしかに…そんな気配がしましたね)」
「(気分が悪くなるの物は沈めるのがいいよね)」
思った以上に、考えは一致していたらしい
「(無理に引き上げて、水で蓋をしてある毒素が解放される可能性を考えたらこれ以上無理は良くないな
浮かせる魔法がもっと上手くなったら行けるかもだけど、その特訓をするぐらいなら別の方法を探した方がいい)」
「(あ!そうだ!船とかを作ってとかできないかな?!近寄ってさっきの浮かせる魔法とかできない?)」
「(それは、やめた方がいいッス)」
と脇からタスメさんが入って来た、やめた方がいい理由はなんだろうか?
毒の影響かなんかだろうか?
「(え?どうしてなの?)」
「(ここですぐに作れる船って木製ぐらいッス、だけど木材で船を作っても多分沈むッス)」
「(そんなに早く、壊れるのですか?)」
「(周囲の木々を見て欲しいッス)」
そう言えば品子さんは枝を持ってきた時も見たけど枯れている
「(こんなにも、木々が枯れているッス
他の所から木材を持って来て湖に浮かべても、いずれ腐って穴が開くと思うッス
あの真ん中の城のような所に行くのも片道でギリギリに思うッス)」
「(それだと下手に乗ったら沈んじゃうよね!)」
「(そうッスね、あの城まで行って戻ろうとして立ち往生するのは一番危ないッス)」
「(それに俺たちのいた世界でのことだけど、人体に影響を及ぼす自然に発生したガスって結構重い位置にたまるらしい、今ここにあるのとは違うけど…ちょっとしゃがむだけで死ぬぐらい危険らしい)」
「(そんなに危険な物があるッスか!?)」
「(普通の人が入れないように大体その場所は立ち入り禁止になっている時が多い、だからこそ普通にすごしていたら大丈夫だ、とにかく船を浮かべるとかして水面に近い所にいると、湖に毒が発生していたらモロに吸い込んで危険と思う)」
硫酸ガスだっけか?靴ひもを縛るためにちょっとしゃがんだだけで死んだ…ってエピソードを聞いた時は本当に血の気が引いた
逆に火事の時に発生する煙は逆に高い位置に発生するから身を低くするのがいらしい
「(そうなると,結局ヒューラルにいって聞くしかないの?)」
「(ああ、あの城が結局何なのか、湖の底にあるアミルクリスタルを何とかして手に入れられないか?そういった事を聞かなきゃいけないな)」
「(そうッスね…とりあえず、ここは危険地帯っす
考えるなら拠点にしているヒューラルで考えたほうがいいかもッス
流石にまた石を投げられることは…無いと思いたいッスね)」
「(まあ、そうだな?その時はまた守るよ)」
「(それだったら、宿とかを見つけてシャワーを浴びようよ!)」
「(ここがこんなにも汚れていますから、逆に後からシャワーで良かったかもしれません)」
「(分かったッス、これからの事をまとめるのに宿で作戦会議をするッス)」
「(はい!)」
「(分かったよ!)」
「(分かりました)」
そう言って再び馬車に乗ってヒューラルへ戻ることにした
蜜巳さんやタスメさんとかが馬の様子を確認してみたけど、体調は特に問題ないらしい
平気そうで良かった、さてとりあえずは宿で方針を決めるための作戦会議だ
Q、なんで筆談描写があるんですか?
A、作者の性癖です、何なら別作品では喋れなくて筆談の主人公がいます




