威厳さはない、救いは欲しい
「こっこここここです!それではお休みください!何か困りましたら部屋にある呼び鈴をならしてくださぅい!わしが……じゃなくて使いの者が来るから聞いてください!
それでは!」
今の言葉を約3秒でまくしたてるように話した後、全速力でかけ走って行った
周囲にいるフードの人も追いかけるようにその場から去って行った
部屋の前でポツンと3人で取り残される……いや気まずい
「あの……1回部屋に入って落ち着きましょうか?」
「えっと……はい」
「う…うん」
変にたどたどしくしながら受け答えしてしまう
とりあえず、部屋に入ってみると室内は中世の王の客室って感じになっていた
赤を基調とした部屋の作りになっており中心にはテーブルとそれを囲む4つの椅子
豪華な感じのするベッドが奥に3つあったワンルーム……ん!?ワンルーム!?
「わっ!?」
「ど、どうしたの空網さん!?」
気付いた俺は大急ぎで呼び鈴を鳴らして使いの者を呼ぶ、物の数秒でそのらしき人がきた
「は……はぅぃっ!?何かご不足なところありましたか?」
「な……なあ?じゃなくて、すみません!他に客間か部屋はありませんか!?」
考えて見ろ!彼女ならまだしも、出会ったばっかりの知らない女性と同じ部屋で眠れるものか!
……いや、クリスマスイブを共に過ごしてはいたけどやんちゃはしてもそれ以上のコトはしていないし……ってか彼女持ちなのに知らない女性と一緒の部屋に寝るのはまずいだろ!
「え!?こっ……この部屋ではご不満ですっか!?」
「いや、そうゆう訳ではなく!あーえッと」
ちらりと女性2人を見てみたが多分意味を理解したのか、顔を赤らめながら部屋の奥に下がって行った、秋原さんがまたみーちゃんさんを守るような体勢になっている
「同じ部屋に男と女が一緒なのおかしくないですか」
「……え?何がですか?」
うおおおおおおおい!!この世界ってそういう価値観が無いんですか!?
男女のそういう何か気遣いないのですか!
それとも何かパニクって発言が無茶苦茶になっているのですか!?
「申し訳ございません!どちらにしても部屋はここしかありません!許してください!!」
「い、いいえ怒ってはません!無理ならそれでいいです!」
正直この変な怯えた気遣いはキツくてあまり聞きたくないから早く追い払おうとした
「あっ、そうですか!分かりましたすいません!」
そういいながらかけ走って逃げていった、いや本当に何もしていないし何も怒っていないはずなんだけど…
「………」
気まずい空気の中、ゆっくり後ろを見ると女性2人はさっきと同じ体制のままになっていた
「……何とかできなくてごめんなさい」
「い…いや、空網さんは悪くないですよ…」
「……」
えっと、異世界召喚系でこういった初対面の時ってたしか、自己紹介をして状況説明をして……
いやまって、そういえば異世界召喚って一緒に召喚された人と行動する作品って見たことないんだけど!!主人公のみ追放されたり連れ去らわれたりとかで結局単独行動をとるシーンしか見てこなかったんだけど!!
男なにの女性にこんな感情持っちゃいけないのは分かっているけど非常に不安な今、離れたくないよ俺は!
「ねえ……とりあえず自己紹介しない?さっきは名前だけだったし…」
「なっああそうだ、こういう時は俺から言うよ」
「え?そういう物なの?私からでも…」
「いや男の俺からがいいだろう」
秋原さん誘導ありがとう、この短期間だけどここまでのやり取りで話が上手い人だというのが分かった
未だに足は震えているしここはたぶん異世界だし自分自身のプロフィールはほとんど公開してもいいだろう、それで秋原さんもみーちゃんさんも落ち着いてくれたらそれでいいし
俺たち3人は椅子に座る、秋原さんは椅子を動かしてみーちゃんさんと隣同士にして
俺はその対角線上に椅子を動かして座った、ちょっと重いなこの椅子…みーちゃんさんは動かそうとして諦めていたし
「おほん…改めて俺の名前は空網千斗、17歳の高校生で関東の○○県にすごしてている
彼女とクリスマスイブを過ごしていたんだけどチキンを買った帰りに急に地面が光ってこんな感じになった
俺のことは自由に呼んでもいいしタメ口でもなんでもいいし俺を信用しなくても大丈夫だ……じゃなくて大丈夫です」
最後の言葉は謙遜とかあるわけではない、みーちゃんさんが未だに怯えた顔でこちらを見ており
何かしょうがない理由があるのかもしれない
「いや、あんな怖い状況だったのに私たちを守るように前に立ってて……それだけで空網さんはいい人だと思うんだけど?」
「何か……本能的に体が前に出た、彼女持ちの本能かも知れないと思う」
「そう…ほんとうにありがとうね、ほらみーちゃんも?『ありがとう』と『ごめんなさい』は誰でもちゃんと言わないと」
「あっ……ありがとうございます」
コミュ能力は2人で真逆のようだ、いや俺も厨二病な事をちょっと言ってしまう所があるからそんなに高いわけではないけど…
「どういたしまして」
「じゃあ、今度は私から
私は秋原品子よ、年齢は16歳で関西の中国地方にすごしているの……じゃなくていたって言い方が正しいのかな?」
「多分正しいかも、異世界っていうやつだと思いますし」
「いせ……かい?」
あれ?異世界って通じてない?
「みーちゃんが時々言っているけど……それって何なの?」
「えっと、説明すると長くなるから自己紹介後でいいですか?」
「ああ、分かったよ、私は……正確にはみーちゃんと一緒でクリスマスイブに私たちは一緒にいたんだけど急に視界が真っ白になって気がついたらこの状況に……」
そういいながら秋原さんは乱れていた緑色の髪をかき上げてオールバックにした……え?なんで?
「ああ、これは気にしないでください…ここにきたときに髪が乱れちゃって直しただけです
堅苦しいから私はさん付けでよんでもタメ口でいいかな?」
「あ、ああ構わない」
なんか、秋原さんが立っていて改めて思うが大柄でオールバックとなると結構厳つい印象にになっている気がする、いや口が滑っても絶対に言えないけど
「みーちゃん…やっぱり空網さんのこと怖い?」
「……」
「俺に無理をしなくて大丈夫だよ?」
「い……いえ、私は……話します」
そういってみーちゃんさんは立ち上がった、橙色の長髪は整えておらず
秋原さんの陰に隠れていた、秋原さんが大柄だからこそみーちゃんさんの小さな体が尚更目立つ……どうゆう関係なんだろうか?姉妹だとしても髪の色と顔つきは違うし……いや髪色は創作だと姉妹で色が違っていることが多いからほとんど関係ないし
とにかく2人が同い年ではないだろう
「そ……空網千斗さんごめんなさい、せっかく頑張っていたのに警戒して………あらためてありがとうござい……ます」
「どういたしまして」
声も震えているし消え入りそうなぐらい声も小さい
3人の中でこの状況に1番怯えているんだろうな…
「私は小沼 蜜巳…しーちゃん……品子ちゃんと同じ16歳でしーちゃんとは幼馴染で…一緒にいたらここに………」
同い年でした、いや、幼馴染だと!?
ま……真逆な2人が幼馴染だと!?支え愛ってやつですか!
幼馴染は一番好きな関係なんだよ!
……なんて、表情にも出すわけには行けない
そういえば俺は帰宅中だったから靴を履いていたけど2人は靴下だ、室内で過ごしていたんだろうな…俺が足元を気にしていると近くに置いてあったサンダルのようなものを履いた
「道理で2人は仲がいいんですね」
「あっ……ありがとうございます」
なんか、感謝されてしまった。
でも、その前に確認したいことがまだある、この世界に来た時間帯がクリスマスイブって言っていたから同じ時間帯なのは分かったけど
「あの、プライベートな事ではなく質問がいくつかあるんだ」
「いいよ、答えられるところまで聞くよ」
「えっと、今の総理大臣は?」
「え?〇〇〇だけど?」
「一万円札、五千円札、千円札の肖像画は?」
「えっと……みーちゃん誰だったけ?」
「○○○○、○○○○、○○○○よ?」
「……なるほどな」
「えっと、この質問ってなんのいみがあるの?」
「あーこの質問は…」
どう説明したらいいんだろうか、俺と秋原さん&小沼さんでまた別の異世界か平行世界の可能性もあったからそれを聞きたかったんだけど
とりあえずは総理大臣も札の偉人たちも一致しているから同じ世界の日本人なのは分かった
でも秋原さんは異世界というものが分からないからそこから説明しなくていけないし……って思っていたら小沼さんが口を開く
「それで……これってやっぱり異世界という物でしょうか?」
「た、たぶんそうだと思う、状況証拠的に」
「みーちゃん、やっぱりそれって何?」
「え……えっと、普通の世界にいた人が……なんか…巻き込まれて……えっと」
「む、難しそうなら俺が説明しようか?そういった小説をよく読んでいるから?」
「あっ……お、お願いします」
さて……説明は苦手だけど頑張らなきゃ
「俺たちは同じ地球に住んでいる日本人だというのはさっきの質問で分かったんだけど」
「あっ…そういう意味があったんですね」
「うん」
小沼さんは理解したらしい、こういったオタク趣味…じゃなくて漫画やアニメはある程度知ってはいるみたいだ、逆に秋原さんは全く読んでいないかほぼ無いらしく漫画アニメ趣味はほとんど詳しくないらしい
一種の考察だけど秋原さんは小沼さんから聞いたぐらいの知識しかないっぽい
「あの王様の発言からそんな日本にすごしてきた俺たちはこの別の世界、『異』なる『世界』と書いて異世界に連れていかれてしまった、と思うんだ」
「連れてっ!?…それって拉致じゃないの!?」
「有無を言わさずにつれてこられていることに関しては間違ってはいないけど
いわば……魔法とか魔術とかが関わっている所は当たってもいない」
「ま……魔法?それって本当にある物か?」
「あー…現在にこの通り中国地方にいた秋原さんと小沼さんと関東地方に住んでいた俺が急にここに来てしまっているから実在したってこと……かな?」
魔法があるかどうかも現実味が無いんだけど
「異世界作品には異世界転移とか異世界転生とか色々と種類があるんだけど……」
「つまり今の状況は異世界転生でしょうか?」
「あーごめん小沼さん、死んでこの世界に来たわけではないから正確には異世界召喚が近いかもしれない」
「そ……そうでしたか、ごめんなさい……」
「謝らなくて大丈夫ですよ、結構勘違いする人が多いですので」
実際、転生と言っておきながら死んで異世界行ってなかったりとか物書きなのに意味を分からずに書いている人も多いから実際勘違いする人も多い…っていうより読んでいる人はあまり気にしてない人が多いが………
転移と召喚は同じと言ってもいいが転生の場合は戻れない可能性が高い、俺が今まで読んだ中では1つしか知らない
あの王様から召喚に関して聞き出したいが果たして聞けるだろうか?
「で、でもよ?拉致みたいなものだとしたらいったい何の目的が……」
そう秋原さんがいうと俺は一度目線を外してしまう、小沼さんも異世界召喚がなんなのか分かっているのかさらに怯えている……
「え!?ごめん!何か私悪いこと言った!?」
「いや、秋原さんは悪くない」
「しーちゃん……悪いことは言ってないよ…けれど…………怖い真実って聞ける?」
「えっ……」
「覚悟して聞いていただけますか?」
「………」
そう言うと秋原さんは小沼さんを抱きしめた
「しーちゃん…ありがとう」
いや、秋原さんは小沼さんを恐怖から守るために抱きしめたわけではない、自身の不安を落ち着かせるために抱きしめているんだろう
「い、いつでもいいよ」
「……うん」
2人の覚悟を聞いて俺もひと呼吸して覚悟を決めて話し始める
頭ではわかっていても口から話すと俺も理解してしまうと思うと恐ろしいが女子の前で怯えたくない
「王様が『私たちの住む世界を救ってくれ』って言っていたから
俺たちは中世ファンタジーな世界を救わなきゃいけない勇者、ようは物語の主人公にされてしまったってことだ」
「え?それっていい事じゃないの?」
「秋原さん…考えて見てください、主人公が剣や魔法を持って魔物と戦う物語は見たことありますよね?」
アニメ漫画知識が無くてもそれぐらいは見たことあるはずだ
「うん、その主人公になれるってかっこいい事なんじゃ……」
「普通の世界にすごしていた俺たちが急に知らない世界で救うとこになる命運を背負わさられるんだ、魔物と言ってもどんなものがいるかなんてわからない、小さな魔物でも大群に寄ってたかって袋叩きにされるかもしれないし、大きな魔物に食われるかもしれない
相手が魔物じゃなくてもこの国を狙った革命軍との戦いになる可能性もある、その時は人との戦いになるから人を殺す覚悟が無くても殺さなきゃいけなくなる
ずっと戦うことになるから常に命の危険が付きまとっているんだ
世界を救う主人公っていうのはその覚悟の上で戦っているんだ」
そういったら、いよいよ理解したのか秋原さんは震え始める
「えっ……え?本当なの?」
「この状況はそうとしか言いようがない、物語でこのような始り方は何回だって見てきたんです」
「……しーちゃん、怖いよ…」
「だっ……大丈夫!大丈夫だよ……みーちゃん…」
秋原さんの「大丈夫」は小沼さんに言っているけど自分自身に言い聞かせているだろう
そりゃ、怖いよな急に命がけの状況になってしまうなんて
何よりも帰れるかどうかなんてわからない、平穏に幼馴染同士で楽しく過ごしていたはずなのにこんな状況になるなんて俺だって想像つくはずない
王の変貌ぶりにあっけに取られて一度落ち着いていたけど、やっぱり俺も口で説明した後は俺にも恐怖心が這いずり回ってくる
俺だって、今泣き喚きたいぐらい怖い、玲香……せめてお前が一緒にいれば、いや、お前が巻き込まれなくて良かったのは不幸中の幸いなのだろうか
「私…こんな性格だから………召喚された勇者って世界を守るのに積極的な主人公が多いしそういう物にあこがれていたけど…………こんなにも怖くて不安なんて…………主人公になんてなれないよ」
「主人公になれないとか、主人公と思っていたなんて話ではない…この世界にとっての救世主に召喚された時点で主人公にされたようなもんだ……」
「私たち……戦わなきゃいけないの?」
「そうだろうな、召喚されたのは俺たち3人でこの中で唯一の男は俺で一番年上だ
立場を利用して横暴なリーダーになる気はないけど2人がこの状況が怖いっていうなら魔物の戦いも俺が受け止める……だから2人は後ろで……」
「自己犠牲はやめてよ!」
「うぉ?!」
2人を不安にさせないように言っていたつもりだったが
さっきまで震えていた秋原さんは机を両手で叩きながら身を乗り出して少し驚いてしまった
「空網さん、自分が男だからとか1番年上とかでプライドか責任感なのか分からないけど1人で抱え込むな!性別が違ってて年齢が1つだけ違うだけで同じ世界の日本人だろ!」
「その……空網さん、私たちを不安にさせないように立ち回っているししーちゃんが信用しているから優しい人なのは分かるけど………優し過ぎて受け止めて抱え込むのはよくないよ………」
「いや…あの、ごめんなさい」
女性2人の勢いに謝ってしまった、でもさっきまで警戒されていた小沼さんが秋原さん経由で信用されたのは少しうれしい
「あなたも、あなたも不安でしょ?正直に話して?それで楽になるなら、私たち同じ立場の人でしょ?運命共同体…ってものかな?だったらプライベートな秘密は話さなくても正直になればスッキリすると思うよ?」
「………」
「……それとも話したくないの?弱気になっても泣いても私は嫌なことは思わないから、あなたもそんなに震えていて不安なんでしょ?」
「……こんなにも震えていて、空網さんも怖いでしょ?」
そう言われて俺は気づいた、いや、1回武者震いって誤魔化したけどそれは自分自身に言っていたんだろう
これは……話すか?普通だったら弱気になったら失望されるかもしれないと思ってしまう所だけどここまで促されるっていうなら……正直になろうか
「………玲香」
「れいか?」
「この世界に来る前に一緒にクリスマスイブを過ごしていた彼女の名前だ」
彼女の名前を口から出した瞬間、かってに涙がこぼれてきた
「俺は、そういった小説とかを趣味でよく読むことが多くて彼女の玲香とはそういった趣味が合って付き合ったものだ
見ている今期のアニメも見たかったしこれから最終巻を迎える小説だって見たかったし、それらを見て感想を共有したかったし
学生なのにちょっとやんちゃしてクリスマスイブを2人っきりで過ごしていたんだ、とても楽しかった……とても楽しかったんだ………」
厨二病なやり取りをしながらクリスマスパーティをしていただけであった、そんな思い出がほんのちょっと前のことなのに遠い昔のように思えてくる
涙が大粒になってポロポロと……
「チキンを買いに行っただけなんだ……その帰りにこんなことになってしまった。
そりゃアニメや漫画のようなカッコイイ主人公に憧れていて主人公になりたいと思ったことだってあった、小説を読んで主人公を自分に当てはめて彼女と共に名シーンを演じたりすることだってあった
けれど……実際になってみて何もやってないのにここまで怖いなんて思わなかった
正直俺は帰りたい死にたくない勇者の命運なんて投げ捨てたい、家に帰って玲香に会いたいんだ」
そこまで話しているうちに俺はしゃくりあげながらどんどんと涙が溢れ出てくる
カッコ悪い、女の子の前でこんなにも子供みたく泣いてしまって本当にカッコ悪い
でも………一度溢れてた涙は止まらない
すると目の前に何かおおわれる布が
「なっ……」
「よく正直になったね、空網さん…机に置かれていたナプキンみたいなものよ、これをハンカチ代わりにして涙を拭いてね?」
「カッコいいとか……そう空網さんは言っていましたけど、カッコ悪いとか思わないでください
私たちと……お、同じ立場ですから………ちゃんとお話を聞けて、私は安心しました」
ああ……なんだか、この世界に来てからずっと心の中にあったしこりが溶けて行く感じがする
この2人はとてもいい人で安心した。異世界召喚の作品の中には他の召喚された人物に対して悪意を持った行為をする奴だって小説の中で見てきた
溶けていく瞬間と共に……それと同時に何か、1つ大きな決意が決まった
涙をぬぐって1回深呼吸をした
「落ち着いた?」
「はい、この中で唯一の他人なのにありがとうございます」
「そんなかしこまらなくていいよ?さっきも言った通り私たちは運命共同体、どうなるか分からなくても仲良くして一緒に頑張りましょう?」
「わ……私もよろしくお願いします」
「あ……ああ、よろしくな」
秋原さんが握手を…と手を差し出すと、小沼さんも手を差し出してきた
ナプキンで拭いたとしても手が俺の顔から出てきたいろんなでベタベタになっている、一度服で手を拭いてからちゃんと綺麗になったことを確認して
まずは、秋原さんと握手をしその後に小沼さんとも握手をした
2人共、見立て分かるような震えは無かったけど握手して分かった、手が震えており最初と比べてみると落ち着いてはいるけどまだ怖い気持ちがあるようだ……
「あの………一通り話し終わりましたが………ここで寝るんですよね?
どうやって寝ましょうか?」
「あっ…」「あっ…」
……自己紹介と状況確認で忘れていたけど、そういえば男女の高校生3人がワンルームで寝泊まりしなきゃいけない状況は変わらないんだった、使いの者は役に立たないしこの状況は……
「この部屋の扉には鍵がかけられるから俺はと廊下で寝ることに……」
「だから自己犠牲はやめてって!ここに来る前はクリスマスイブだったから寒かったがここに来てからは普通の気温って感じになったけど、ちゃんとしたベッドに寝ないと眠れないよ!」
「……ちゃんと寝ないとダメだよ………空網さんが危ないことはしないのは分かるから」
「ご、ごめん」
正直に言うと、俺はカッコつけて座った耐性でも寝れるとっくんをしていたらできるようになってしまったからそのつもりで言ったんだけど……まあ、次の日に全身が絶対に痛くなるけど
「だったら、せめてこの部屋の反対側にとベッドを移動させて……ん?ふん!ぐぐぐぐぐぐっ」
3つが等間隔に並んでいるからせめてにとテーブルを挟もうとしたけどベッドは固定されているのかと言わんばかりにちっとも動かない
「ねえ、こんなこと言うのもあれなんだけど
このベッドってさ?カーテンが付いているでしょ?」
「ああ、確かについていますね?」
「ベッドが大きいし私たちは右端のベッドで一緒に寝るから、あなたは真ん中のベッドを挟んで左側のベッドで寝てもらってもいいかな?中は見えないようにカーテンで両方閉めるようにして……
それでいいかな?みーちゃん?」
「うん、それでいいよ……
2人でお泊り会をしたとき……ぶりかな?」
「空網さんもそれでいい?」
「……」
「空網さん?」
「あっ…ごめん、ちょっと俺の脳内で大丈夫かダメかを考えていた」
「そう………大丈夫でしたか?」
「大丈夫になった」
本当は尊さで一瞬思考停止になっただけだけどな、幼馴染同士の2人が同じベッドで健全に寝るとか誰にも汚されるわけにいかない素晴らしい光景過ぎるだろ!
俺は彼女がいるし何よりも決して間に挟まる男にならない、いるなら俺が殺す
「じゃあ、明日には王様から色々と話を聞くためにもう寝ましょ?本当はシャワーの1つは浴びたいけどそんな気力もなんだか……ふわぁ」
「……わ…私も、なんだか疲れてしまって……」
「ああ……俺も活動限界の時間……かもな」
「……なんて?」
「しーちゃん……疲れちゃったということだと思いますよ」
「そう……か」
2人はゆっくりとある気ながらベットに向かって行く、俺も反対方向にあるベットに歩いていく
「おやすみなさい」
「おやすみー」
「おやすみなさい」
俺は上着を脱いでそれをベットの上に敷くと、布団に体を潜りこませる
自宅にあった自室のベットと比べて見たら、感じたことの無い半端ない柔らかさだ
王城のベットは本当にフカフカで体中に感じていた緊張感もほどけていく
俺は、勿論元の世界に帰ることもあるがもう1つ決めたことがある
あの2人を見ていてずっと心に感じていた気持ちがある
2人が仲良くしている様子を見ていると尊い気持ちになっていく
守らねば…この『Sanctuary』は守らねばならない!俺もちゃんと元の世界に帰って、2人に幸せな未来を訪れさせる
俺は軽度のカプ厨だけど、だからこそ積極的に手助けはするけど過干渉はしない!
なんて、決意表明をしていたら重く襲ってきた睡魔で眠ってしまった
ネタバレになりますが、千斗が2人に浮気をすることはありませんし、2人が千斗に惚れることもありません、仲間な信頼関係になりますがそれ以上になることはありません
千斗は間男にならないので安心してください