計画90
「なるほど。お話は分かりました。」
陽光が穏やかに差し込む中庭で、ネフェルはマクスたちと会合をしていた。
「ぜひ、お力添えをさせてください。」
「ありがとうネフェル君。」
マクスはネフェルに軽く頭を下げる。
幼い少女に対しても礼節を重んじること、そのことがマクスの信頼を大きくしている。
「早速で悪いのだが、リッチモンドについて何か知らないかな?」
「リッチモンド・・・。」
暗い顔になる。
その表情を読み取り、瞬時に会話を切ろうとする。
「いやわからないのならいいんだ。我々でこの領内を探させてくれれば・・・。」
「いいえ、知っています。」
頬を叩き、表情を作る。
「ですが、私以上にお兄様の方が詳しいのでこの場にお呼びしても?」
「・・・すまないが、君のお兄さんは信用できるのかい?」
「ちょっと変わってはいますが、信用はできます。大好きな兄ですので。」
「そうか。なら、お願いしよう。」
「わかりました。ルーシュ、お願いできますか?」
「畏まりました姫様。すぐに呼んでまいります。」
ルーシュはお辞儀をすると、速足で去って行く。
「しかし、ルーティン様がザルツシュタンゲン王国内にいるなんて・・・気づきませんでした。」
唇を噛みしめる。
「仕方ないことだよネフェル君。恥ずかしい話、ルーティンは誘拐されてこの領内にいる可能性、そう可能性だからね。もしかしたらここじゃないかもしれない。」
「マカベルグ様・・・。」
「だが!リッチモンドという手掛かりがある以上、これを見過ごすことはできない。」
「そうですね。」
「お待たせしました姫様。」
ルーシュが頭を下げると、後ろから仮面をつけた細身の人物が出てくる。
「お兄様!」
「え!?」
立ち上がり、仮面の男に抱き着く。
「おうふ!きょ、今日も、て、天使だね?ネフェネフェ。デヒュヒュ。」
思わず口から出た言葉にマクスは口元を隠す。
「お兄様!お願いがあります!リッチモンドについてお教えください!」
「デヒュ!?ネフェネフェの可愛いつぼみのような口元からリッチモンド氏の名前が!?これは事件ですな!」
「ええ事件です!私の愛する人が攫われた可能性があります!」
「おうふ。あ、愛する人・・・俺氏には縁のない話。」
「私からもお願いしたい。リッチモンドについて話しをきかせてくれないか?」
マクスは冷静さを瞬時に取り戻し、対応する。
「く、くるっぽ!?何ともイケメンなメェンですな!ま、まさかこの方!?」
「ええお兄様。この方はマクス・リア・マカベルグ様。ルーティン様のお父上ですわ。」
「おほ~。ネフェネフェの愛する人のお父様でいらっしゃいますか。お初に目にかかりまする。俺氏はネフェネフェの恥ずかしながら愚兄、カエンと言う候。以後、末永く宜しくお願いしたい所存。」
胸の前で腕を交差させた状態でしゃがみ込む。
「えっと・・・?」
「お兄様流のご挨拶だそうです。」
「う、うん?そうかい?」
「して、リッチモンド氏のどのようなプレイ内容をご所望で?」
「ぷ、ぷれいないよう?」
言葉が理解できず、マクスは言葉が喉から出てこない。
「お兄様。マカベルグ様に対し、そのようなお言葉遣いは・・・その。」
「ふぅむ。俺氏はこれが至高であり普通である故に、一般的理解力のある言葉でとなると、真話せぬ故、許して頂けると有難いのだが?」
「大丈夫です!お兄様はお話が得意ですから!・・・ルーシュ。」
笑顔で仮面を指さす。
「ハッ!」
気配を消して、後ろに回り込む。
「失礼いたしますカエン様。ご無礼をお許しください。」
手慣れた手つきで仮面を即座に剥ぎ取る。
「な、なにを?」
「お話しは理解致しましたマクス殿。」
仮面を剥ぎ取った下にはマクスに負けない甘いマスクの男が柔らかな表情で話し出す。
「リッチモンド殿について、こちらで調べた情報は全て開示します。ですが、申し訳ない。我々が長年探し続けてもリッチモンドを捕えるどころか、アジトすら発見できない体たらくです。お恥ずかしい。」
丁寧に頭を下げられる。
先程までと同じ人間か!?っと突っ込みたい気持ちをマクスは必死に抑え込む。
「で、ではその情報を事細かに教えて頂けるかな?」
「もちろんです。すぐに手配しましょう。」
カエンが手を叩くと、どこからともなくメイドたちが資料を運び出す。
その隙にマクスはネフェルに説明を求める。
「お兄様は仮面着用時とそうでない時で性格が変わるんです。何でかは知りませんが、どちらも優しい大好きな兄に代わりありませんので。」
マクスの脳裏に多重人格が浮かぶが、協力してもらう手前、気にしないことにする。
「それではマクス殿。資料をお読み頂けますか?」
「拝見させてもらおう。」
何はともあれルーティンを探す手掛かり、リッチモンドについての情報を手に入れることができたのであった。




