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計画0

優しい朝の光が差し込む。

ガチャッ。

窓が開き、心地よい風が頬を撫でる。

「おはようございます坊ちゃま。」

目を開けると、優しい笑みを浮かべたメイドが立っている。

「おはよう。」

僕は転生した。


七宮茂(ななみやしげる)25歳。

地方のカフェ、ザ・レーナの店長。

きっちりしたスーツ姿でコーヒーを呑む。

年の割にはとても落ち着いているので年上に見られがちだが、気にしない。

いつものように新しいメニューを考えている時にふと、名案が思い付く。

「卵が必要だな。」

財布を持ち、近くのスーパーに向かう。

僕はいつもの道を考え事をしながら歩く。

この時は妄想をしていた。

なんてことはない王道の妄想。

歩いていると、パンを加えた超絶美少・・・。

ドガシャアーン!

大きな音がしたと思ったら、僕の意識は闇に飲まれた。


結論を言おう。

僕は死にました。

それもトラックに突っ込まれて。

なぜ死んだのかだって?

ありきたりな理由だ。

居眠り運転していたんだよあの運ちゃん。

まったく人が楽しい妄想をしていたというのに。

はぁ~嫁が欲しかったな~。

キラン!

なんだ?

何か光ったような?

「こんにちわ。」

え?

光った方から誰かが歩いてくる。

歩いた道が光り輝く。

「私は天界の女神アーネム。貴方の魂をお迎えに上がりました。」

アーネムと名乗った巨乳のお姉さんは綺麗なエメラルドグリーンのドレスの裾を持ってお辞儀をする。

その際、綺麗な緑色の髪が揺れる。

「えっと?あれ?」

僕はいつの間にか話せるようになっていることに気づく。

「うふふ。私の方で貴方とお話ができるようにしました。」

アーネムは微笑む。

「ありがとうございます。えっと僕は・・・。」

「七宮茂様ですね。この度は不慮な事故により命の幕を閉じたこと、心より痛ましく思います。」

「いや~。ていうか、僕の名前?」

「はい。存じております。もちろん貴方のこれまでの善行も。」

「はぁ~。僕はたいしたことはしてないと思いますが?」

「うふふ。ご謙遜を。」

「いや~本当なんですけどね。」

「貴方の善行は全て見させていただきました。とても素晴らしい人物でございます。」

「な、なんか照れるな~。」

僕は照れ隠しに頬を掻く。

「そこで、貴方にご提案があります。」

「提案?」

「はい。」

アーネムはゆったりと頷く。

「貴方のような素晴らしい人物をこのまま眠らせてしまうのはとてもおしいと私は思うのです。」

「は、はぁ~。」

「そこで提案です。私が管理している世界に転生しませんか?」

「転生!?」

「はい。あ!もちろんあなたの望むようにしますよ?」

「転生ってあの新しい人生を今の記憶を持ったまま過ごすあの?」

「うふふ。そうでございます。」

「マジ?」

「はい。」

「・・・。」

少しだけ迷う。

正直、もう少し知りたいな。

「えっと管理している世界ってどんなのですか?」

「お見せしましょう。」

フワッとアーネムが手を動かすと地球に似ている球体が出てくる。

「ここはカタントリア。あなたが住んでいた地球と同じ気候を持つ星です。地球と同じように四季もありますし、食べ物も地球に似ております。もちろん動物もです。でも異世界の定番のような魔物などはいません。亜人種は少しだけいますが問題はありません。皆が豊かに穏やかに暮らしています。」

いくつかの映像がミニターの様に映る。

「へぇ~。」

「一番の違いは文明の発達です。」

「文明の発達?」

「はい。カタントリアは文明の発達が非常に遅れた星です。誰もが豊かに穏やかに過ごしている星なので文明の発達が必要ないのでしょう。ですから今でも貴族社会が存在します。もちろん王権もです。」

「はぁ~。」

「大変言いにくいことですが、奴隷制度もあります。」

「マジで?」

「で、でもご安心を!あなたが望むなら王太子に転生することもできます。あなたの望むように転生させましょう!」

「え?いいんですか?」

「もちろんです!あなたを私が管理する星に転生させるのですから!」

「ありがとうございます。」

思わず癖で頭を下げる。

「うふふ。気に入っていただけましたか?」

「はい!」

「では、こちらの紙に願いを書いてください。」

アーネムが手をかざすと、目の前にポンっと鉛筆と紙が出てくる。

「これに書けばいいの?」

「はい。いくつでも書いてください。あ!でも注意事項があります。」

「何ですか?」

「性別を変えることはできませんので、その、お、女の子にはちょっと・・・。」

「あ、ご心配なく女の子になりたいとは思っていませんから。」

ほっと胸を撫でおろす。

「それは良かったです。では、お書きください。」

「はい!」

良かった女になれないだけなら全然OKだ。

僕は生まれ変わっても男が良いし、何より・・・。

僕はニヤニヤしながら紙に希望を書いていく。

「よし、こんなもんかな?」

もう一度内容を確認するが、間違いはない。

「できましたか?」

「はい!お願いします。」

「どれどれ~ふむふむ。これなら問題ありません。」

「良かった。」

「それでは転生させますね。」

「お願いします。」

僕の体が優しい光に包まれる。

僕は生まれ変わるんだな。

楽しみだ!

「それでは良い人生を。」

僕の意識は白い世界に飲まれた。


こうして僕は希望通り田舎の領主の息子として転生した。

転生した僕の名前は“ルーティン・リア・マカベルグ”。

カッコいい父親と優しい母親。

頼りになる兄や秀才の姉を持つ素晴らしい家族だ。

僕の新しい人生が始まるんだ。

あっちの世界では叶わなかったあの夢を実現するんだ!

待っていてね麗しの君。


「う~んこの条件の最後の“嫁は可愛い男の娘”って何でしょうか?謎ね~。」

アーネムは何度も七宮が提示した条件を見返す。

「他の条件はわかるんだけど、これだけわかんないわ~。」

ジッと紙を見つめる。

「あ!分かったわ!“嫁は可愛い男の娘”って簡単にまとめたのね!本当は“嫁は可愛い男のようなショートヘアーの女の子”ってことね!それならできるわ!」

こうしてアーネムの勘違いがこの計画を立てさせることを僕はまだ知らない。



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