第2話
ユウジは先程の少女から離れオアシスを見つけるつもりだったが少々おかしい事態になってきた
「クソッ! まただ! さっき振り切ったはずなのに!」
先程の緑色の髪が印象的な少女である
ユウジが少女から離れた、かと思えばいつの間にか近くにいる
不気味に思い足早に離れてもまた少ししたら同様だった
これの繰り返しである
「ハァ・・ハァ。物音すら立てずに。冗談じゃねえ」
少女はと言うとユウジに向かって何か言いたそうにしているが相手は直ぐに少女から離れてしまう
ユウジはその臆病な性格ゆえ、とうとう我慢出来ずに怒鳴り始めた
「お、おい! ガキィ! ついてくるんじゃねえ! 本当に殺しちまうぞ!」
「え・・えっ?」
「め、目んたま繰りぬかれたくなきゃとっとと失せな! いいか絶対だぞ!」
「え・・」
急に怒鳴り始めたユウジ。
そして今まで生まれてこのかたうけたことも無いような暴言に
流石の少女も一瞬固まる
「ヒャッハ! 所詮ガキだな!」
ユウジは駆け足でその場から立ち去る
何度も何度も後ろを振り向くが少女はその場に立ちつくしたまま
よし、大丈夫そうだ
「しかしなんだったんだあのガキ。全く息を切らした様子も」
「ゲートリング・オブ・アカンパニー」
「え?ゲート? ヒャア!」
ユウジは驚きその場から飛びのいた
「ど、どうも。えへ」
先程撒いたはずの少女がいる
少し困ったような笑顔でペコリと挨拶してきた
「あ・・は・・」
ユウジは混乱した
なんだ? なにが起こった?
俺はやはり夢でも見ているのか!?
納得し難い出来事にその場に凍りつく
「勝手に同行マジックを付与したことは・・その。ごめんなさい。どうしてもあなたにちゃんとお礼が言いたくて」
「ア・・ヒャ・・」
ユウジはしりもちを着く
少女はその余りのリアクションに困ったような表情をうかべる
「そんなにビックリさせちゃいましたか? なんかゴメンンサイ・・あの、モヒカンさん」
「ア・・ア・・」
ユウジは少女の出現に一旦腰を抜かしそうにはなったが、流石に抜かすまでではなかった
だが腰が抜けた原因は別にあった
視界の少女の更にその先に有るものをみた時に今度は本当にぬかしてしまった
つまり腰くだけである
「ヒャア! 人の姿をした・・虫!?」
「えっ!?」
少女の後ろから小さい何かがユウジに向かって飛んでくる
少女は慌てて後ろを振り向く
「ゴテキスボムピクシー!?」
黒いピクシー
手のひら大の大きさながら人間の顔をし人間の体をしたその外観
それに加え羽の生えた見たこともない生物にユウジは腰がくだけた
「こ、こっちへ来る!?」
「あれに触れてはダメ! 人間の胸にとりついて自爆する!」
少女はそう言うと素早く手で印の形を結ぶ
「空の精霊に告ぐ。我ラウザーの使者にして使役するもの。太陽の光の衣で我達を守りたもう・・サンシャインオーラガード!」
少女が何か言うと少女の回りに光の渦が起こり始める
「範囲が・・間に合わない!? 早くわたしのトコロに来て!」
「ヒ・・ヒィ!」
腰がくだけたユウジは全く動くことが出来ない
しかも恐怖で足はガクガク震えており涙さえ浮かべている
それでも先に奪ったパンは決して手から放さない辺りユウジの食べ物に対する執念が感じられた
「早くこの光の中に! そのピクシーは人を殺すことだけに特化された人工物! まともに戦ってはいけない!」
少女は思った
(ゴテキスボムピクシー! 悪の上位魔導師が作り上げることの出来る希少なホムンクルスであり、人間を見るや即座自爆特攻を仕掛ける悪魔の生物! でも・・どうしてフリューゲル草原に!?)
「ヒッ! こ、こいつ胸にとりついて!?」
「しまった!」
「ニタア・・」
人の顔をした見たこともない生物
その生き物がユウジの胸の上で浮かべたその笑顔に恐怖で戦慄した
ーー死ぬ!
この感覚は1度経験がーーある!
「うわあああ!」
カッーー!
辺りが光につつまれるとともにユウジの胸で小さな爆発がおこった
「モヒカンさんっ!?」
少女は一度だけこの黒いピクシーによる人間の死体を見たことがあった
小さい爆発ながら胸部には無惨に穴が空き、回りはやけただれるのである
しかし、少女が目にしたのは予想とは全く違うものであった
「ヒッ! ヒューヒュー・・ヒュー。ば、爆竹の類かっ・・? お、驚かしやがって」
「え? えええっ?? 無傷!?」
ユウジはなんとか強がりを吐くも完全に泣いてしまっており鼻水まで垂らしていた
漏らしてもいた
対して少女はユウジが無傷というありえない光景に固まってしまった
(この人・・? 無詠唱で防御魔法でもしたというの!?)
そしてしばらくして思いだしたかのように手を印で結び急いで口をあけた
「空の精霊に告ぐ。我ラウザーの使者にして使役するもの。その空間に我の道を示したまん。ゲート・スカイウォーカー!」
ブオッ!
何も無い空間から金色のゲートが少女の前に現れる
その中心点にはうっすらと建物のようなものが見えた
「ヒューヒュー・・? ヒャアッ!?」
「ここは危険。逃げましょう。逃げよ」
「なんなんだお前らはよおおおっ~!」
ユウジはパニックになり泣きじゃくった
金色のゲートに入ることを渋るユウジに流石の少女は少しムッとしユウジにつめよる
そして顔を近づけ
「さっきのピクシーが今度は大勢でくるよっ!?」
「ヒッ! あの虫っ!?」
「だから急いでっ!」
ユウジは青ざめて慌ててゲートに向かいだした
といっても腰くだけで漏らしていたので犬のように四つん這いになりながら無様に歩いていく
恐怖で思考が追いつかなく言われるがまま怪しげなゲートに入っていった