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01 邂逅

  エレベーターから暗闇に落ちつづけ約5分程経過していた。最初こそ魁梛は死を覚悟していたが、未だに底につかない。


  「いつまで落ち続けるわけ?」


  8階から1階に落ちたのなら既にぺちゃんこになっているはず、なのだが魁梛はふと思った。


  「あ、これ死ぬ前に起こるスローモーションかな?」


  以前魁梛は、脳を100%使用できたら色々と便利だなと考えて脳について調べようとしたが、そもそも深く考えるのが億劫になってすぐ断念した。

  そのときに少しだけ覚えたのが"タキサイキア現象"についてだった。


  「確か脳が危険を感じ取り、命を守ることを最優先にすることでなんやかんや遅く見えるんだっけ?」


  そんなことを考えていたとき暗闇からいきなり辺り一面に広がる木々、ジャングルを彷彿とさせる景色に変わっていた。

  その先には富士山に似た山が3つ程連なっていた。

 

  「お、綺麗だな、あ、ぁぁぁぁぁぁ!!!」


 絶景と思われるその景色だったが、一言だけ言って自分が置かれてる現状について、悲観し景色を見る余裕がなくなった。


  「これ死ぬな」


  魁梛は未だに自分が落下しているのを 失念していた。

  故に魁梛は死を覚悟し瞼を閉じた。


  「父さん、母さん先立つ不幸をお許し下さい…」




 

 

  ━しかし、一向に痛みがやってこない。

  おもむろに、目を開けるとそこには数㎝までに近づいていた地面だったが、魁梛はそんなことよりも驚いていた。


  「う、浮いてる!!」


  感覚的には仰向けで寝ているのだが、魁梛は体を震わせ感動せずにはいられなかった。


  「つ、遂に俺は空を飛べるように…なっ」


  しかし、その感動はシャボン玉のように儚く消えた。


  「イテッ…」


  浮遊感があった体は消え去り、尻餅をつきながら魁梛は先程の感覚に浸っていた。


  「フワフワした感じだったなぁ…もう一度浮かねぇかな…」


  そんなことを言いながらも、ここが何処なのか、何故こんな摩訶不思議なことが起きたのかを考えていた。


  「とりあえず移動するか」


  考えても分からないので、立ち上がり歩き出すことにした魁梛。

 

  「にしても、久しぶりに外に出て歩いてるなぁ」


  約1ヶ月ぶりに外に出て、開放的な場所にいたため全く警戒心もなくのんびりと歩いていた。


  「もし、異世界に来たのなら今までのことも納得できるけど流石にないだろ…もしや明晰夢!?」


  など、いつもなら独り言は口に出さず内心で言っていたことを、声に出してしまっていたことがいけなかった。


  「ん?何の音?それに地震?」


  ドーン、ドーンとなにかが一定のリズムで弾むように、こちらに徐々に音と揺れが大きくなっていく。

 

 

  そして現れたのが、軽トラ並みの巨大なカエルがやって来た、そして魁梛はその姿が見えた瞬間、声を出すよりも先に全力で駆け出した。


  「いぃぃやゃゃやああぁ!!!!」


  駆け出して発狂しながら履いていたクロックスを捨て、裸足のまま自身が出せる最高速でこの場から逃げ去ろうとしていた。

  何故なら魁梛は、カエルが超が付くほどに生理的に気持ち悪いと思っているからだ。

  カエルの生々しさや見た目が幼い頃から全てが嫌いであって、夏場の公園などに現れようものなら友達といようが彼女といようが一目散にその場から逃げ去る覚悟を魁梛は持っている。

 

  そして今は、それが巨大なカエルであれば非現実的なことでも逃げ出す。

 

  ━そして、最初に戻る━


  「ぅうおおおおおォォォオオオオオ!!!」


  約1ヶ月ぶりに外に出たにも関わらず、最高速を維持したままカエルから逃げていた。


  「誰か!助けてくれれぇぇぇ!!!」


  大声を出すのも久しぶりだったが、思いの外声が響いた。

  しかしこれが()()なものを引き寄せていた…


 

 

  「………なんでカエルが増えてんだよ!!!」


 

  大声を出した結果、巨大カエルを引き寄せる原因になってしまった。


  「ハァ…もう…無理…ハァこれ以上…走れない」


  いくら、生理的に駄目なものでも体力がなくなれば抵抗しようにも抗えない。


  「ハァ…異世界?…に来て早々…ハァ…死ぬとか難易度ハードすぎ…」


  その場に倒れ込んだ魁梛は、今度こそ死ぬんだなと思い瞼を閉じた。


  近づいてくる幾つものカエル達、どんな殺され方をされるんだろうと考えていたそのとき、艶のある透き通る女性の声が響いた。


  「放て!!」


  その声が聞こえた途端、カエル達に向かって矢の雨が降り注いだ。

  カエル達は無慈悲にも放たれた矢によって、死んでいた。


  「あの、お怪我はありませんかしら?」

 

  「え、あの、はい…助けてくれてありがとうございます」

 

  「いえ、怪我がなくてよかったです」


  声をかけてきたのは、先程命令を出した声と同じものだった。

  魁梛は、声をかけてきた女性を見て息を呑んだ。


  小さな顔にゴールデンベリルの金色のようなつぶらな瞳、高い鼻に満開の桜のように綺麗な桜色の唇と同じ色の髪が後ろで纏められたことによって何処かのお姫様に見えるが、白を基調とした鎧を着ている。

  そして、身体は出るとこは出ており白を基調とした鎧よりも純白な肌。



  今まで、見てきた女優やアイドル、可愛くて綺麗な女性は今、魁梛の目の前に立っている女性と比べると天と地ほどの差以上なまでに劣っている。

  だから、魁梛は思わず本心が口から出てしまった。


  「美しい……」

 

  「ふぇっ!?」

 

  「はい?」


  思わず本心が口から出てしまっているのを気付いていない魁梛は、目の前の女性がいきなり変な声をあげたようになっていた。


  「い、いえ失礼致しました。私はアベコ王国第一王女リーズナ・テンド・エピザーロでございます。貴方のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

  「俺は…」


  (えっと、どうしようか…谷口ってあんまり好きじゃないんだよなぁ…そうだ!名前の由来から貰おう!)

 

  「カイナです…カイナ・サキガケです。」

 

  「カイナ様ですね、貴方の声のお陰で見つける事ができました。」

 

  「様なんて…カイナでいいですよ、本当に助けて下さりありがとうございます」

 

  「ではカイナさんで、よければ森を抜けるまでご一緒しませんか?」

 

  「え、いやご迷惑じゃ…」

 

  「そんな…私と一緒じゃあ嫌なのですか?」


  リーズナは上目遣いで涙目になりながら魁梛に迫った。

 

  「嫌じゃないですよ…そんなことないですよ」

 

  「なら!ご一緒しましょう!」


  リーズナは魁梛の腕を自分の腕に組ませてきた。


  「え、ちょっ、リーズナさん」

 

  「どうしましたか?カイナさん?」

 

  「いや、なんでもないです…」

 

  「?フフッでは、いきましょう!」

 

  このとき、魁梛は思っていなかった大声を出して()()なものを引き寄せてしまっていた存在を…

 

  そして、その存在は魁梛が関わってはいけない存在であったことも…


 


 



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