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計画3

あれからしばらく頬ずりされた後、また蹄の音が聞こえる。

今度は馬車の音と共に聞こえる。

この音はおそらく・・・。

「あら、マリちゃんが帰ってきたわ。」

母上が窓から外を見て言う。

窓の外を見ると、メイドが馬車の扉を開けている。

そこから水色の制服姿の少女が降りてくる。

父親譲りの茶色の髪が風になびいている。

少女はこちらに気づいて手を振ってくる。

母上と一緒に手を振り返す。

マリちゃんこと、マリネ・リア・マカベルグ12歳。

この家の長女にして俺の姉である。

母親譲りの優雅な立ち居振る舞いと優しい顔つきの碧眼美人さんである。

すごいのは12歳にして父親の手伝いをし、この領地の問題を解決するのに一役買っていることだ。

その頭脳は国宝、とまで領民に言われるほどの秀才である。

本人はそれを鼻にかけないのがまたすごい。

素晴らしい姉である。

コツコツコツ。

足音が近づいてくる。

「ただいま戻りましたお父様、お母様。」

優雅にお辞儀する。

「うむ。おかえりマリネ。」

「お帰りなさいマリちゃん。」

2人も笑顔でもてなす。

クルっと俺に向き直る。

「ルーーー!」

パアッと周りに花が咲き、勢い良く抱きしめられる。

「おかえりなさい姉上。」

「む!違うでしょうルー。“お姉ちゃん”もしくは“マリ姉”でしょ?おすすめはお姉ちゃんの方です!」

「は~いお姉ちゃん!」

「あ~天使だわ。」

ギュッと抱きしめられ、頬ずりされる。

母上も父上も力強く頷いている。

僕はしばらく頬ずりされていました。

というか、この家族頬ずりしすぎじゃない?

頬が無くなりそう。


頬ずりを堪能した姉上は今度は僕を膝の上に置きながらお茶を呑む。

「そういえばちちう・・・。」

父上が死にそうな顔になる。

「パパ。」

復活する。

「本は買ってきてもらえましたか?」

「うむ。セバス。」

「ハッ。」

セバスが父上に本を渡す。

「ほらルー。お前が頼んでいた本だぞ。」

「ありがとうございます!」

僕の目が輝く。

「しかし、このような本でいいのか?正直、もっと違う・・・。」

「お父様、ルーは頭のいい子に育つのです。その為に欲しいものは何でも与えると、この前の家族会議で決めましたよね?」

「う、うむ。でもな・・・。」

「あなた。」

涼しい風がとある場所から吹く。

「は、はい。」

「子供たちの望みは全て叶えるのでしょう?特にルーのは。そんなルーの望みに文句を言うというのであるならば、例えあなたと言えど・・・ね?」

「はい!そうでしたねリリスさん。」

母上パネェ。

苦笑いしつつ視線を本に戻す。

“法学全書”、この本はこの世界のありとあらゆる法律が網羅されている。

この家にもあるにはあるが普段は姉上が使っているため、自分用が欲しいと頼んだら家族会議が行われ、何かが家族内で決定し、現在に至るのである。

「坊ちゃま、今度は法律にご興味があるのですか?」

「うん!お姉ちゃんとパパのお仕事をしている姿がカッコよかったの!」

適当な理由を言っておく。

「ルー・・・!」

姉上が感激のあまり涙を流していらっしゃる。

「セバス。」

「ハッ!」

「宴の準備をしなさい。」

「ハッ!」

「今日は記念日だ・・・。」

父上の表情は神様にでもあったような表情である。

何かマズったかもしれない。

「ル~。ママもかっこいいわよね?」

期待の眼差し。

どうする僕!?

えっと、えっと・・・。

脳をフル回転したのち、ニパッと笑う。

「はい!お菓子作ってる姿はかっこよかったです!」

この間、わずか2秒。

5歳直前の子供にしたら頑張ったんじゃない?

「ルー!」

思いっきりほっぺにキスされる。

「待ってなさいルー!」

ガバッと立ち上がる。

「セバス。厨房を少し開けなさい、ケーキを焼きます。」

「ハッ!」

セバスが走り回ってる。

母上も気合十分で手を振って、厨房に向かう。

姉上も嬉しそうだ。

だって頬が緩んでるもん。

相当ケーキが好きなんだね、うん。

「ミリア。この本、机の上に置いといて。」

「よろしいのですか?楽しみにしてましたよね?」

「うん!でも今日はお姉ちゃんといる!」

姉上の顔が輝く。

「ルー!」

ガバッと抱き着かれる。

「今日は一緒にお風呂入りましょう!ええ!それがいいわ!」

それはマズい。

やりすぎたな僕。

確かに今の姿なら子供だから何の問題もないけど、精神年齢的にはアウトです。

まぁ、ロリコンじゃないし、女の子好きだけどそれ以上に好きなものもあるから問題ないけど、でもね、でもね、やっぱり駄目だと思う、うん。

姉上には悪いけどここは・・・。

「ううん。ごめんなさいお姉ちゃん。今日はパパと入る。」

この言葉を聞いた瞬間、父上が召された。

うん、戻ってきてよね?

「そう。」

おや?

あまり悲しそうじゃないな?

「じゃあ一緒に寝ましょうね!決まりよ!ミリア!準備しといてくださいね!」

「お任せくださいお嬢様!」

ミリアは自信満々で請け負う。

あーそういうこと言う。

ほんとこのお嬢さんはしょうがないな~。

いや~しょうがないな断る理由がもうねぇわ。

まぁ寝るぐらいはいいか。

「は~いお姉ちゃん!」

「えへへ。」

美人の女の子の嬉しそうな笑顔はこの世の宝ですよね父上?

だって感激のあまり涙が止まっていませんよ?

ほんと子煩悩な両親でありがたいぜ!

その日の夕ご飯はご馳走でした。

特にマグロの煮つけと母上特製のケーキはとても美味でした。

え?

誰か忘れていないかって?

それはしょうがない。

だって、帰ってきてないもん。



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