主人公たちはいる、感情は誤魔化している
「私は……みなさんに黙って余計なことをしてました!」
「余計な事?どうゆうことですか?ナリアン神父?」
余計な事?戦っている時に特に違和感を感じなかった、それにこのような国の危機がかかっている時にするなんて思わないし…
そう思っていると両手を合わせて祈りのポーズする、座りこんで空を見て…いや俺たちを見て
こっちの世界にあるような懺悔を捧げるポーズのようだ
「どうかお許しください…私は、あなた達の実戦練習の時にある魔法を使っていました」
「ある魔法?それって何?」
そういえば、品子さんが実戦練習している時に何か準備をしていたな……その後に剣を受け止めた様子に目を離してしまったけど
「みーちゃん?何かわかる?」
「…………もしかして」
「えっ!?知っているの!?」
「…………ナリアン先生の言葉を待ってもいい?」
「わ、分かったよ」
「私は、私は………」
「おいおい、どうしても話せないなら俺が……」
「兵隊長は黙ってください!これは私の問題ですから!!!」
「……ういっす」
兵隊長が押されるぐらい、今までに聞いた事のないナリアン神父の大きな声を出した
俺たちもちょっと身をこわばってしまう
「はぁ…はぁ……私は
私は……あなた達に感情を阻害する魔法をかけてしまいました!」
「感情を阻害?」
感情を抑えられた時って……はっ!?まさか!?
って言おうとしたけど、蜜巳さん言っている通りナリアン先生の言葉を待つことにしよう
「2人に…いえ、セントさんに罪悪感とか嫌悪感を無くす魔法をかけていました」
「…………」
ついさっきまで気づいた事、そのままの事を言われてしまった
「兵隊長からの提案でセントさんは優しいから、それが武器でもあって弱点でもあるから戦闘訓練に集中できる様に戦っている時に魔法をかけていました……
本当は気がつかないうちに、慣れていかせようとしました
けれども、本当は感情の自由を奪っているようでやりたくなかった……魔法はイメージで何でもできますが、何でもできてしまうのはむしろ怖い事だと思っています
後になって、まだ慣れるのに不完全な状態で戦わせて尚更、怖い思いさせたらと思うと…本当にすいません!!」
あの実践訓練の時のように本当は怖かったり罪悪感を感じたり蜜巳さんに隠していたけど
その後の品子さんと一緒の戦いの時はそんなに感じなかった
慣れたのかな?と思いたかったけどそんな真実があったとは……
蜜巳さんにもこの恐怖を最後まで隠すつもりだったけど……
これは、隠しきれない…そう思うと頭が真っ白になってしまう
「千斗さん……」
「…すぅーーーはぁ、ごめんない!蜜巳さん!」
「………」
「蜜巳さんの不安を取り除きたくて、本当は恐怖もあったけど
でも楽しかった気持ちだって本当にあってっ!
そういった感じに誤魔化していたけどっ!!
本当にすまない!!」
「………大丈夫ですよ千斗さん」
「蜜巳さん…?」
「本当は………無理をしているのが分かりまして…………武器を落として、手が震えて…………そこまでしているのに『武者震い』とか『楽しい』とか………必死に誤魔化していて
楽しかったのが本当だったのは………予想外ですが」
だ……だよな、武器を落として手が震えていたのは正直、誤魔化した気がしていなかった
都合のいい、「バレてなくて良かったって事」って事を考えていたし
「無理をしているのは………散々経験したこともありますし………その、この異世界に来る前から見たこともあるから…………分かっていますし」
「見たこと…」
そう思って、さっきまで翻訳魔法無くなるまでマナ切れをするほど無理をしていた人
幼馴染だからこそ召喚前から蜜巳さんの側にいた人
その人を見ると目を逸らした
「あーえへへ…」
「………さっきまで私も召喚魔法で無理をしていました………似た者同士ですね」
「この世界に来る前から、多かったりした?」
「……うん」
「あまり深くは聞かないでおくよ、女子のプライベートに踏み込み過ぎ無いようにしたいから」
「分かりました……この世界に召喚された初日から……千斗さんは…震えながら前に立って………無理をしようとした時もありましたし……………武器を落とした時点で分かっていましたけど……………私の恐怖心を何とかしようとした気持ちがはっきりと伝わりました…………ほんとうにありがとうございます」
「どういたしたしまして、気を遣わせてごめ……いや、ありがとう」
「私からも、ありがとうね」
「続けてもいいですか?」
「あっ!ナリアン神父!すいません!」
「ごめんなさい!」
「ごめん!!」
しまった!ナリアン神父の謝罪の最中だった!!
「おほん、
先ほど話し合っていた通り、セントさんが武器を落とした時点で気づきました」
「さっき正直な話をしていたから、俺も言うけど
初めての戦いの後に、2人で話しただろー
この時に千斗と『殺す怖さ』について話したんだよなー」
「やっぱり……そうでしたか」
「それで、次の時からかけることになりました…」
考えて見れば、品子さんとの戦闘の時も「罪悪感をあまり感じず気持ちが楽になった」って思ったな
「戦いながら慣れさせて行くつもりでしたがこのような緊急事態が発生するとは、先ほどの防衛戦の時に違和感とかありませんでした?」
「あ、ああ、敵を殺した瞬間に急速に心にざわつきが来てしまってな…」
「あっ!そういえば千斗!立ち止まっていたけどそうゆうこと!?」
「…そうだ、品子さんから『無理をしないで』と言われたあの時だ、あれって魔法がかかってなかったということか?」
「はい…」
「ほんとはなーもっと慣らしてから、その魔法を外して罪悪感を感じなくなってから旅に行かせたかったんだ、カイザムに案内された後に反対側から魔物が来ることが分かって……だから仕方なく2人も戦わせたんだ、千斗は戦闘のセンスがとても高いけど本当に魔物に対しても殺したら罪悪感を感じるほど優し過ぎる、何とか克服してくれてよかったみたいだし
勇者コヌマミツミも戦ってくれて本当にうれしかったけど
緊急とはいえ戦わせて…そして騙して申し訳なかった」
そう言ったガリウス兵隊長は頭を深々と下げた
いつも適当な態度をとっていたガリウスの初めて誠心誠意の謝罪を見た気がする
でも、確かに兵隊長が言っている通り魔物を殺すことに関して慣れてきた感じがした
押し殺していくうちに消えて行った感じがした
「反対側でカイザムさんを見送ってから、兵隊長と私で戦っていました、
でも途中でその感情を阻害する魔法の事を思い出して、その罪悪感で足を引っ張ってしまいました
誠に申し訳ございませんでした!」
「いやいや、俺はそんなに怪我を受けなかっただろ?それに感情阻害を提案したのが俺だから責任を受ける」
「お2人さん」
でも、俺にとってはどう思っているか?何を言うかはとっくに決まっている
「俺が怒っているつもりで話していますか?
でも、俺は一切怒っていません」
「えっ…そうなのですか?」
「勇者になるって王様の前で俺は宣言しました、確かに実践訓練とか死を目の当たりにしたりとか、恐怖することも多かったですけど、それでも勇者としての責任から逃げるつもりはありません
俺が勇者として相応しくするための行動と思いました、楽しいと思うことも多くありました
……まぁ、つまりは優しい嘘をついていたということですよね?」
「許されないことだと思っていますが…」
「本当に傷ついた時は言うことはあったと思います、けれどもその感情阻害魔法?をかけなかったら挫けていた可能性もあります、戦うための補助をして頂いて
俺は感謝の気持ちでいっぱいです」
本当に怒りなどのマイナス感情は一切として湧いてこない
いままでこの異世界に来て、知らないことしかなかったグラーフィアのことについて色々と教えてもらったし、陰湿な異世界召喚作品のような「召喚後、必要な物を持たせて、はい、いってらっしゃい」っていう雑な事をしないで世界の危機であっても丁寧に教えていただいて、こんなにもサポートも沢山あって
心の奥底から感謝の気持ちだけしかない
「お許しを……ほんとうにありがとうございます」
「ああ……俺からもありがとな、ご慈悲をな」
「ねえ!でも私はちょっと気になっていることがあるの!」
話がまとまりそうなときに、急に品子さんが話に入って来た
あれ?なんか怒っている感じがする?
「シナコさん?!あなたは戦いを全然気にしていなかったから魔法を与えていませんでしたが…それが気に障りましたか?!」
「自分だけ魔法与えられなくて寂しいのかー?」
「いや、そうじゃないけど…」
品子さんは本当に必要無かったんかい!!
メンタル強者すぎないか!?
本当に主人公と勇者の適性が俺たちの中で最も高いんじゃないか!?
「そーじゃなくって!!2人からあの言葉を聞いてないの!」
「あの言葉?」
「あの言葉って?」
「うーん、自分で気づいて欲しいんだけど……」
……なんとなく分かった、声掛けをしている時によく言った言葉だし
物語においてもこの言葉って本当に大切だし
最近の人は忘れることも多いあの言葉
「思い出す前にお伝えしたいのですが
ともかく、王都セカンドルトを守っていただきありがとうございます」
「それーーーーーー!!それだよ!!
元々言おうとしたならごめんなさい!!」
「えっ!?そうだったのですか!?」
「あー………みーちゃんは、感謝と謝罪は大切ってよく言っていますね」
「わりいわりい、じゃあ俺からも
この街を守ってくれてありがとうなー
……本当に感謝する」
そう言って、ナリアン神父は両手を合わせながら深々とお辞儀をして
ガリウス兵隊長は腰を90度に曲げるぐらい深々とお辞儀をした
これは本当に…
「兵隊長、ものすごく真面目なの初めて見たかも」
「私も………初めてです」
「ああ、休日の時でもこんなにも真面目な様子を見たことなかったな」
と、とりあえずこの感情阻害魔法の一件は落ち着いた…そういえば1つ気になることが
「蜜巳さん」
「どうしたの………?あの……………千斗さん?」
「俺は正直この感情阻害魔法について気付かなかったけど、ナリアン神父が話す前に知っているみたいな口ぶりをしていたけど、どこで分かったんだ?」
「その………夜にこっそり練習しているって話をしたことありますよね?」
「ああ」
「魔物との実践訓練で…………その……怯えまくった後の夜、私も実践訓練を行いました
その時に………かけてもらいました」
あれ?そうだとしたら初日の時は用事があるって言っていたような?
「ねえ、みーちゃん?ナリアン先生って一旦帰ったんじゃなかったっけ?」
「ナリアン先生は………1回は帰宅してしまいましたが…あの……………その後に夜の練習では再び帰って来まして、1回恐怖を感じないようにして……………戦いました
その時に…………2人には秘密にしていました
あの時に千斗さんが……………私の為に無理をしたけど………その頑張りを無駄にしたくなかったので」
「でも、みーちゃん
ここに来る時ってその魔法は?」
「かかってないよ…………カイザムさんに……………背中押されて、頑張った!」
「みっ」
「みっ?」
「みーーーーーーちゃん!!本当にありがとう!!」
「わぁ!ちょっと………………抱き着かないで!」
………………………………俺は決して手を出さないし口出しをしない
抱き合っている、いや一方的に抱いているけどどちらにしても2人の幸せをただ眺めるだけだ
「………えっと」
「兵隊長、いえガリウス、ここは静かにお願いします」
何か言おうとしたガリウス兵隊長の言葉をつい、強めの言葉で遮ってしまった
でも、この状況はどんな内容の話でも邪魔してほしくない
「あ……ああ、随分と威圧感のある声だなーって思って押されてしまったよ」
「こういうもんに対しては俺の信念のような物ですので」
「そ、そっか」
「ちょ…………ちょっと、ここに沢山人いるから………離れて!!」
「あっ!そうだね!ごめんね!」
そう言って離れてしまった、まあ、しょうがないよな……
「えっとーーー離れたなら俺から他にも話したいこともあるし、いいかー?」
「いいよ!」
「大丈夫ですよ……………」
「どうしたんだ?兵隊長?」
「急に話を聞くようになったなセント、まあいっか
言いたいことが2つある、まず1つは
本来勇者ソラアミセントと勇者アキハラシナコの2人に今日訓練しようとした弱点の事だがー……」
「遠くが攻撃できないってことだよね!」
「今回の戦闘中に気づけたよ、そして蜜巳さんのおかげでその弱点を補えました」
そう言うと、蜜巳さんは少し照れながら一礼をした
「あー、それに気づけたならいいや
そんで2つ目に勇者たちの戦い方は見ていなかったけど、傭兵や兵士の様子や発言
それに3人共仲が良くて、疲労はあっても元気そうだし
正直に言うと……」
「正直に言うと………?」
何やら神妙な面持ちの兵隊長の様子に俺たちはかたずを呑む
「正直、めんどくさいとかそういうのも関係なしに俺から教えられることはほとんど無い
このまま勇者として明日からもほかの国に出てもいいぐらいだな
アミルクリスタルを探しに行かせてもいいと思うぐらいだ」
え?それって………
「いち………」
「こら!兵隊長!」
「あいた」
………あやうく「一人前になったってことですか!?」って言いかけた
何か違うらしい、ツッコミのようなナリアン先生のチョップが兵隊長の脳天に直撃した
「訓練内容を飛ばすことはしてもいいけど、流石に最後の仕上げはやらなければいけない決まりでしょ!」
「えーでも本当に俺から見ても必要ないぐらい強いと思うけどなー」
「ですが!!」
「ねえ、兵隊長?先生?」
「どうしましたか?」
「その『最後の仕上げ』って何?」
「あーまあ、簡単な事だ
俺と一戦交える
ってだけだ」
「えっ……それって勝たなきゃいけないということですか…………?」
「いーや?何も勝てばいいという訳ではない、強さなんて人によるし武器や戦い方の相性ってものあるからなー
『勝て』とは言わない、戦い方を見せてくればいいんだ
身をもって戦い方を受けて、いけそうなら合格って訳だ」
「………………」
なるほど、もし「勝たなければいけない」なんて条件だったら一生王都から出られなかったと思う
実践訓練をする前に兵隊長と何回か手合わせをしたことがあるけどその強さは圧倒的
さっきまで戦っていたわけだし王都セカンドルトを守るのに十分な強さがある
戦って数日…いや数週間前の自分達と比べるとガリウス兵隊長は何年も訓練でも実践でも戦ったんだろう
経験の差はそう簡単には埋まらない、チート能力を持ったりでもしない限りだ
……まぁ、この世界に溢れているマナも十分に便利すぎるけど
「兵隊長、つまりは今日はゆっくりと休んでまた後日手合わせを…」
「おん?今からでもいいよー?こうゆうのは今済ませるのが一番楽だから」
「……兵隊長?俺は勇者たちの戦いを見ていましたけど、続けざまにやるのは流石に酷では?」
リスト隊長含めた周囲の人達からものすごく引かれていた
たしかに、あんなにも大きな戦いがあったのに休まずにやるなんて…………
「ほら、これ飲めば疲れも吹き飛ぶしマナも全部回復するでしょ?」
「あれ?これってここに来る前にカイザムさんから渡された薬?」
「それは私たちが重傷を負った時の緊急用じゃないですか!」
「いーじゃん、使わなくても良かったんだし
取り合えず勇者たちの意見でも聞いてみれば?」
非常用の食料が使用期限が近いからって食べる…的なのはあるけど、そんなテンションで渡されてもな、それにここに来る前にさっき飲んだばっかりだし、ゲームだったら初級ポーションとかをがぶ飲みしまくれるが、リアルだとオーバードーズしないかちょっと心配だけど
「はぁ…その勇者達はどうします?これだと兵隊長は頑固になって聞かないでが。
今日はお休みますか?それともこれを飲んで今から仕上げします?」
どうやら、俺たちがどうするかしない限り進展をしない状況になってしまったらしい
でも………実を言うなら答えは決まっていた
「俺は仕上げする、さっきまで戦っていたけど、ここまでの会話で休めたし、ちょっと気分が高揚しているからこのままの勢いで戦いたい」
「私も………………戦いたい!私も…………もっと……戦えると思われたい!!」
「私だって戦いたいよ!それに世界を救うのも早めにしたいし!!」
「………って感じだけど、ここで仕上げしてもいいよな?神父様?」
「はぁ……分かりました、私が見届けますので皆さんがんばってください」
ちょっと呆れながらも、俺たちの武運を祈りながらポーションを渡して来た
兵隊長から、神父様から……あと一本は?
「えっと…やる気があるのでしたら勇者様方頑張ってください!!」
リスト隊長からも1本貰った、これで3本揃った
それらをもらって3人で飲む
「うぐ……ぷはぁー」
「やっぱにがーい」
「……うっ…きゅ」
「大賢者アミルさま、かの者の怠惰…じゃなくて、穢れを払いたまえ」
「なんか余計なこと混ざってなかったかー?」
「日頃の行いです」
「そうゆう時は誤魔化すもんだろー?」
苦い薬を飲み終えると、さっきまで戦った疲労感が何事もなかったかのように回復した
兵隊長の疲労はどうやらナリアン先生の回復魔法で治したようだ
怠惰も確かに払って欲しいが
「んで?誰から行く?」
兵隊長は準備万端だ
行ったところで今まで通り瞬殺の可能性はあるけど、実践訓練より後は戦ったことは無い
あの時よりも強くなっているはずだけどそれでもしっかりと戦いたい……
「俺から行きたい」
「いいよ千斗!」
「………いってらっしゃい!」
真っ先に手を上げて前に出た
2人の了承も得られることもできた
「おーやっぱりやる気満タンだね
よーし、いつでもいいぞ?
その、マク…えっと………」
「マクスラスだ」
「そうそう、そのマクスラスで来てくれー得意武器だろ
当然魔法も好きなのを使ってな」
「もちろんです。兵隊長も好きな物を使ってくれ」
「………」
「…?兵隊長?」
「得意武器かーなんだっけなー」
「何だっけ?どうゆうことだ?」
「なんでもいいやー」
俺はマクスラスを構えて、そして兵隊長は
持っていた武器を色々と落としていき
初めて手合わせをしたときのように素手で構えた?
得意武器が「なんだっけ」?どういうことだ?




