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プロローグのプロローグ「シェルマ、コンプリート」

数回、ヒロインであるシェルマの視点で書きます。

 地下30階。

 3回目の挑戦。今日こそは……


 真っ赤な戦闘ドレスに身を包んだシェルマは左の腰に刺さった細剣ラブイアを抜く。


 ペア戦闘でもいままでこの階まで到着した挑戦者はいない。ましてやシャルマはシングルでの攻略だ。

 黒衣の服をまとったシャドウの長剣を紙一重の所でかわすと、見事な栗毛がなびく。女の子が羨ましがる顔のパーツと、体型。同性からの妬みに彼女は少しうんざりしていた。


 肩の辺りを少しかすめたが、この程度なら戦闘後すぐに修復するだろう。


「こんなところでこれ以上時間かけてられないのよ! あたしは誰よりも強くならないといけないんだから!」


 右手で剣を伸ばし、前に少し体をかがめると、勢いよく地面を蹴る。


 シルバーブレッド。シャルマが会得した技であり、オンリーワンな必殺技。


 シャドウの胸に剣先を食い込ませると、そのままの勢いで後ろ壁まで一気に運び突き刺した。

 影は消え、シャルマの目の前にクリアとコングラッチレーションの文字が記される。


「ふう……やっと30階クリア。カルミは99階まで構築したと言ってたなぁ。この先は一人じゃ無理よね……誰か強くて、好きになれる男の子いないかなぁ!」


 映像録画も音声もオフにしてあるので、何も気にする必要はない。


「言われるんじゃなくて、あたしは自分から100%の想いを伝えたいのよ! ダーリンに早く合わせて!」


 言葉にするだけで、自分の顔が真っ赤なリンゴ色に染まっているのがわかる。

 でも……口にしておかないと、一生現れないようなそんな不安に駆られている。


「カルミがここに居たら、あたしを見て後ずさりするな。キャラ崩壊もいいところだし……」


 残りの体力ゲージを見て、保てるスピード時間等を素早く計算する。


「無理ね……帰ろう」


 シングル戦闘じゃそろそろ限界かなぁ。



 空中移動都市モクモ。


 都市部の真ん中にある円形の大きな建物ドームはスーパーコンピューター。


 モクモ都市は基本的にこのハイテク機が管理、運営していて、住民はFCSファインドコントールシステムを携帯することを義務づけられて、体調管理や戦闘履歴、音楽や映像再生、ナビや危険感知までしてくれる優れものだ。


 FCS開発に携わった者は主に科学者5名。今使っているのはバージョン3。不具合などでたまに更新される。システムは慣れれば視界に呼び出すことが出来る。これは別に体に貼られ透過した小さなシール(身体的な弱体や危険はない)が関係していると言う話だが、よくわからない。


 ドームの隣には、赤青黄の建物があり、ここで酸素や水、空気を清浄している。下界に比べ酸素は少し薄く、下界の住民がモクモでは酸欠になることがあるみたいだけど、下界の人見たことがない。


 あたし、シャルマはモクモの女剣士であり、非常時の戦闘要員。


 町周辺以外では、常に障害(つまり敵)が発生するようにFCSは作られており、RPGのようにレベルも存在し、それはランク付けの要因になるし、強さの基本的な参考数字。


 ピッ、ピッ、ピッ。

 と、町を離れ自宅に戻る途中システムが反応した。距離500。こちらに向かってきている。


 あたしは指を動かして、目の前に出てきたウインドウから、近づいてきている人との接点などを調べる。


 親しい人、お友達ならこんな警告は出たりしない。警告はあたしが会いたくない人物として登録しているから発生したんだ。


 やり過ごしてもいいけど、それじゃあどうせまた来る。


「やあ」


 自宅の目の前で、男の人が声を掛けてきた。


「なにか?」


「君に一目ぼれしました。付き合ってくれないか?」


 単刀直入もいいところ。またあの目……この人じゃ絶対にない。


あたしは一瞬だけ恐怖したが、それを相手に悟らせず、


「無理」


「付き合っている人、いないんだろ。だったら……」


「それでも無理。あたしはあなたを好きにはならないから」


「……」


 男の人はじっーとこちらを見て動かない。


「それじゃあ」


 伝わったよね……早くこの場から離れたい。


「まてよ!」


 手首を強く摑まれる。


「なによ!」


「この都市で俺は最後の男だ。それを断ってお前は誰を選ぶつもりだ?」


「関係ないでしょ、そんなこと。とにかくあなたとは付き合わないし、あたしがあなたを好きになることはない。話してよ。大きな声出すわよ。それとも痛い目みる?」


「ふっ、ぜひそうしてほしいね」


 気持ち悪い人……

 鞘を下から持ち上げて、男の手首に当て離れることには成功した。


「もっと触らせてほしいね」


「変態なの?……」


 どうしよう……斬ったりしたら問題になりそうだし。会話は録音してるけど、それだけで証拠になるかな?

 じりじりと距離を詰められる。


「どいつもこいつも紳士ぶりやがって。力で言うこと聞かせりゃ済む話なのにな」


「あなた、一番サイテーだわ」


 何の恐れもなく、向かってくる男に気絶させてしまおうと考えたあたしは剣を鞘事抜き、触れそうになった時……


 男は勢いよく離れていくというか、何かに吸い込まれていく。ていうか、あたしも吸い寄せられそうになるので、両足で踏ん張るが、真っ赤な戦闘ドレスが少し翻りそうになるのを右手で抑えた。


「よお、シャルマ。こんばんはだぞ」


 右手で男を抑え、銀髪で長髪、キツネ顔のカルミは笑顔を向けた。


「カルミ。良いところに来たわ。そいつ監房に入れちゃって」


「そのつもりだ……最後に残っていた男がこんなので、さぞかしがっかりだろうな」


「がっかりなんてしないけど……力使うなら言ってよね!」


「省いた……お前、無理やり迫ろうとしたな。見ていたぞ。一生牢に居ろ」


「馬鹿言うな。まだ何もしてねえだろ」


「関係ない。お前みたいなのが、クマアファミリアに洗脳されるんだ……ちょっとこいつを連れて行くから。ご飯は食べるからな。サクイにもそう言っておけよ」


「はいはいはい」


 カルミは拘束した男の手首を持ち、低空飛行で飛んでいき、すぐに見えなくなった。

 死者の案内人であり、科学者であり、モクモの治安を統括している忙しい銀色長髪でおっぱいが大きいあたしの友達カルミ。


 あれがあたしに想いを告げてきた最後の男。ゆえにこのモクモにあたしが気になる男の人って誰もいない……


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