32 反撃報道
「はいぃぃぃっ????」
意味不明な叫びが自分の口から吹き出す。
私が手にしているのは王家系の新聞『フレジェス・クェア』の本日号だ。
目の前ではメルナとコレッタさんがドヤ顔をしている。
『公爵令嬢事案の真相に迫る! 要人取材で見えてきた真相!!』
1面にデカデカと踊るタイトルはゴシップ紙と間違えたようなそれ。だが、何度見返してもお堅い日刊紙『フレジェス・クェア』だ。
中身はインタビューをほぼそのまま載せたような体裁の記事。
『ロッシュ・ヴォワール殿下に幼少から仕える従者が本紙のインタビューに答えてくれた』
うん、クロードさんだよね。
『外交機密の部分はもちろん私からも何も言えません。報道された内容ですか? そうですね、ルディーナ殿が大変お美しいという点は事実です。ですが、それだけではありません。知能が高く極めて優秀です。朗らかで人当たりも良く、理想的なご令嬢と言えるでしょう。ロッシュ殿下も非常に好ましく思っているようで、彼女の前では明らかに態度が違います。殿下のことはハイハイをしていた頃から存じておりますが、その上で断言いたします。あれは初恋ですね。初々しく戸惑う殿下を見て、十年ぶりに"可愛らしい"と思いました』
いやいや、初恋なのは殿下じゃなくて私の方……
というか、本当に日刊新聞『フレジェス・クェア』これで良いの?
「ふふふ、明日は私達のインタビューが載りますよ。更に明後日は王城の前料理長と宝石商です」
こ、これのメルナとコレッタ版!
「あ、明日も明後日もこのノリなの!?」
「はい! 明日からは更に加速していきますよ事実をベースに色々と脚色してます!」
「脚色って、まず何これ??」
「新聞を使った反撃ですよ。手籠疑惑を甘々ラブストーリーで塗り替えます。こっちの方が面白いから民衆も引っ張られます」
自身満々に語るコレッタさん。
えっと、いや、確かに話題性はあるかもだけど。
「当然、『ワムネイミスタ』も使いますよ。こっちはもう、あることないこと。アルバートさんがとっても楽しそうでした!」
アルバートさん、何してるの! 何したの!
「虚偽報道じゃない!」
「良いんですよ、ゴシップ紙だし」
まぁ、確かに『ワムネイミスタ』はゴシップ紙だけど。
「これ、殿下の名誉大丈夫なの!?」
「大丈夫ですよ。初恋が遅いからって王太子としての経歴に傷なんて付きませんから」
そ、そうかもだけど。
というか、何よりもまず
「私が恥ずかし過ぎるでしょ! もう図書館で恋愛小説借りられない! お前が恋愛小説って目で見られる」
「ふふっ、本ぐらい殿下が買ってくれますよ。でも、楽しいので頑張って借りてください。お供しますから。隣で『この娘が恋愛小説です』って顔で立ってます」
メルナ、ノリノリで凄く楽しそうだ。
「あと、フレジェス国民に知られていないお嬢様のことを知って貰おうと、過去のエピソードもたくさん話しましたから。心の準備だけお願いしますね」
か、過去っ! メルナなんて私の過去を大体全部知ってるじゃない! 恥ずかしいの全部!
「酷い……」
「もう手遅れなので諦めてください」
確かに始まってしまった以上は止められない。ルディーナ・ベルミカ、耐えますとも。




