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39 襲撃

 私は夜会の会場を出て、馬車に向かった。もう、ヘロヘロだ。


「お嬢様、お疲れ様です」


 馬車の前では予定通りコレッタとメルナが待ってくれていた。二人の顔を見るとホッとする。


「疲れたよ。帰ろう」


 馬車に乗り込む。メルナは御者をしてくれるので、車内はコレッタと二人だ。他に護衛として騎兵が4人随行してくれる。


「では、出します」


 御者側に付いた小窓から、メルナが言う。私が「うん、お願い」と返すと馬車がゆっくり動き出した。

 夜道なので速度は出せない、のんびりした移動だ。


「ルディーナ様、だいぶお疲れのようで……城に着いたらすぐ湯浴みして寝ましょうね。準備はさせてますので」


「ありがとう。もうね、心労が凄くて」


「そんなにですか?」


「うん。怖いのなんの」


 私はメルナにも聞こえるように大きめの声で夜会の状況を説明する。コレッタは頷いたり驚いたり、コロコロ表情を変えながら聞いてくれるので、話していて楽しい。


「大変でしたね、ルディーナ様! メリザンド嬢の扇、今度あの子に会ったら弄ってみよっと」


 ”あの子”はメリザンド嬢の侍女をしているという幼馴染のことだろう。


「コレッタ、喧嘩は止めなさいよ」


 センシティブな相手を刺激しないで欲しい。コレッタに釘をさしておく。


「はーい」


「ところでコレッタ、生霊対策何かない?」


 9割冗談で私が聞くと、コレッタが目を輝かせた。


「私、そういうの得意です! 分かりました。城に戻ったらすぐに準備を」


「そ、そう。ありがとう。あの、無理しないでね」


 そんなに本気になられても困るのだが、コレッタは「スパイス類は厨房にある」「ビンも厨房ならあるかな」「針は手持ちで良いし」「問題は血か」など、ぶつぶつ呟いている。何を作る気なのだろう……



「馬車を止めます!! 騎兵も停止を!」


 突然、メルナの鋭い声が響く。馬車が止まった。メルナの声色からして明らかに緊急事態だ、私は即座に思考を切り替える。


「お嬢様、恐らく敵です。前方に10名程が待ち伏せしています」


 メルナがそう言った時、乾いた破裂音が響いた。恐らく銃声だ。音からして距離は少しある。弾は外れたようだ。


「10人の程度は分かる?」


「恐らくですが、ほぼ素人かと。今の銃声もこちらが止まったので混乱して撃ってしまったのでしょう。念のため伏せていてください。コレッタは鉄扉を閉めて、ランプを消して。殲滅してきます」


「分かった。可能なら何人か生捕りにして」


「はい。では暫しお待ちを」


 馬車内で私は身を屈める。コレッタが窓の内側に付いた鉄製の扉を閉めて塞ぎ、ランプを消す。この馬車は王族も使う鉄製のものだ。防弾性も高い。特に下半分は鋼鉄の鉄板が追加で仕込まれている。伏せていれば銃弾はまず通らない。


「さ、コレッタも伏せて」


 コレッタは「はい」と言って私の隣に伏せる。


「ルディーナ様、落ち着いていますね」


「ん、まぁメルナが暗い夜道で戦うなら10人ぐらいなら楽勝よ、騎兵もいるし」


 メルナは夜目が利くし、他の感覚も異常に鋭い。その上、剣技、射撃、格闘と何でもござれ、ベルミカ公爵家の最精鋭は伊達ではない。



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