本気はある、認めは……
今回は、『必要』な茶番回です
「それでは、戦って下さい
勇者ソラアミセント、いいですか?よろしくお願いします」
ナリアン神父の合図の後、俺と兵隊長は見つめ合う
さっきまで戦っていた防衛線の時と違った緊張感を感じてしまう
しかし……素手?どうゆうことなんだろうか?
たしかに武器持ちとはまた違った良さもあるけど、得意武器って訳でもないし
「どーしたー?警戒しているのかー?」
「そうだな、武器を持たずに素手だから逆に何をしてくるか分からない
今まで通り『とりあえず突く』したところで掴まれてまた持ち上げられそうだし」
「じゃあ、違った感じで攻めればー?」
「分かりました」
そう言いながら……あの時同じように兵隊長の正面へ走っていく
「お?言葉で油断する作戦かー?」
それもある、けれども正面に突き出しはしない
ハッタリをかまそうとして見破られて、このまま突いたとしても掴まれてしまう
なら、魔物でやったあの戦い方をっ!
「はぁ!」
「お!?」
槍を棒高跳びのようにして、兵隊長の背後に
「はい」
って思ていたら飛び立つ前についていたマクスラスに足払い!?体重が乗っているから急に体勢が崩れてしまう
「なっ!?ならば!」
急な浮遊感を感じだけど、走馬灯が見えた高さとは違って心の方に余裕はある
けれども時間に余裕はない
兵隊長の方に向けて手を向けて魔法を放つ
手元に水を集めていき、槍を形成していき放つっ!
「おわっ!?」
流石に兵隊長も予想外だったのか思いっきり身を引いてよける
少しかすったのか、頬に血が垂れて白髪が少しはらりと落ちた
……模擬戦で「は」初めてダメージを負わせられたか!?
魔法の反動で後ろの方に飛んで地面を転がりながら立ち上がる
ちょっと無理をした受け身ではあったけどそんなにはダメージは受けてない
兵隊長の様子はっ?!
「すごいねー今のすっごく早かったぞー」
手を抜いているのか、俺が体勢を立て直している最中に攻撃はしなかったようだ
「兵隊長、手を抜かないでください
俺は真剣勝負しているから」
「いや、さっきの体勢を立て直そうとした時に攻撃をしようとしたけど
勇者ソラアミセントは隙を作らないようにしているようだし、様子見をしただけだよー
転がりながら魔法を放ってもおかしくないからな」
……兵隊長は気まぐれな性格をしている、今言ったことは適当なのかそれとも本当に俺の様子見をしていたのだろうか
それならっ!
「……お?今度はそっちが様子見かー?」
腰を落として手を伸ばして
大型魔物の戦いの時にやった背後からの魔法攻撃なら!!
「……っが!?」
直撃した!?派手に背中に食らって前転のような動きをしながら、思いっきり前に倒れた
「いってて……なにが」
「そこまでです」
そう言って仰向けで空を見ている兵隊長の首にマクスラスを突きつけた
「これ以上来るなら、致命傷を負わせます」
「あーまいった、降参だ
偉いねー仕上げは合格だ」
………おかしい、なんだこの弱さは?
休日に休日の動きや手合わせしていた強い兵隊長はどこに?
「いやー千斗、マジで強くなったなー
さっき背中にやったやつ、あれってどうやったんだ?」
「……兵隊長の視界外から魔法を撃ちました、俺の射的距離ギリギリで出せる攻撃です」
「どうした?随分と雰囲気がおかしいな?」
「兵隊長、本当に兵隊長か?」
「え?どゆこと?」
「単刀直入に言うぞ、弱すぎないか?
体力的な物じゃなくて心境的に疲れているのか?
直前まで防衛線があった訳だし」
俺たちの所に来る前に兵隊長は防衛線をしていた、ナリアン神父は俺たちにかけた感情を阻害する魔法に関することで戦いに不調を兆していたし、そのフォローもしていたと思う
「あー気を悪くしたならすまないなー、戦いは慣れているから平気だ
でも、本当に手を抜いていないしちゃんとした理由があるんだ」
「理由?どうゆうことだ?教えて欲しいその理由を」
「それは、勇者アキハラシナコと勇者コヌマミツミの仕上げが終ってからでいいか?」
「……分かりました、待ちます」
「それで、次は誰だー?
それと、ナリアン神父もまた回復頼むわ」
実は兵隊長に化けた魔物でした…なんてオチでは無いようだ
そうだとしたら連れてきたナリアン神父もおかしいことになる
でも、本当に手ごたえが何もなかった、手を抜いている感じにしか感じなかった
そりゃあ、視界外からの不意打ちは兵隊長も想定していないなら分かるけど………
「兵隊長、やっぱり勇者達は……」
「ほらな、仕上げの必要性なんてなかっただろ?」
「決まりですので、穢れを払いたまえ」
「適当じゃないか?」
……2人の会話も気になるが、兵隊長の弱さに対しての話には触れていないようだ
「おかえりー」
「お帰り………なさい…………」
「ただいま」
「千斗?なんか不満そうな顔しているけど、やっぱりガリウス兵隊長の様子おかしかったよね?」
「ああ、品子さんも分かる?」
「分かるもん!なんか、簡単に終わっていたし!そういえばみーちゃんは兵隊長と手合わせしたことは?」
「ある…………でも、召喚獣を操ってもかわされるし………………………あの………弓を撃ってもかわされて弓矢の距離でダメな近距離に接近されるし……………
…………兵隊長の様子がおかしいのも分かりました」
「やっぱりそうだよな、でも2人の仕上げが終ってから理由を話すらしい
だから2人とも戦って欲しいんだけど、いいかな?」
「もっちろんだよ!」
「ま………任せてください!」
「頼もしい、そうなるとどっちから戦う??」
「じゃあ私から!!」
「………しーちゃん、元気いっぱいだね」
「アレ飲んだから!!」
「分かった、じゃあ行ってらっしゃい!」
「頑張ってね…………しーちゃん!!!」
「行ってきまーす」
そう言いながら、品子さんは兵隊長の元へ行った
品子さんは結構兵隊長とやり合えるほど、天性の戦闘の才能があるから普通に合格は取れると思う
「おおー次は勇者アキハラシナコかー」
「兵隊長!」
「どうしたー」
「武器持たないのー?」
「あー分かったー
……えっと、適当にこれでいいか」
武器選びはまたも適当
俺と戦う前に地面に置いていた中型の剣を手に構えた
「始めていいの?」
「よろしくお願いします勇者アキハラシナコ
では頑張ってください」
「おおーいつでも……」
「当たれえええ!!!!」
って、兵隊長が言い終わる前に品子さんは開幕スタートダッシュ……ではなく、シールドバッシュを仕掛けた
大型剣はいつの間にか地面に刺していて、小型剣を構えたままの状態であったためにその速度は………
「ぐわッ!?!?」
目で追えない速度であって、兵隊長が思いっきり吹き飛ばされた!?!?
兵隊長でもこの速度回避できないのか!?
手を抜いているのかどうかも分からないぐらいの速度だよ!?
派手に飛ばされた兵隊長は地面に2回バウンドしてようやく受け身を取って立ち上がった
いや!?無事か!?
「ごっめん!!大丈夫!?補助魔法は多分効果がきれているから手加減したつもりだけど!」
「大丈夫だーこれぐらい……いてて」
「無理しないで!こんなに飛ぶと思わなかったんだもん!!」
「俺の実力を見て手加減でも思いっきりを出したのか?偉いねー」
痛がりながらも、手元が光りに包まれて体に当てている
兵隊長は回復魔法もできるみたいだ、応急処置なぐらいと思うけど
「よーし、じゃあその突撃以外で来てくれ
それ以外の動きを見てみたいなー」
「分かった!じゃあそっちから来て!」
品子さんの盾は攻撃用ではない、身を守るのに使っている
よく突撃をしていたから忘れていたけど、品子さんはタンクでもあるから前に出て敵の攻撃を受け止める役もになっているはずだ
だからこそ、兵隊長からの攻撃を受け止めたりとか……
「分かった、いっくぞー」
そう言って兵隊長は……ちゃんと早く品子さんに接近した
これだよ!兵隊長と言ったらこんな感じの素早い動きだよ!
それに合わせるように品子さんは盾を構えたが
「はぁ!」
兵隊長は急に飛び上がって品子さんを飛び越える、俺がやろうとした棒高跳びをして背後の回ろうとした動きと同じ、けれどもマクスラスを使ってなく普通にフィジカルの飛び方でやっている形だ
品子さんはこの動きに合わせられ…
「そこだぁ!!」
「ごゅ!?」
…大剣の平たい所で、思いっきり叩き落された
テニスのサーブか?品子さんの頭上にいた兵隊長は地面に叩きつけられる!?
ガッツリと怪我をした感じに見えたけど、大丈夫なのか?
「って、兵隊長!またゴメン!!大丈夫!?私の回復魔法でも受ける!?」
「いってー、またか叩き落さるとは
大丈夫だー動ければそれで問題ない」
「千斗がよく棒高飛びのように飛んでいたから見切れたよ!」
「仲間の動きを参考にしたのかー偉いねー」
「そこまで!私が止めます!」
鼻を抑えているけど、鼻血でも出たのか?こんなにも攻撃を受けているようなひとだったのか?!
俺の時とは違って、兵隊長からではなくナリアン神父からのストップがかかって近寄り兵隊長の治療を開始した
「穢れを払いたまえ…」
「あー……勇者アキハラシナコ
アンタも偉いねー仕上げは合格だー」
「…喜んでいい事なの?」
「そりゃあ、兵隊長の俺が直々に認めているんだ、喜んでいいぞー」
やっぱり品子さんにとっても、手ごたえらしい手ごたえを感じなかったようだ
動きは確かにガリウス兵隊長そのままだったけど…
「あ、えっと、や、やったー」
「しーちゃん………なんだか…………その……………棒読みだけど」
「なんか、『やった!』って感じがしないんだもん!」
気がついたら蜜巳さんは品子さんの横にいた、戦闘の決着がついたのが分かった後に行ったんだろう
…たしかに、最後の仕上げは蜜巳さんを残すのみだ
「……でも、確かに………兵隊長は見た感じ、いつも通りに見えましたけど………………」
「そうなんだけど、簡単に攻撃が当たっておかしかったな?」
「……」
「あっ!兵隊長ごめんね!私すぐに下がるからね!
みーちゃん!どんな感じで戦っていたかあんまり見たことないけど頑張って!!」
「うん…………わたし、頑張るよ!!」
「蜜巳さん!頑張れ!!」
兵隊長は、仕上げをする前にしていた俺の言葉をウ飲みにしていたのか、治療が終わった後は無言で待っていた……2人の会話の邪魔をしないように、そういえば休暇の時もクッキーで俺たちがワイワイしていた時に傭兵に咎められていたし
ナリアン神父もいつの間にか戦いの邪魔にならないように俺の側に立っている
誰もいつの間に移動していて素早いな!?
品子さんもこちらに来て、3人で近くで2人の様子を見守ることになった
「それではよろしくお願いいたします。
勇者コヌマミツミ、頑張ってください!」
「はい………兵隊長………………武器を」
「じゃあ、これで」
今度持つのは、斧?俺のマクスラスにも確かに斧の部分はあるけど
兵隊長が持ったアレは大型で、両手剣に近い形をしている
「行きますよ」
「おーいつでもこーい」
でも、一撃が重くなる代わりに動きが遅くなる斧と、遠くから攻撃できる弓矢とはかなり相性が悪い気がする
「…………」
品子さんの目つきが変わった?
防衛戦の時は、それぞれの動きを見ていたからこそお互いの表情を見ている暇はなかった
品子さんとは何度か手合わせしたり、戦う様子を何回も見たことがあって楽しんでいる表情をしていていたけど、打って変わって蜜巳さんはいつもの泣きそうな表情とは違って、真剣な表情はギャップも相まってカッコいい…
これがいわゆる狩人の表情ってことなのか!
「おっ、随分といい顔になったな?」
「はぁーーー」
一度深呼吸をしたと思うと
弓を引いて放った、1発だけ
「おっと」
その速さは本当に光線の如く早かったけど、持っていた斧であっという間に防がれた
「それは流石に当たらな……」
って、守っていた兵隊長の側に近寄る影が!?
その姿はネコ科の…まるでチーターのような姿をしている生き物だ!?
「うおっと!?」
後ろから噛みついて来る様子を見てそれを回避した、さっきまでの戦いに比べたら奮闘をしているが
「そこです」
「なっ……いって!」
回避した脚に1本の弓矢が刺さる
蜜巳さんは最初の弓矢だけでなく、背後からのチーター、2重で視線を散らして一撃食らわせていた
こんなにも策士なやり方をするとは!?それに弓矢の狙いもかなり正確だ!
「っておわぁ!?」
脚に弓矢を食らった隙をついて、さっき攻撃しそびれたチーターが兵隊長に覆いかぶさる
食らいつこうとはせずに「いつでもお前を食うことができるぞ」と言わんばかりに睨みつけていた
そして蜜巳さんはその場所に走って近寄っていき
「………降参してください…………恩のある方には…………これ以上…傷つけたく………ないっ!」
銃を突きつけるように弓矢を兵隊長の眼前に突きつけた
さっきの俺が槍を構えたような感じだ
「…わーった!降参!降参!
だからこの怖い生き物をどかしてくれ!
偉い!合格だ!俺がエライことになる前に早くどかしてくれ!!」
「………対戦ありがとうございました………攻撃するの止まって」
そう言うと、チーターはすぐに兵隊長の上からどいて座り込むと、またも光に包まれて消えて行った
兵隊長から聞いたことの無い「怖い」という言葉を聞いたけどこの世界にはチーターはいないみたいだ
俺もこの世界の魔物の姿を見た時は恐怖心を感じたし、人間は自分と違った姿の生き物を見ると本能的に恐怖を感じるらしい
そうなるとこっちの世界の姿をした召喚獣を操っている辺り、召喚魔法の使い方が気になる
………色々とひと段落したら蜜巳さんか兵隊長に聞いてみるか
「はぁ……ハァ……相変わらず、すげえ魔物を扱えているな…」
「矢をさしてごめんなさい…………それに、魔物じゃなくて…………私の友達だから!!」
「矢を刺したことは別にいいよー、ぐっ!対戦したなら問題ないからなー
それと魔物って言ってごめんなー」
話ながらも自分で矢を抜いて回復魔法をかけていた、自分で矢を抜けるのが普通に凄いな
覚悟が必要になる行為をするとは…いやそれよりも、これで最後の仕上げ?とやらは終わったっぽいが
「ほらな神父様?仕上げの必要はなかっただろ?」
「そうですが、決まりですので」
「まじめだなー」
「兵隊長、聞いていいか?」
「お?どうしたセント?」
「……手を抜いていないんだよな、でも動きはそのままだった
こことは反対側での防衛戦で疲れたのか?
こんなにも俺たちは普通に兵隊長と戦うことできた。不調だったのか?」
「……」
「ねえ、兵隊長?何か?様子がおかしかったけど、どうしたの?」
「兵隊長………どうしたのですか?」
「あー結局はそう見えたかー」
「兵隊長、別に隠しているわけではないから話してもいいんじゃないのですか?」
「そうだなー」
隠していた訳じゃない?
「はぁ、まあ割り切っているからいいけど
話したいことあるし合格したし、言うから聞いてくれ
防衛戦もして、最後の仕上げもして疲れているかもしれないが聞いて欲しい
ちょっとした俺の昔ばなしだから」
昔ばなし?簡単に勝利できたことと何か理由と繋がるのか?




