計画80
「それで?あたしが来てやったっていうのにマクスの野郎は何で顔を見せないんだい?リリスちゃんは?」
「申し訳ございませんルルシュ様。リリス様はご気分が優れず、床に伏せております。」
「なに?大丈夫なのかい?」
「・・・どう、お答えしていいかわかりません。」
カシスは頭を下げて謝罪を示す。
「マクスの野郎は?」
「旦那様は・・・その、何と申し上げてよいのか・・・。」
「歯切れが悪いねぇ。何か隠しごとかいセバス?」
「それは・・・。」
「まぁ、マクスの野郎なんてどうでもいい。ルールー・・・ルーティンはどこだい?早く顔が見たいんだよ。」
カシスもセバスも答えずに立ち尽くす。
セバスは口を開くが、声は出ない。
「何で黙ってるんだい?言えないことなんて・・・。」
「ご主人様。」
「何だい?」
「申し訳ありませんが、この館に子供の気配はほとんどありません。」
見抜かれたことにセバスとカシスは目を丸くする。
「・・・どういう意味だい?」
「何と申し上げればよいのか・・・この館の気配を感じ、息遣いを聞き、平均を取ったところ、子供と思われるのはこの館では2人でしょうか?」
「なら合ってるだろ?ルーティンにマリネ当たりじゃないのかい?」
「いえ、マリネ様はそうなのでしょうが、ルーティン様はこの館にいないと思われます。」
「何言ってんだい?そんなことあるわけ・・・。」
「もう1人の子供と思われるものは、獣人の子供だと判断いたします。」
「獣人?それじゃあルーティンはこの館にいないのかい?ならどこに・・・。」
チラッとセバスの顔色を見ると、青ざめているのが目に入る。
その瞬間、嫌な予感が脳裏を走り、体が動き出す。
「マクスの糞野郎はどこだい!!」
乱暴に扉を開け、マクスのいそうな場所を手あたり次第に開けていく。
ルルシュの行動に唖然として出遅れたセバスが慌てて後を追う。
「お待ちくださいルルシュ様!」
「どこだーい!!」
乱暴に開けた書斎にマクスはいた。
「マクス!?」
見たことのないマクスの姿に一歩後ろに下がってしまう。
「申し訳ありませんルルシュ様。黙っていようとは考えていませんでしたが、あまりにも、あまりにも!残酷な姿で!」
セバスは目元を抑える。
「いったい何があったんだい!?何かの病気かい!?だったら症状を言いな!あたしの知識をもってすれば・・・。」
「ルーティン様がいなくなってしまったのです!」
時が止まる。
時が止まっている中、ルルシュのメイドがゆっくりと歩いてくる。
「ご主人様。乱暴に扱ってはいけません。物に罪はないのですから・・・?」
反応が無いことに、首を傾げ、近づいて見る。
「ご主人様?」
目の前で手を振ってみるが、反応が無い。
「・・・?失礼します。」
左手を取り、脈を測る。
「・・・ッ!死んでいる!?」
「なッ!?」
止まっていたのは時ではなく、ルルシュの命であった。
「はぁはぁはぁ。」
あまりにも衝撃で絶望的な言葉に意識をすっ飛ばして命を失いかけたルルシュはカシスが持ってきたお茶を飲み、心を落ち着かせる。
「と、年寄りにはいささか過激な発言だよ!セバス!」
「申し訳ありませんルルシュ様。ですが、事実です。ルーティン様はいなくなってしまったのです。従者のミリアと共に。」
「ミリアちゃんもかい!?何でだい!?」
「お話しすると、長くなります。」
「いいから話しな!」
「何から話せばよいのか、最初は・・・。」
セバスは包み隠さずに話す。
その間、ルルシュは口を挟まずに、一言一句聞き逃さない気持ちで話を聞く。
「・・・つまり、誘拐された可能性もあるっていうことかい?」
「はい・・・我々はそう考えております。聡明なルーティン様が何十日も連絡なしで帰ってこないということはありえないと思っております。それにレラのこともありますから・・・。」
「なら何でマクスの野郎はこんなところで腑抜けてるんだい!」
立ち上がり、マクスの胸ぐらを掴み上げる。
「ルルシュ様!?」
「マクス、テメェいい加減にするんだよ!いつまでそうやって腑抜けてるつもりだい!!」
「・・・?」
「テメェがこうしている間にもルーティンは怖い思いをしているんだよ!お前がそんなんでどうするんだい!!」
マクスの脳裏にルーティンが怖がって震えている姿が映る。
「る、るぅてぃぃん・・・す、ずまない・・・こんな・・・ごんなパパで・・・。」
涙を流し、許しを請うように祈る。
「泣いている暇なんてないだろう!さっさと立ち直ってルーティンの捜索に全力だしな!」
「す、ずまない・・・ずまない・・・。」
泣くだけでマクスに気力はない。
見限るように突き飛ばし、持ってきてもらったお茶を頭からかける。
「ルルシュ様!?お止めください!?」
「マクス!その能無しの頭で想像してみな!今頃、ルーティンがどんな思いでいるか。」
頭の中に泣いているルーティンが現れる。
「マクス!ルーティンはお前に助けを求めていないかい?違うのかい?」
(助けて・・・パパァ!!)
「・・・ルーティン・・・。」
(パパ!)
「・・・ルーティン。」
(えへへ。)
「ルーティン。」
(お帰りなさいパパ!)
「ルーティン!」
(パパ、僕パパのお仕事のお手伝いできるように頑張るね!)
「ルゥゥゥゥゥゥティィィィィィンンンンン!!!!!」
マクスはオーラを纏い、立ちあがる。
その瞳に曇りはなく、生き生きとし、揺るぎない意志の力を感じる。
「旦那様ッ!」
「すまなかったセバス。どうやら腑抜けて動けなくなっていた。・・・ここからは本気を出す!」
「ッ!?ハッ!!」
セバスは即座に膝をついて頭を下げた。




