挨拶はする、歓迎はない
ヒューラルに入った直後でドタバタし、そこから逃げるように退散した
あまりゆっくりしすぎるとさっきみたいに石を投げられるかもしれないから…っとタスメさんは焦り気味に速足で進めていた
俺は少し心臓が早鐘を打っており、落ち着こうと深呼吸を何回もしていた
「すぅーーはぁーーー……」
「千斗?大丈夫?」
「…なんか、びっくりしたからか心臓がバクバクしている」
「本当に大丈夫!?水飲んでね!」
「あっああ、ありがと、そうする」
いつの間にか俺の水筒を取り出して持ってきた、気が利いて本当にありがたい
「みーちゃんは大丈夫?」
「ん…………んう……………まだ怖い…………」
「私にくっついてもいいよ!」
「しーちゃん…………ちょっとそうするね」
そう言うと寄り添った、帰りのバスや電車で仲のいい2人が寝ているような額に入れたて飾りたくなるような光景…俺は決して邪魔しないように少しその場から離れ…いや、多分いつものパターンだと品子さんから「どうしたの?千斗?」って言われると思うからここは
「品子さん、蜜巳さん
水飲んで落ち着いたから念のために周りを警戒しておくね」
「うん!お願い!」
「お願い……………します」
でも、そう言って2人っきりにした
…でも周囲の警戒をしたくなるのは本当だ
さっきは子供が石を投げてきたけど、陰湿なタイプの作品では嫌われ者になると大人も石を投げたり、酷いときには矢を撃たれたり、1パーティが馬車の前に立って襲いかかってきたり
いや、この世界の優しさを考えたら起きる可能性は低いと思われるけど
それでも馬車の正面側に立って周囲を確認してみる
「警戒ッスか?」
「ああ、さっきみたいなことが起きるかもしれないから」
「分かったッス、このまま領主の所まで行くッスよ」
「領主の所って……町のどのあたりにあるんだ?」
「ド真ん中っス!」
「分かりました!」
とは言っても、ちょっと早く進んでいるから周囲にいた人たちは町に入って来た時よりも道の端など遠くに離れており大丈夫そうだ
……とりあえず、襲ってくる雰囲気はないみたい
殺気を感じることは出来ないけど、変な動きをするような雰囲気はないらしい
「そう言えば聞いていいッスか」
「え?いいけどどうした?」
「石が飛んでくる前の事ッスけど、アミルクリスタルの反応が………何だったけ?」
「え?ああ、その話か」
そう思って、警戒をを一旦といて懐にあった魔道具を再度取り出した
もう1回覗いて見ると近くにある青色の光が今の進行方向の下の方にあった
あまり直視していると、脅威があった瞬間に魔道具を落としてしまいそうだからすぐにしまう
「さっき魔道具を使って覗いて見たけど、やっぱり地面より下にあるんだよな…」
「地面より下ッスか…………下り坂って言ったッスけど、この先に下り坂はないッスよ」
「無いか…じゃあ、洞窟があって地下に行けたりとか、何かこの先の町で地下室や地下道があったりとか?」
「うーん?ちょっと思い当たるモノがないッス
トランスリンに何回も来たことあるッスけどここから正面方向に地下があった記憶がないッス」
「ってなると、魔物かなんかが原因で埋まったとか?」
「うーん……とりあえず領主に挨拶した後に探しに行くッスよ」
「ねえ!」
「どうしたッスか?」
「領主様と会った後に町を出るその前にシャワー浴びれるところあるかな?」
「……あったらいいッスね、この街の状況で行ける宿があったらいいッスけど」
「やっぱり…………難しいでしょうか…………………」
「それだった無理しなくていいよ!川とかある!?」
「あ…あるッスけど、水浴びする気ッスか?」
「うん!」
………あれ?なんか川が汚れているとかどうとか言ってなかったっけ?
あの時襲撃で無茶苦茶になっていたから、あまりよく聞けなかった
でも飲用が無理だとしても、体を洗うならちょっと汚れても行けるのか?
現実だったら赤痢菌が危なかったりするけど、この異世界だとどうだろう?
便利なマナの力で何とかなればいいけど
「川で水浴びはお勧めできないッスね、普通に無防備になる事があるッスし……でも街で洗えないなら仕方ないッスかね…」
「なんか、さっきの男の子が汚れているとか言っていたけど、ちょっと体を洗うぐらいだったら大丈夫だよね!」
「その……………武器は…………………手放さずに持っていますので」
「性別の都合上、遠くでしか見張りできないけど警戒はしておくよ」
「確かにッス」
ラブコメ系だったら、女性陣が全裸で水浴びして
なんだかんだ起きて主人公などの男性がその場に来てしまって「キャー!」って展開はあるけど
俺は彼女持ちだし、いなくても2人にそんなことをしてはいけない
絶対にだ
「大丈夫だよ!無理は絶対にしないから!」
「……………弓矢があったら……………私も警戒できますので」
「そいつは頼もしッスね、お?そろそろつくッス」
「分かった、準備しとく」
そういえば、領主の所に行く前に馬車を預けないといけないんだった
「こんにちはー!」
「こんにちは」
「こんにち…………は」
「あ……えっと……………」
「こういう者っス、怖いなら馬車を置いて早めに去るッス」
「えっ……あっ………はい……わかりました」
なんだかコミュ障のようなやり取りをしながらも、結構スムーズ?に物事が進んだ
領主のいる所は街の真ん中だから、結構近いらしい
「そう言えば領主の住処が街の真ん中にあるのは、中心からどこにでも行けるようにとか防衛な理由があるのですか?」
「そうッスね?大体の街の真ん中にあるッス」
読んでいた小説でも、そのような理由で街の中心に領主や王様がいた時が多かった
王都セカンドルトもそう言えば王城が中心にあったな
そのように思いながら、馬車を置いて装備を整えて行くことにした
「千斗さん……………」
「どうした?蜜巳さん?」
「なにか…………………周囲の人達からの恐れを緩和する……………方法とかありますでしょうか?」
「恐れを緩和する方法か……」
ちょっと考えてみて…いつもの読んでいた小説の知識で作戦立てをすることにしよう
「ライトノベル知識だけど
武器は手に持たずに背中に構えたほうがいいかも『自分達は無害です』と言っているようになるから、周囲の人達が安心すると思う」
「分かった!そうするよ!」
「そうして……………おきます」
「何かあった時は魔法を使うことにするよ、けど攻撃はしないように防御に徹した魔法にしよう」
「怪我した時は私が治療するよ!」
「私の召喚獣で……………守ることにします」
「俺も土魔法で壁とか作るよ」
「準備と作戦会議は済んだッスか?」
「はい」
「うん!」
「でき………ました」
「じゃ、出発ッス」
そう言ってタスメさんを先頭にして出発していくことにした
周囲の警戒というよりも、自分達の脅威さを無くす雰囲気を出していくことにした
本格的にやばいことにならない限り抵抗はしないつもりだ
前に出る準備はいつでもしていたけど、領主の所にたどり着くまで特に何も起きなかった、相変わらず周囲の人達は不安そうなコソコソ話や警戒している雰囲気は変わらないけど……
歩いて行くとひときわ目立つところが見えてきた。
木組みと白い石造りに緑の屋根が周囲にあったからこそよく目立つ建物、赤黒いレンガ…いや赤黒い石でできている館のような建物があった
緑と赤って色相環的に確か逆なんだっけか?
そのためにか色が際立って結構目立つ所になっていた
………しかし、横側もなぜか崩れいて突貫で直したのかちょと違和感のあるレンガの積み方になっている、ここはヒューラルの中心だから魔物が来ないはず、やっぱり俺たちと比べられている「奴ら」なのだろうか?
館の周囲には塀で囲まれており正面の方には門番が2人立っている
「…おい、あの人たちは……」
「こっちに来ている……確定だな」
「こんにちはー!」
「こんにちは」
「こん……………にちは」
「うっ!?」
「え?こんにちは?」
「こ、こんにちは」
門番の人達は普通に挨拶されただけなのに驚かれた
さっきのやり取りを聞いた感じ警戒心MAXであったからか?
何かされると思ったのかな?警戒されることにそろそろ慣れてきてしまったのかもしれない
いや、その考えは持たないほうがいいんだが……
「こんにちはッス
王都セカンドルトより勇者達が来たっス、これが証拠ッス」
そう言ってタスメさんはいつものように令状のような物を差し出した
「外見の特徴も一致している……ここは領主ツキウス様の館だ
君たちが勇者であると理解したが、それでも決まりだから武器を一時的に手放して欲しい」
「えっと、玄関の横に箱があるからそこに置いといてくれ」
領主様の名前はツキウス様か…それに要人と会うなら武器を持たないという警戒の高い行動は、人々が怯えている「何か」と関係なしに必要な事だろう
門番の人達から手で「どうぞ」と言わんばかりに促されて室内に入ってく
玄関に入り右を見てみると、武器を入れられそうな縦長い箱が置いてあった
俺はマクスラスをそこに入れて、蜜巳さんは弓と矢筒を
そして品子さんは大きな盾に大小さまざまな剣を置いて行く
剣を置いた後は近くに従者らしき人がいて……
「ここでお待ちください」
って言った…って、え?!
「え?ここは玄関では?」
「はい、申し訳ございませんがここでお待ちください」
あれ?こういった時は普通、謁見するところに行くのでは?
この異世界の常識?いやそんな事はない、王都セカンドルトでは謁見の間があるし…「ここだけ」とかじゃなく『今だけ』特別扱いを受けているのだろう
俺たちが勇者だから暴れられたりして中の物を壊されないようにするためなんだろうか?この館の横の部分みたくならないように
玄関にいるから中の様子は詳しく分からないけど、見た感じちょっとした広間になっていて中央には2階に続く階段があって、1階にも2階にも周囲に扉が見える、こういった館の作りはバイ〇○○ードの1作目スタート地点とかいろんな創作で見たことがあるけど結構壮大だ
そして、2階の中心の扉はひときわ大きく1番重要な部屋に思えてくる…って考えていたらその扉が開かれた。
領主様の登場かな?そう思って俺は膝をついて前は見える感じにして頭も下げることにした、品子さんも蜜巳さんも俺と同じように頭を下げた
「そこまでかしこまらなくても、いや、そのままにした方がいいッスね」
タスメさんはそのまま立ったままの体制にするみたいだ
そして開かれた扉からトランスリンの領主様ツキウス様の姿が見えて、見えて………ん?
「あれ?なんかシルエットがおかしい気が?」
人の姿をしていなかった、もしかすると人間以外の種族なのか?って思ったけどそれにしては人から物凄くかけ離れている気が?
近寄ってくる足音は…え?なんか多くね?
1回、目を擦って確認してみると、その理由が分かった
そこにいたのは確かに人ではあった、けれどツキウス様1人で来る考えていたけど
陣形を組んでいる沢山の人がいた!?
何だっけスパルタとかにあったファランクスだっけか?綺麗にずらりと並んでいる強固な守りの耐性になっている
大きな盾と長い武器を持った沢山の人が「ガシャンガシャン」と器用?に陣形を組んだまま階段を降りてきて少し距離を取って止まった、近寄るだけで相手の槍の餌食になりそうな隙のない陣形をしている
「そこにおるのは、勇者か?」
ファランクス越しだったから、声が小さかったうえにくぐもっていたけどファランクスの中から結構年老いていそうな男性の声が聞こえて来た
多分この声が…
「領主ツキウス様、勇者様達が王都セカンドルトより参りましたッス!
アミルクリスタルを探すために一時的に拠点としてこの街を使わせてほしいッス」
「お、おおそうか、ご苦労じゃった
迷惑をかけなければ何でもいいぞ」
中から聞こえていた方がツキウス様らしい…このような姿でありながらもタスメさんは汗を1つかきながらも平静を装って会話をしていた
いや、ちょっと待って!普通に対応するところなのか!?
「俺の名前は空網千斗です、こんにちは
えっと…ツキウス様?」
「……ん?何じゃ?」
「あの…何をしているのですか?自分の世界の常識だったら申し訳ないのですが陣形を組んだまま会話するというのは初めて見ました。姿を出して、面と向かって話す…とかはないのですか?」
「すまない、勇者とは言えど信用できるか分からぬから最大級の警戒をさせてくれ」
「あー……分かりました」
最大級の警戒………か、そう考えたらとんでもない歓迎と言えるかもな
一切として姿が見えないけど、ちょっとでもいいから見せてくれないかな……?
「こんにちは!私は秋原品子!」
「こんにちは…………私は………小沼……蜜巳」
「おお、今回の勇者達は丁寧だのお……?」
「今回の」か……自分の中の考察が結構な形で明瞭化されてきた、でも王都セカンドルトのまだ名前を聞いていない王様のように下手に聞けない…領主ツキウス様も「勇者」がトラウマだったら聞けない
今のようなファランクスの構えのように厳戒態勢中にパニックになったら…下手すれば命の危険まで起きる可能性がある、生き返れる世界だとしても命を粗末にしたくない
「それ以外に用は無いかの?挨拶が終わったらなら早く帰……アミルクリスタルを探しに行っても構わぬぞ」
「…えっと、俺は無いッスが」
そう言って「質問はあるッスか?」と言わんばかりにタスメさんはこちらを見た
気を使っている雰囲気はあるけど、思いっきり「帰って欲しい」って言いかけたな……
何というか…「挨拶が済んだなら早く出てって欲しい」と遠回しに言っている感覚がする
俺は質問が無いし穏便に済ませるためにここは…いや質問が2つあるけど、うむむ…どうしたら
「えっと、私質問いいかな!
迷惑だったらすぐに出るね!」
「えっと、いくつかの?」
「私は1つあるけど……2人は?」
ありがとう品子さん、キッカケ作りをしてもらって助かったよ
誰かが先に出ていただいたら自分も自信をもって行ける
………いや、男がそこは先行して行くべきなんだけど
とにかく感謝します、こういった時の最初の一歩って本当に難しくて…
「俺は2つある、被っていたらそれでついでに聞きます」
「私は……………いいかな………本当に特にないし………………」
「じゃあそっちの勇者アキハラシナコと言ったか?そっちは?」
「はい!アミルクリスタルを探しに来たんだけ…ですけど!何かこの街のどこにあるかヒントはありますか!」
「………アミルクリスタルなら、王都にある魔道具があるからそれで探せばいいんじゃ?
こちらも知らないのじゃ、もし知っていたら持っているぞ」
「あ!そうだったね!」
「ありがとう品子さん、それが聞きたかった1つだ」
「よかったね!それでもう1つって何?」
「ああ」
そう言って、俺は領主ツキウス様に向きなおる
例えファランクス越しでも
「ここに来る前に1人の子供から『川が汚された』との話を聞きましたが
いったい何があったんですか?」
「…………」
大きなため息が聞こえた、何か難しいことを考えている感じがした
「……君たちのような、丁寧な人達であれば
『君たちは悪くない』というのは知っているんじゃ
だとしてもな……自分の目で確かめて欲しいんじゃ」
「身をもって理解して欲しい、という事でしょうか?」
「ああ」
そこまで水回りが凄惨な状況になっているのだろうか?俺たちを早く帰したいというのもあるかもしれないけど、説明が難しいと言うよりかはそれだけ大きな事になっているんだろう……「魔法で浄化が必要になった」…とか聞いたけど俺たちと比べられている『何か』がしたという事だろうか?
「分かりました、それでは探しに行くことにします」
「頑張っていくよ!」
「行って………きます」
「あ、ああご武運を…………」
そう言って武器を回収しながら領主の館を出た
俺たちが去るとすぐに扉は閉められる
早く帰って欲しい雰囲気があったから、こうなるのは想像通り
でも、このような態度がアミルクリスタルを手に入れたら変わって欲しいな
自分達が原因ではないし、理不尽気味な対応をされたけど謝罪は……されなくても平気かな?
とりあえずは川の様子とアミルクリスタルの方へ行こう




