第4話「赤いビキニで初対面」
モクモ都市は戦士育成のために、町以外では魔物が出るようになっているらしい。ただし、決まった道順を通れば回避できる。システムからログアウトすればモンスターに会うことはないそうだ。この都市全体がシステムで管理されているらしい。
「このモクモ都市が現実であり、大きなゲームフィールドと思ってくれればいいよ」
「なんでそんなことしてる? 戦士を育成してどうするんだ?」
カルミがどこに向かっているかわからないが、草原地帯を進んでいる中、前を歩く銀髪女性に尋ねた。
「モクモに住んでいるのは、だいたいが女神族に仕えているか、その関係者だ。女神と敵対しているのは悪魔族通称、クマアファミリア。正義があれば悪がある。人間だってそうだ。善意と悪意は必ず存在する。今、悪魔族は静かなもんだけどな。いつ何が起こるかわからないから、やるべきことをやっているのさ」
俺は視界に入ったモンスターを剣で倒しながら、カルミについていく。
「今の僕の仕事は、綺麗な魂をクマアファミリアに汚される前に、エンジェルルードに連れて行くのが仕事だ。エンジェルルードっていうのは、この都市よりさらに上にある。まっ、今の坊やにはあんまり関係がない。……この草原を抜けると、大きな家がある。手っ取り早く、坊やにはレベルをあげてもらうからな」
「剣をカルミが教えてくれるんじゃないのか?」
「あいにく、ソードを僕は装備できない。うってつけの奴に頼むよ」
基本レベルが五に上がったころ、カルミの言う大きな家に到着。
広い庭があり、プールも併設されていて、なにやら男たちが鉄格子を挟んで、家の周りを取り囲んで中を覗き込んでいる。
「またか……」
カルミはあきれて顔を覆った。
「暇人どもめ……坊や、ちょっと待っててくれ……迷惑行為はやめろ。ていうか邪魔だ。強制的にフリーズさせて転送してやるぞ」
「カルミさんだ。おい、ちれ」
男たちは逃げるように場を去っていく。二、三十人いたな。
「まったく、呆れた奴らだ。この家にはあいつらじゃ入れないのにな。さてと……」
カルミは少ないフレンドリストから、シェルマと記された名前を押し、メッセージボタンを押す。
『急用だ。鍵を開けてくれ』
『なに?』
『頼みがある』
『えっ~、めんどくさいなあ。カルミの頼みはろくなことじゃないのよね……今行くわ』
数分が経過した後、赤のビキニ水着を着用し、栗毛色のセミロングの髪をバスタオルで拭きながら、物凄い美少女が俺たちの前にやってきた。
小顔に猫みたいな鋭い瞳、小さな鼻と薄桃色のマウスがバランスよく配置されている。テレビに出ればさぞ人気が出るだろうな。プロポーションも抜群だった。
彼女の姿を見た瞬間に、一気に俺の鼓動が増す。なんなんだ、この子……
もし世界中の美少女を集めコンテストを開催したとして、この子はSSSランク。少なくとも見た目だけで俺はその評価をつけるだろう。
「シェルマ、お前またプールに入ったな。群がるからやめろと注意しただろ!」
「関係ないし。みんな断ったし、あたしの行動力をこれ以上狭めてほしくないし……なに、用ってお説教?」
「違う。中へ入れろ」
「……見ない顔ね。誰、その子?」
シェルマと言う美人は俺を綺麗な瞳に捉えた。ますますドキドキする。
「それを説明する」
「ふ~ん。まあいいわ。カルミの連れなら悪人じゃないでしょ。庭のベンチで着替えながら聞く」
シェルマはタップして鍵を開け、俺たちを招き入れる。
前を歩くシェルマに視線を向けると、基本レベルが表示され、俺はそれを見て唖然とした。
「君、絶対こっちみないでよ! 後ろ向きで居なさい」
「わかってるよ」
俺の我慢強さが果たして耐えられるかどうか……鼓動は増すばかりだ。
「で、カルミ。その子が下界から来て、ソードを装備したのはわかったけど、どうしてここに来たの?」
水着を脱ぐ音が生々しく耳に届いてくる。振り向くかな……
「決まってるじゃないか。お前はこの都市で最強の剣士だ。だから、坊やに剣技を教えてやってくれ」
「……なんであたしが? そんなの専門家がいるでしょ」
「お前が一番適任だと僕が判断した」
「まだシステムも上手く扱えない初心者君でしょ。せめてソードレベル上げてから来てよ」
「そんな時間的余裕はないんだ。色々貸しがあるだろ」
「貸しなら、こっちもあるけど」
「とにかく坊やを一週間預けるからな。僕はもう決めたんだ。覆すつもりはない」
「預けるってこの子、認証受けたばかりなら、メイン登録は早くても明日……泊めてくれるところないでしょ。どうするのよ?」
「そんなのこんな広い家があるんだ。ベッドの一つを貸してやれ」
「はあ! いやよ。よく知らない子を泊めるなんて……あたしを知ってるでしょ」
「坊やのことは僕が保証する。僕は他にもやることがあるからな。ときどき様子は見に来るよ」
「……ほんとに保証できるの? なんか着替えをチラ見してるんですけど……」
俺は指摘され、慌てて回した首を元に戻した。
形のいいおっぱいが見れただけでもよしとしよう。
「結構スケベなんだよな。可愛いもんだ。やり方はシェルマに任せるから……坊や、ちょっと耳を貸せ」
俺はカルミに近づく。
「一週間でシェルマを超えろ! それが条件だ」
カルミはそれだけ言って離れ、
「じゃあな二人とも、喧嘩するなよ」
軽く俺たちに手を振り、姿を消した。
「俺、上根理久。よろしく」
「あっそう。まだこっち見ないでよ」
待たされること数分、
「いいわよ。着替え終わったわ」
「……」
目の前には赤い軽量ドレス姿の栗色髪の美少女がいた。