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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

お願い墓穴を掘って

相変わらずネーミングセンスがありません!

 私には皆が可愛がる妹がいる。

 年が5歳離れていて妹が生まれるまでは一人っ子として一生分の幸せを使い果たしたのだと思う。

 蝶よ花よと育てていた癖に妹の誕生を機にガラリと環境が変化した。

 みんな妹の周りにばかり人が集まり褒めそやす。

 その代わりに私からは引き潮の様に人が居なくなった。

 父や母を求めて泣くも気がついてさえ貰えない。

 あちらで可愛い赤子の誕生に大いに盛り上がっていて気がつかないのだ。

 目を真っ赤に腫らして顔は涙と鼻水で汚れてそれを袖口で拭いながら声のする方へと進む。

 皆んなが妹を抱いた母を取り囲みここは誰に似ているとか言って盛り上がっていて私の呼びかけは届かない。

 その内一番後ろにいたメイドの一人が私に気が付き、さっと横抱きにして私の部屋へ戻ってベッドに無理矢理寝かせて無言で布団を被せた。

 泣いて暴れる私に布団を強く押し付けて黙らせたと思ったのか明かりを消してメイドは出て行った。

 私は一時息が出来なくて誰にも気付かれないまま昏睡状態となった。


 私は体を動かせず起き上がれないが意識だけははっきりとあった。

 ただ目を開けたり喋ったり動いたり出来ないだけで。

 だから感覚が自ずと鋭くなり目を瞑って見てはいなくとも大体のことはわかる様になっていた。

 そして記憶力が恐ろしく発達して植物状態の私に家庭教師が読み聞かせる大体の本は頭の中で暗唱できる様になっていた。

 医者の指導でいつ目を覚ましてもいい様にと家庭教師が付けられて眠り続ける私に無駄かもしれないと思いながらも両親は教育を施した。でも本当にそれだけだった。

 メイドのおしゃべりで私をこの様な姿にしたメイドはしばらく勤めた後、親の介護を理由に辞めて行ったそうだ。逃げたのだと思う。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

 メイド達はさぼりたくなると必ずここでおしゃべりする。

 だから動かずとも屋敷内のことは手に取るように分かっていた。

 ただ薄情な事に私の家族は全く顔を見せない。

 この状態になってから一度顔を見せて心配した振りをしていたがその後は全てを使用人と家庭教師、医師に丸投げして家族三人で仲良くやっているそうだ。

 これもメイドのおしゃべりで知ったことで有り、もう娘の顔さえも忘れた頃だろう。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

 そうして私は21歳になった。

 妹はもうすぐ16歳、私がこの状態なので婚約者と結婚してこの家を継ぐらしい。

 婚約者は公爵家の次男坊、婿養子となりこの家の跡取りとなるがそれは父親が引退した時となる。

 今は幸せの絶頂という時か。

 それで私は決断した、そろそろ目を覚ましてやろうと。


 それから数日後の朝、何時ものようにカーテンを開けて窓を開け風を入れるメイドが驚いた。

 21歳になったこの世のものとも思えない美しい女性がベッドで起き上がっていたのだから。

 そして美しい声で言った、おはようと。そしてあなたどなた?と聞いた。

 メイドが腰を抜かしてアワアワしているのを横目に足をそっと下ろしてみるが萎えてしまって歩けない。

 車椅子があると良いのだけれど、と言うとメイドは大変ですと部屋から出て行った。


 すぐさま医者が飛んできた。

 家族でなかった事が一番滑稽だった。

 そして随分経ってから家族と言えるのかも分からない人たちが様子を窺いにきた。

 私はわざと笑顔で首を傾げ言った。どちらさまでしょうかと。

 母と思わしき人物は父と思しき人物に寄り掛かり涙した様だが駆け寄りもしない。

 妹と思わしき人物は口をポカンと開けたまま固まっていた。

 多分妹と私は全然似ていない、平凡な見た目の彼女が初めて会った妹だろう。


 それから車椅子を手配されてお庭で花を愛でたり青空を眺めたりして過ごした。

 暫くして私が目覚めたと知った妹の婚約者が挨拶にやってきた。

 私がニッコリ微笑むと端正な顔を真っ赤にして目を逸らした。

 隣で妹がしきりに腕を引っ張っていたが耳まで赤くなった人を初めて見た。

 それからお見舞いと称して頻繁に彼は私に会いに来た。

 妹を横に座らせてはいたが私とばかり話したがった。


 そしてその内、一族の長老が親戚達を引き連れてやって来た。

 この国の法律で長子が家を継ぐ事が決まりだった。

 私の知能や判断力に欠陥がないと知るや満場一致で決まったのだ。

 今まで私があの状態だったので妹が継ぐ事になっていたが私が目を覚ましたので私が跡取りになった。

 よって妹の婚約は破棄され彼は()の婚約者となった。

 妹は泣いて暴れた。余程好きだったらしい。

 彼は甲斐甲斐しく私の元を訪れてリハビリに付き合ってくれて無事歩けるようになった。

 私も彼を好ましく思い胸のときめきを覚えるようになった。


 それからは忙しかった。

 結婚準備もあるが流石に16年間の空白を埋めるのは並大抵では無かった。

 睡眠学習では補いきれない経験が足りない事により膨大な経験と持ち合わせていた知識を結びつける作業が思いの外時間が掛かった。

 周りの皆が言った、焦る必要は無いよと。

 お言葉に甘えて本来の自分をゆっくりと取り戻す事にした。

 清算させるよ、みんな(まと)めて。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

 そしてこの原因を作った張本人は処刑されたらしい、私がハッキリその当時の事を証言したからだ。

 これが一つ目。


 そして妹が余りにも似ていなかったので私の知っている事実を一つ暴露した。

 これによって妹は修道院で修道女として一生を送る事になりメイドとその関係者は処刑された。

 あの時天使の様に可愛かった筈の妹が平凡な見た目になっていたので確信した。

 私の部屋でメイドと妹の乳母が話していたとぎれとぎれの内容を繋ぎ合わせると一つの結論になった。

 私の件で寝込んだ母が回復するまで同じ時期に出産したメイドの妹が乳母となり妹の面倒を見た。

 そしてこのどさくさを利用して取り換える事をやってのけたのだ。

 父も母さえも乳幼児は顔つきが変わると言われ信じ込んで16年間他人の子を育てていたのだ、大切に。

 本当の妹は4歳で流行り病になりあっけなく亡くなったのだと言う。

 犯人達は大事に育てていたと必死に言っていたが、医者にも見せず放置した事は私が聞いていて知っていたので証言した。そしてこれが二つ目。


 母はこの事で心を病み父と共に領地で隠居する事になった。

 家督は私が一旦継いで結婚後に夫となるものが引き継ぐこととなった。

 でも私は決めていた。この16年間で両親への愛情は尽きていた。

 寝たきりで植物状態の娘に見向きもしなかった両親。

 頼みの次女も他人だった。

 他人よりももっと遠い家族、だから私に子が出来ても会わせない。

 これが三つ目の私の復讐。


宜しければブックマーク、評価、感想、レビューお願いします。

また短編の他に100話完結ものや現在連載中のものもあります。

覗いてみてくださいね<(_ _)>

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― 新着の感想 ―
[一言]  眠り姫が幸せになれて良かったです。  でも婚約者になった偽妹のお古が相手で本当に幸せになれるのかな?だって偽妹の婚約者のくせに姉に惚れて偽妹を蔑ろにするような不実な男ですよ?  それとも男…
[良い点] 面白かったです! 主人公が幸せになれてよかったです! [気になる点] 「この世のものとは思えないほど美しい女性が〜」「美しい声で〜」と主人公が自分のことを形容し始めるのでびっくりしました …
[良い点] 読みやすいです。 復讐も簡潔でスッキリする。 [気になる点] 赤子をすり替える理由がわかりません。 見た目が可愛かったからでしょうか。 [一言] 長編が好きなので、物足りなく感じましたが…
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