計画65
森の中を少数精鋭で歩くこと数分。
そろそろ煙が上がっていたところが見えてくるはずである。
「よし、お前ら!抜刀できるように身構えておけよ!」
「ハッ!」
「了解いたしました。」
「ウッス!」
皆、剣に手を伸ばす。
他の4人と同じようにヴェルグも剣に手を置く。
「行くぞ。」
ゆっくりと窺うように近づいて行くと、そこには言葉にしがたい光景があった。
「・・・酷いなこりゃ。」
火はほとんど消え、微かに煙を上げている。
その近くには焦げて何だったかわからないものが転がっている。
辛うじて人間の形から元々は人間なのだろうと予測する。
そんな死体がこの場に4つある。
位置的なことから3対1だったのだろう。
1つの死体の欠損がかなり酷いことが分かる。
「隊長!」
「どした!」
「これを見てください。」
「こりゃあ・・・。」
地面には綺麗な2本の線ができており、2本の線は森の奥の方へと続いている。
「馬車の跡ですね。おそらくここに馬車が止まっていたのでしょう。そして、それが森の中に消えて行っていることから察するに。」
「生き残りがいやがるな。」
「はい、そう判断できます。」
「どうしますか隊長?」
「どうするってそりゃおめえ・・・。」
苦虫を嚙み潰したよう顔で唸り声をあげて悩む彼、名をジスル・ヘンリー。
マカベルグ家に仕える騎士団の4人の副長の1人である。
専属騎士を除けば、騎士団で上から2番目の位である。
(どうするって俺に聞くなよなぁ。俺は頭を使うのが苦手なんだぞ?そんな俺が楽するために常にアレンに同行させてんだかんよぉ。)
頭を掻き、ため息を吐く。
「判断に困るなぁこりゃ。アレンはどう思うんだ?」
「そうですね・・・。」
アレン・ヘンリーは名前からもわかるようにジスルの弟である。
ジスルとは違い、スクール出身であり、頭も良い。
ジスルの頭脳としてマカベルグ家に仕えている。
基本的な事務仕事はアレンの担当である。
「一旦戻った方が賢明でしょう。この森のことを知りもしない状態で、待ち構えられているのは不利です。」
「だよな~普通はそうするよな~けどな~。」
「けど、何でしょうか?」
「あの娘っ子がいたということは他にも囚われている奴がいるんじゃねぇか?」
「その可能性は高いでしょうね。」
「だとしたらよぉ、俺たちは危険を顧みず、進むべきじゃねぇか?」
「そう判断なさるならそれでも良いとは思いますが、命令違反になります。旦那様よりの命令はこの周辺の探索、および危険行動の制限です。これより先に進むは危険行動に抵触します。」
「う~んそれを言われちゃ何も言えんなぁ。」
頭をもう一度掻き、立ち上がる。
「お前らはどうしたい?ゴーエン。」
「ウッス!俺はアレンの意見に賛成ッス。命令違反はセバス様の鉄拳制裁ッスから。」
「あれは嫌だよなぁ。お前は?カリンギ。」
「ハッ!自分はもう少し進むことを進言します。ここにある情報だけでは不足です。」
「まぁそれ言われりゃあそうだな。ヴェルグはどうだ?」
「はいッ!俺はジスル隊長たちの判断に任せます。元々ここに同行させてもらったのも俺の我がままですから。」
「お前の我がままというかルーティン坊ちゃんの頼みだろ?無下にはできねぇはな。なんてったってもしかしたら俺の娘と結婚してくれるかも知んねぇからな!ギャハハハハ!」
「兄さん・・・。」
アレンはため息を吐く。
「おい!アレン!プライバシー以外では隊長って呼べ!」
「それを言うならプライベートです隊長。」
「そうだっけか?まぁこまけぇこたぁいいんだよ。んじゃ、2対1だから戻るか。」
「そうすべきですよ。最初から。」
「おめぇは一々・・・まぁいい。」
背負ってきた袋を降ろし、中から人数分のスコップを取り出す。
「とりあえず埋めるぞ。このままにしてんのは気分が悪ぃ。」
「ですね。」
「ウッス!」
「ハッ!」
全員がスコップを受け取り、穴を掘り始めた。
「以上が報告になる・・・なります。」
「ふむ。ご苦労だったねジスル。」
「いえ、勿体ねぇ言葉です旦那様。」
マクスは報告と先程のレラの話を思い出す。
(人質の数は4人。いずれもレラと同じぐらいの娘。レラの記憶が正しければ、人間側は6人で運んでいた。報告と照らし合わせて、亡くなっていた1人の亡骸はレラの父親だろう。そして3人の死亡から人間が残り3人で、人質は変わらず4人か。)
「君たちの報告では馬車の跡は森の方へ続いていたんだよな?」
「へい!そうです。いかがしましょうか?俺たちが引き続き探索をしましょうか?」
「いや、君らの、特にジスルの実力は疑わないが、君も妻子持ちだろ?危険はなるべく避けるべきだな。」
「心遣いに感謝を。」
「気にするな。う~む。」
少し考え、判断を口にする。
「娘たちには申し訳ないが、一旦クニシダに出向き、そこで編成隊を設け、それから不届き者を成敗しよう。」
「ハッ!」
騎士たち全員が力強い返事をする。
「イヤアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!?!?」
突然の悲鳴に全員に緊張が走った。




