三題噺第20弾「夜空」「ファミコン」「家の中の記憶」
僕が残っている“家の中の記憶”は、弟と“ファミコン”をしている記憶だ。
その日は雨が降っていて、外に出かけるのをためらうくらいの土砂降りだった。
なので、家の中でゲームでもしようってことになった。
アクションゲーム──格ゲーをしてたら、勝ちに勝ちまくって、まだ十歳の弟が泣き出してしまった。
「えーん、おにいのバカぁぁぁぁぁぁ。つよすぎるんだよぉぉぉぉぉぉぉ」
「これは格ゲーだ。強い方が勝つ。当たり前だろ」
「バカぁぁぁぁぁぁ」
「いてっ、殴ることはないだろ」
「バカバカバカ」
泣き叫ぶ弟には、何を言っても無駄のようだった。
「わかったわかった、次は負けてやるから泣き止め」
「ほんと? ほんとにほんと?」
「あー。ほんとにほんとだ」
泣き喚く弟をあやすには、この方法が一番だ。
「じゃあ、もう一回やる」
適当に流して、適当に負けておいた。
「やった、勝った! おにい弱いなぁ」
わざと負けるとこれだ。その言動には腹が立つ。
「あーつよい、つよい。もうゲームは終わりにするか」
「もう一回勝たせて」
弟はまだゲームをやりたいようだった。
「しょうがないな、もう一回だけだぞ」
「わーい」
また適当に負けておいた。
「勝った勝った」
「じゃあ終わりな」
「うん、満足満足」
懐かしい記憶。“夜空”を見上げて、弟がいまどうしているかはわからないけど大丈夫かと思い、再び戦場へともどる。
そう、今は戦場カメラマンなのだから。真実をとるために銃弾を受けても戦わなければいけないのだ。
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