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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
プロローグ・王都セカンドルト

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19/58

躊躇はある、覚悟はまだない

箱の周囲4面が倒れて、天面が砕けて魔物の姿があらわにな………


「キッシャアアアアアア!!」

「うわっ!?」


姿が見える前に何かがいきなり飛び出してきて、とっさにマクスラスを横に構えて攻撃を防ぐ

目の前には…


「うっ!?」


俺はあの箱の中にはゴブリンのような外見をしている奴がいるのかと思っていた

けどその外見は、シルエットこそ小柄で深い緑色をしているゴブリンであったが

目は額と左右に3つ付いており、口は日本の妖怪のように耳まで避けていて

牙は不気味なほどに非常に多い

また、爪で攻撃してきたのを防いでいるからこそ、ここまでの至近距離にいるから分かるけど腐敗したような非常に不快なにおいがする

胸に何かこみ上げるものがあるけど、歯を食いしばってこらえる


「フッ!そこまでの醜悪な姿、容赦なく戦えそうで

我の準備運動にピッタリだな!」


恐怖心と不快感を押し殺すように自分を偽るように演じる

空網千斗ではなくウルティマ・ザン・ガーゴイルとして自分を鼓舞して戦いに挑む


「おーてっきり怖がっているかと思ったけど結構、楽しんでそうだねー

それとも怖いのを押し殺しているのかー?」

「我は、ウルティマ・ザン・ガーゴイル!!

恐怖など存在しない!」

「聞こえていたかーわりいな」

「うると……えっ?勇者ソラアミセントはどうしたのですか?

もしかして、以前に話していた発作なのですか?」

「はい………………その……中二病って言ったあの発作です」

「あー……でも本人が楽しそうでしたらそれでいいと思いますね!」


何か気を使われているかもしれないが無視する

気にしたら気が逸れて目の前の化け物にやられてしまうかもしれない

つばぜり合いしていたが、相手の腕を思いっきり空側に向けて弾く


「キシェァ!?」

「勢いはよい、だが軟弱な守りだな」


腕の力はそんなに無くて思ったよりも簡単に弾くことができた

急な力の運動に驚いたのか奇声をあげながら大の字で倒れる

兵隊長と手合わせしているのとは違って本当に弱いみたいだ

倒れた隙に急所を刺せば……刺せば


殺せるのか……俺に?


「クワァブギャァアアア!!」


殺す前の少しの躊躇、倒れていたチャンスであったのに俺が逆に隙を作ってしまって起き上がってしまった。

またも近寄ってきて今度は噛みつこうと迫ってきた、汚い口をしているからマクスラスの手持ちの部分に噛みつかれたくないから、刃を縦に構えてつっかえ棒のようにする


「ふん、その程度でやられてはつまらんな

少し遊んでやろうではないか」


とっさに、言い訳が口から出た

もちろんイキって余裕ぶるのを命がけの戦いをしている時にやるのはただただダサい

次の隙が生まれたら……後悔を後回しにして勢いで殺るしかない!

この戦いは蜜巳さんの恐怖を克服するためにも戦っているのだから

不安を克服させれば品子さんと蜜巳さんの『Sanctuary(重要聖域)』は守られる

2人が安心できるためにも絶対に楽勝に戦わなければ


「おーい、別に余裕は見せなくていいよー」

「ハッ!奴の観察ぐらい自由にさせてくれ!

我は最強の召喚獣だぞ?」

「あー負けなきゃそれでいいけど」

「千斗おお!がんばれー!」

「フン!応援か、感謝する!」


いくら中二病モードでも感謝の気持ちは忘れない

挨拶の中でも感謝と謝罪は大切だからだ


「カッギャッカカ…」

「鉄を噛み砕くほどの咬合力(こうごうりょく)は無いようだな、嚙むのを辞めればいいだろう」

「ガッギャッガッガッガ!」

「フン!挑発を聞いてすぐに乱心するとは、理性も知性も大したことないようだな」

「おーすぐに倒さずに分析かー偉いねー」

「お前の重さはどのぐらいだ?試させてもらうぞ!」


初めて兵隊長と手合わせした時のように化け物を持ち上げてみる、思った以上に軽くて簡単にあげられて……


「カギャ……キッシャアアアアアアアア!」


流石に口を開けて着地したと思ったら再び腕を伸ばして爪で向かってくる

さっき見たばっかりの攻撃だ


「さっき見たばっかりの爪か……芸が無いな!」


やり方が分かればマナの身体能力上昇分も含めて回避するのは簡単、体をちょっと横に避けるだけでいいレベル

兵隊長の言っている通り勝つのは簡単だ、でも殺せる勇気が……

いや、そういった考えは一瞬でも捨てなければいけない


「ハッ!我が魔法の練習台にしてやろう、少しは楽しませてくれるよな!?」


伸ばしてきた腕を脇に抱えて、お得意の水魔法を………


「生命の根源、それは水

命の持続に必要な物

直ちに刃となり奴を切り刻め」

「おーなんだそりゃ?」

「クリスタルランス!」


詠唱も魔法の名前も決して必要はない、けれども……

それでも唱えたくなるのがロマンってものだ!


「ギッ!?」


手のひらより放たれた水の槍は化け物の腕を貫く、どころか千切れて血が飛び出てきて


………千切れて!?


ここまでするつもりは無かったんだが!?

腕がちぎれた罪悪感を感じる前にもうさっさと殺さなければ!


「ふ……な………軟弱だな、我はここまで悪趣味な事をするつもりはない

我の糧の礎となるがいい!」

「ギャ…シャアアアアアア!!」

「だから、それはとっくに見切っているわぁ!」


三度腕を伸ばしてきたが片腕が無いからなのかバランスが悪く、爪の狙いがぶれている

マクスラスでその手を横に弾いてそのまま


「終わりだ」


頭に向けて刃を向けて付け刺した

……さっきまで暴れていた化け物が動かなくなり伸ばしていた腕がブラリと垂れ下がった

さっきまで上げていた声も一切発しない

心なしか3つの目から光も無くなっている感じがした

自分の中で何かしらの言い訳をして現実逃避をしようとしたけど、ここまで来て何も頭が回らない


俺は……この化け物であっても命を奪った

その事実を受け入れなければいけないし、勇者としてここから先はいくつも魔物を殺さないといけないし慣れないといけない

傷つけることは最初は怖がっていた、けれども時期に慣れた

これにもなれないといけないけど……これは慣れていいのだろうか?

それに…なんで()()()感情もわいてきたのだろうか?


「あ…………」


自分でも全く気付かなかったけど罪悪感で手が震えていたのか槍が手から落ちて、ガシャンカランと音を鳴らした

魔物が付いているから何か潰れるような音も聞こえた気がした


「千斗!?」

「千斗さん!?」


女子2人からの声を聞いてハッとなる


「はぁ…………思った以上に、楽しくて今でも手が

震えてしまってな………ハハ」


誤魔化しているのか誤魔化しきれてないのか分からいけど

この戦いの目標は蜜巳さんの恐怖を克服する目標もあるから、俺は決してビビってはいけない


「………」

「兵隊長?今の戦いを見てどうしたのですか?」

「いやー面白い戦い方するねーと思ってなー

特に魔法を撃つ前の………語り?あれスゲーなって思ってな」

「詠唱だ」

「詠唱かー男同士でトモダチだから2人だけで話したいんだ

勇者アキハラシナコ?ちょっと待ってもらってもいいか?」

「え?いいよ?」

「あっ、その前にとちょっと待って」

「いいよー」


俺は兵隊長と話す前に一旦蜜巳さんの所に近寄る


「蜜巳さん?」

「はい………なんでしょう…………」

「本当に正直に言って欲しいんだけど、今の俺の戦いどうだった?

恐怖は克服できた?」

「無理を……していないん………ですよね?」

「ああ、とても楽しかった

この世界に来た時は武者震いって誤魔化したけど、さっきの震えは本当に武者震いになった」

「それなら……よかったです」

「それで、どうだった?」

「勇ましかったです………恐怖感はあの箱から感じるぐらい、まだありますけど

ちょっと和らぎました…………克服に繋がりそうです…………ほんとうにありがとうございます」

「どういたしまして、本当に良かったよ」


誤魔化しきれたようだ

もしかすると気を使われているかもしれないけど、それでも表情はさっき怯えている時に比べると結構落ち着いてきているようだ


「そろそろいいかー?」

「終わったから大丈夫だ!」

「よーし分かった、じゃ、女の子たちはちょっと待っててなー」


そう言われて兵隊長に連れていかれた、念のためにマクスラスを回収して……結構返しがエグイはずだけど化け物の頭部からスルリと普通に抜けた、あまり断面図は見ないようにする

しかし、いつもは皆がいる所で教えていたけど2人っきりで話すのは初めてだが

……まさか、説教?

女性3人に聞こえない距離まで離れたら兵隊長と向き合う


「まっ、勘のいいセントの事だら説教か?って身構えているかもしれないけど

俺はそんなめんどくさいことはしない」

「ああ、それだったらいいけど」

「勇者コヌマミツミの為に頑張ったな、偉いぞー

本当は怖かったんだろ?魔物と戦う恐怖ではなく『殺す』ことに対する恐怖に」

「うっ!?やっぱり見抜かれてたか…」

「だって、あの魔物が大の字で倒れた時に『観察する』とか言ってたけど

少し身がこわばっていたな」

「色々と試したいという観察は事実だけど、あの時

『俺の殺せるのか?』と躊躇してしまってな」

「正直だなー偉いねー

まあ、俺に怪我を負わせるときに躊躇していたからなんとなく想像通りだったよ

優しいのは偉い事だぞ、俺を怪我させたくないとか、魔物でも生き物を殺したくないとか」

「………あの、もしかして『でも勇者だから慣れなきゃ偉くない』的な事を言うのですか?」

「いや?そうじゃないなー」


まあ、なんとなく言わないのは分かってた

「無理をしないで正直なのが偉い」って言うのが兵隊長だしな

蜜巳さんの時はどういった意味があるのか一切分からないけど


「俺が言いたいのは

皆の為に行動するのもいいけど、自分だけで抱えるなってことだー

勇者はセント1人じゃない、コヌマミツミやアキハラシナコの2人だっているんだ

1人だけで何でもやろうとしたら器用貧乏で中途半端になってしまうぞー

だからこそ一点集中して鍛えて足りない所は仲間たちに補ってもらえばいいんだよ

怖いなら仲間を頼る方が俺は偉いと思うなー

任せれば楽だってできるし」

「………そうですね、最後の一言は余計だけどな」

「きびしーね」


よく最強系では一応仲間がいたりしても、結局は主人公1人だけで戦う作品も少なくは無い

たしかに、戦闘以外でのキャラ立ちがあったとしても、お帰りなさいポジションのヒロインにはあまり魅力は感じないし、最強系だと頑張ってほかのキャラが戦おうとして、勝てなくてピンチの時に主人公が参上……と言う展開は多くて、「主人公スゲー」って気持ちよりもチープさを感じてしまう

共に戦い欠点を補いあう協力関係の作品が俺にとっては1番面白いと思う


「今は確かに、勇者コヌマミツミの為に行動するのは確かに偉い

セント本当に偉い、けど無理をするなよ?ってことを俺は言いたかっただけだ

こっちまで呼んだのはセントの行動を無駄にしたくなかったてことだ」

「わかった、ありがとう」

「あ、そういえばもう1つ質問だけど

もう1回魔物との戦闘訓練をやりたいかと聞いたらどう答えるー?」

「殺されるよりも殺す怖さはありました、けれどもあのような魔物がこの世界を闊歩しているなら……………覚悟を決めてやらなきゃいけない

それと、そのような恐怖感がありながらも…確かに楽しかった気持ちもありました」


殺した時に感じた「()()()感情」楽しい気持ちを思うことはおかしいのか何なのか分からなくなっている所もある


「時間を置いたらもう一度戦ってみたいです」

「おーそれなら安心したよー勇者アキハラシナコが戦ったら行けたら行ってみようぜー」

「はい!」


もしかすると俺も何かしら狂っている所があるのかもしれない、あんなにも怖さを感じていたはずなのに「楽しい」と言う感情があった

そんなことを考えながら、俺たちは女性陣の所に戻って行くことになった

次は、品子さんの番だけど

命のやり取りを行えるのだろうか…

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