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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
プロローグ・王都セカンドルト

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15/58

料理屋はある、メニューはない

挨拶をしながら歩いていく道すがら、俺たちは料理屋さんを探していた

歩きながらキョロキョロと探しているけど…武器屋に靴屋に服屋に、食べ物屋さんのような所はなかなか見あたらない、代わりに見つかったのは………


「樽ビールのようなマークのある吊看板、これは酒場みたいだな」


その看板を見ていると普通にお腹がすいてきた、それに思いついたことも…


「じゃあここにするか」

「えっ………………ここどう見ても酒場なんですけど…………」

「千斗!?やっぱりお酒を飲みたくなったの!?」

「待って!ちょっと説明させてほしい!!」


流石に2人に勘違いされないように早く誤解を解かないと!


「ファンタジーや中世における酒場って名前の通りお酒を飲む場所なのは確かにそうだけど

それ以外にちゃんと食事が出る場所だ!」

「それって?居酒屋みたいなかんじ?」

「そう!行ったことないけどそんな感じ」

「でも…………酒場に限定する理由って?」

「それで食事以外の理由としては居酒屋…じゃなくって!酒場には人が集まるし、いろんな情報が行き交っている」

「そうしたら……………中に入るとみんな怖がってしまうんじゃ…………」

「確かに今店に入っている人は怖がってしまいそうだ

蜜巳さんと品子さんのおかげでいろんな人達から挨拶を返されるぐらいになったけど、それでも誰もが安心しているわけでない

逆に入って『俺たちは大丈夫な勇者だ』と噂を広げて行けばいい、いつまでも怪訝な目で見られるのは嫌だからちょっと大きいことしたいと思ってここに入ろうと思ったわけだ…………ダメか?」

「私はすっごくいいよ思うよ!、みーちゃんはどう思う?」

「人がいっぱいいて………………ちょっと怖いけど…………………しーちゃんと…………一緒なら…頑張りたい!」


よし、多分だけど意見はまとまった!


「では行くぞ!酒池肉林の舞台へ!」

「しゅちにくりん!!!ってなに?」

「えっと………………美味しいおい肉が沢山……みたいなことかな?」

「それならいいね!しゅちにくりん!!!」


俺たち三人の朝ごはんの場所が決まった、何かが起こってもいいように俺が先頭になって木製で出来た扉と開いて入って行く

今は朝だけど意外と室内に客はいる


「いらっしゃ………い!?」


店内はファンタジー作品にあるような中世の酒場のような光景になっていた、地面は石のレンガで出来ていてテーブルやカウンターは明るい木製のテーブルを使っていてロウソクの明かりが暖かい雰囲気を出していて何人かの客がいた、テーブルには料理やお酒が並べられていておいしそうに食べて………いたけど俺たちが来たせいでその手が止まったようだ

まず右側を見るとテーブルの席がいくつかあって1テーブルに4つ椅子があって囲んで座れそうだ、そして左側にはカウンターの席があって後ろにはお酒のような瓶が沢山置いてある

カウンターの向こう側にいた先ほど大きな声で「いらっしゃい」って言っていた店員と思われるたくましい体形の男性は俺たちを見ると動きが固まった


「まずは挨拶!おはよう!」

「おはようございます」

「お……おはようございます」

「お……おはよう」「おは」「おはよ」


店内からポツポツとあいさつが聞こえてくる、逃げる人はいないようで料理がもったいことが起きないようで良かった、後は営業妨害にならないように急かさないように手早く行いたい


「えっと、空いている席はありますか?」

「あっえっとそこのテーブルにどうぞ!」


唯一誰も座ってないテーブル席をオススメされた、俺は出来る限り店を見渡せるように壁際に座って品子さんと蜜巳さんは椅子を移動させて隣同士で座った


「ごっごご注文が決まりましたら、お呼びください!」


呼び出しボタン的な物は無いけど、普通に声を出して店員を呼べば良さそうだけど……一つ困ったことが今起きた


「あの…………メニュー表的なのって無いのかな?」

「うーん?見当たらないね?」


そういえば中世の舞台ってどうやって注文していたっけ?居酒屋だったらメニューが木札に書かれていたりするらしいけどそれらしいものは周囲には見えない、店の表にメニュー看板的な物も無かったし…

もしくは店員さんを呼んでおススメを聞いてみるのもあるけど、怯えているからあまりそう言ったことしたくないし……もしかすると本当はメニューはあるけど渡せない理由も俺たちに怯えているかもしれないし

こういう時は一旦周囲のテーブルを見て、何かおいしそうな物を探してみて………よし、アレにするか


「すいませーん!」

「ふゅぃ!?はぅい!」

「あのテーブルに乗っている野菜料理?と肉料理?をお願いします、あっ俺たちはお酒を飲める年齢じゃないので普通の水でお願いします」

「えっと、じゃあ私もそれで!」

「私も…………」

「わっ!分かりました!朝ランチ3人前入りましたー!」


店員の男性がそうカウンターの裏側に言うと、どたっばたとカウンターの向こう側…多分調理場だと思うけど、すごい音が聞こえる


「急がなくて大丈夫ですよー!あと皆さんもこちらをガン見しないで食事と酒を飲んでいていいですから!」


そう言うと裏のドタバタ音も無くなったし、周囲の人達は食事をし始めた


「すごいね!千斗のおかげでみんな落ち着いたみたい!」

「まあ、俺が落ち着かなかったからな

俺たちはこのまま勇者としてちゃんと行動して『普通に』見られたい

勇者としての祝福と言う意味で特別扱いをされるかもしれないけど、とにかく今のような怯えられて変に気を遣われる状況からは変えたい」

「勇者としてのその行動を…………皆さんに見せなくては………………いけないということですね」

「そう!!」


少し周囲の人達は驚いてこちらを見ていた、多分だけど今の俺たちの話を聞いて勇者に対して思って思っていた偏見を少しでも払しょくできたのかもしれない、そう思いたい


「お待たせいたしました!!どうぞ!」

「ありがとうね!」

「ありがとうございます」

「あっ……ありが…………とう」


思った以上に早く作られたらしく奥からまた別の店員が出てきて俺たち3人前の料理を運んでテーブルに置いた、置くときは怯えているか………じゃなくて、慎重なのか丁寧に置いた

ぱっと見では自分の世界にあるような食材が使われているっぽい

置かれた料理を見てみれば野菜料理はトマトや葉野菜、あとヤングコーンみたいな小さなものが添えられており色とりどりで非常においしそう、何か油のようなドレッシング?のような物もかけられていて単体でもうまそうだ

肉料理は見たこともないぐらいの大きくてまるで野球のグローブのような分厚さもある、こんなに大きな肉はどんな動物の肉なのだろうか?もしかすると魔物の肉かもしれないけど恐怖とかよりも知的好奇心が勝って食べてみたい、強火で焼いたのか少し黒めのに焼けているけど俺は特に焼きの強さにこだわりは特にないから歯ごたえがよさそう、何かのケチャップのような赤いソースがかかっていて嗅覚にも空腹に響いてくる、

料理が運ばれてきたときから腹の中の獣がずっと「食いたい」と唸り声をあげている

王城とはまた違った形で、高級なオシャレな料理も本当に美味しかったけど

豪快な雰囲気のするその料理も本当に美味そうだ!


「いただきます」

「いっただきまーす」

「いただき……ます」


まずは野菜料理を一口、この異世界の料理は全般的に味が濃い目なのは王城での料理と同じようだ

葉野菜はトマトそのものは新鮮なうちに盛り付けられたのかみずみずしくて噛むほどいい音が鳴る、かけられた酸味の強いドレッシングもそれぞれの味にしっかりと染みていて旨い!特にヤングコーンとの甘みと組み合わせが本当に美味い

肉料理も噛み千切ってみると中からしっかりと肉汁が出て口内に溢れる

豚肉に似ているかもだけどそれよりも固めの肉で漫画の表現のように意外と弾力がある

噛めば噛むほど味が口の中に広がっていて本当にっ


「うっま!?」

「おいしいね!」

「美味しいです………!」


三人共口をそろえて美味いと言ってしまうぐらいであった

一応は演技のつもりを考えてはいたけど本当に心からの言葉!


「本当においしいね!千斗!」

「ああ、王城でも食べた優雅な料理も本当に美味しかったけど、豪快な料理も本当に美味いな!」

「はい……………あ、でもごめんね!私は小食だから………………しーちゃんも食べてもらっていい?」

「もちろんだよみーちゃん!」


…………うまいな、二つの意味で飯がうまい

ちょっと周囲を見てみ……たかったけど、いつの間にか店員さんがそこの場に立っていた


「うお!?どうしましたか!?」


近くにいるとは思わなくて普通に驚いてしまった、なんだ?!「シェフを呼べ!」的なことは一言も言ってないんだけど!?


「あの……本当においしいですか?」


たくましい体が縮こまっていながらこちらを見て様子を伺うように質問をしていた


「はい、最高ですよ!」

「あの………滅べとか言わないですか?」

「滅っ?!そんなことは言わない!むしろずっと残って欲しいです!」

「うんっ!私たちが………………私たち頑張って………………滅ばないように………するカラっ!」


滅べ?そんな怖いこと言った人がいたのか!?とんでもないクレーマーがいたものだ!それが怯える要因となったやつかもしれないな、勇者って言うよりももはや魔王みたいなものじゃねえか!?

滅べとかあの闇落ちした絵師の事みたいなやつでもいたのか?

蜜巳さんが頑張って声を裏返しながらそう伝えると、片手で目を抑えながら…………涙を流し始めた!?


「うっ………ううっ……」

「だっ!?大丈夫?このハンカチを使って涙を拭いてね?」

「あっ………ありがとう……ありがとうございます、こんなにも優しい勇者様方なんて」

「あの…………………本当にどうしたのですか?魔王以外に怖い事があったの……………ですか?」

「すまんな勇者様達、そこの事は話せないんだ」


王様の命令だろうな…あの日以来から王様に会えてないってか会わせられることもなくて聞くことも出来なかったし


「まあ、何に怯えているかは分からないんですが………

俺らからはこの店の料理本っ当に最高です!と伝えたいです」


そう言って俺は親指を立てて前に出した、日本では「いいね!」って意味で伝わっているが海外でが侮辱的な意味でもあったりする

この世界ではどんな意味なのか分からないし、そもそもそう言ったジェスチャーやハンドシグナルはあるかも分からない


「勇者様方に褒めてもらえて、幸福の極みです!」


でも、良い意味で伝わったようだ

ふと周囲にも目を向けてみると


「誰もが悪いやつってわけじゃなかったみたいだな」「俺、魔物かなんかだと思ったけど大丈夫なんだな」「この人達なら本当に……」


怯えている「何か」と比べられているけど……それについては聞けない、けれども自分達の評判はしっかりと変えられたみたいだ、とはいえ俺たちから「自分達は安全ですよ!」なんて詐欺みたいで言う訳にはいかない

俺たちの評判を一番変えられるようにするには、ちゃんと世界を守る実力を見せなければいかない

いつか、街の外に出て魔物を倒していけたら…いや焦ってはいけない、生き返るとしても焦って魔物を倒しに行って野垂れ死にはなりたくないし


「ごちそうさま」

「ごちそうさまー!」

「ごちそう………様です」


俺たちは完食して、店の人は「勇者様でしたらお代はいいです!」って言っていたけどちゃんと支払って店を出て行った


「ふぃーおなか一杯だね!」

「ああ、正直胸も一杯になった」

「うまいこと…いってますね」

「とりあえず、これでちょっと評判が良くなったと思いたいな」

「絶対に良くなったよ!ほかの店でも食べて同じことやろうよ!」

「…いや、とりあえず昼ごはんまで待って欲しいな」

「わ…………………私は今日一日分食べた気がするので……今日はもう食べなくていいです」

「お疲れ様だ、結構積極的に発言していて本当に凄いぞ?」

「っあ、ありがとう…………ございます」


蜜巳さんは結構頑張って食べていたみたいだな、おなかをさすってちょっと苦しそうにしている


「大丈夫みーちゃん?」

「ちょ…………ちょっと座って休んでも…………いいですか?」

「ゆっくり休んだ方がいいな」

「そうしようね!ちょうどあそこに座れそうな椅子があるし!」


蜜巳さんの休憩が終わるまで置いてある椅子に座って休むことにした

俺、蜜巳さん、品子さんの順番に座ってゆっくと過ごしてみる

一回周囲を見回してみると、いろんな人達が歩いている…そういえばナリアン先生の所で様々な種族がいるって学んだけど、いまだに人間以外見かけたことがない

一応は「王都セカンドルトは主に人間が過ごしている」って聞いているけど、少しは別の種族が…って見たかったけどいなさそうだな

通行人は普通に通る人もいれば、こちらをちらちらと見る人もいて、勇者と気づいて驚いている人もいたし

それに


「あ!挨拶勇者だ!」

「え?挨拶勇者?」

「おはよー!!」


2人の子供たちがこちらを指さしながら大きな声で挨拶をしてきた


「おはようございます」

「おはよう…………ございます」

「おっはよー!」

「やったーおはよう!」


満足げに子供たちは走り去っていった、元気そうでいいけど…挨拶勇者?


「なあ?挨拶勇者ってなんだかわかるか?」

「もしかしてあれかな?私たち何度もナリアン先生の所に行ってたんだけど

その時にすれ違った人と挨拶していた時に子供たちから挨拶勇者って呼ばれるようになったのよ」

「あの時の…………ボールを返した……………子供たちもいましたよね?」

「ああ、そういえばあったな」

「あの子供たちから………………優しい勇者と広まったらしいです」

「そいつは嬉しいな!」


挨拶をよくする優しい勇者か………………なんだか感慨深い物も感じるかもしれない小さい所からよい評判が広がって行けばこのまま…


「あっ!!あの人は!おはようございまーーす」

「えっ………あっ!

おはようございます……」


見覚えのある青髪のストレートロングの女性がいた…あの人は!


「あっ!おはようございますナリアン先生!」

「おはようございます勇者様方、今は休暇ですから先生って言わなくていいですよ」


まさかここでナリアン先…じゃなくてナリアンさんに出会うとは?!

何となくだけど両手を合わせて祈ってお辞儀をすると、ナリアンさんも品子さんも蜜巳さんも同じようにお辞儀してあいさつしあった


「それだったら私たちも休暇中だし勇者って言わなくてもいいよナリアンさん!!」

「それなら…アキハラシナコさん?」

「私たちの世界には……………苗字と名前と名前がありまして………………親しい人たちは下の名前やあだ名で呼ぶことがあります…………私は品子ちゃんをしーちゃんと呼ぶように………だから私の事は蜜巳さんでも……………大丈夫ですよ」

「私も品子さんでいいよ!」

「俺も千斗さんでもいいですよ」

「分かりましたわ、ミツミさん!シナコさん!セントさん!」


以前の神父のような恰好の時とは違って今は黄色い襟のついているシャツ?のような服に長い茶色のスカート、自身の中二病の事しか分からないから女性のファッションのことはまるっきり分からないけど普段着って感じの格好をしている


「皆さんは何をしているのですか?」

「朝ごはん食べてた!」

「王城以外でも…………ご飯を食べたくなったので………」

「その後は食休みをして休んでいる所です」

「それは良い事ですね!」

「ナリアンさんは何をしているのですか?」

「私はー?うーんと…散歩?特に何か目的もなくセカンドルドを歩いてるのよ、行き当たりばったりっていうことよ」


行き当たりばったりで休日を過ごす、たまに玲香とアキバまで遠出してそんな感じにすごすこともある

ゲーセンに行ったりラジオ会館に行ったりとラーメンやカレーを食べたり、学生にとっての金銭の消耗は激しいけど半年ごとに1回やるぐらいがちょうどいいと思っている


「あっ!そうだ!ナリアンさんにこの世界のことについて聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「いいですよ?何でも聞いてください」

「この辺りでお菓子を作れるところって無いかな?」

「お菓子を作れる?お菓子屋さんとかでは無くてですか?」

「はい………私としーちゃんはお菓子作りが趣味でして…………この世界に来てから1回もやったことないので………………どこかで作れたらと思いまして…………今はお腹いっぱいですけど............甘いものは別腹なので」

「素敵な趣味ですね!いい所がありますし私には特に予定は無いので一緒に行きましょう!」

「もちろん!千斗も行く?」

「………」


俺は別にお菓子作りをしたいって気持ちはないんだよな……

それ以上に女性たちの女の子らしい趣味の中に男……OUTすぎる

乙女の花園に男なんていてはいけないと思っているから


「俺は…1人で街を散歩してもいいか?」

「え…………?なんで?」

「お菓子作りも興味あるけど、料理屋とか以外にどんな店があるかとか見に行きたいしそれに」

「それに?」

「例の発作を発散したいところもあるから」

「あー……………」

「例の発作?セントさんは何かあったのですか?」

「いや、プライベートな事であまり人には言えない事なのです」

「それなら、しょうがないですね3人で行きましょう!」

「千斗?大丈夫?1人でいて??」

「大丈夫、いざと言う時の物は荷物に入ってあるし」

「変な……………無理は……………しないでくださいね…………?」

「それは大丈夫、俺は慎重で警戒心が強いから」


なんて強気で言ったけど本当に変なことはしないようにしよう


「それぞれの目的が終わりましたら三人共王城で集合しましょう?」

「さんせー!」

「分かりました…………」

「じゃあ俺もそういうことで」

「それでは千斗さん、いってきます」

「いってきまー」

「いって………きます」

「行ってらっしゃい、行ってきます」


3人は手を振りながら去って行った、どんなことをしているか本当は遠目から見てみたかったけどそれじゃあストーカみたいなものになる、漫画とかで二次元と三次元の壁を隔てて眺めるのが一番である

さて…………凄く久しぶりに1人になった気分だ、自分から別行動してからあれだけどちょっと寂しい

何をしようかな?

料理描写に関して中世ということは忘れてください、これは中世“ファンタジー”です

基本的に視点は千斗視点のみなので二手に分かれたとしても女性2人の視点は無いと思ってください

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