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世紀末転生! ヒャッハー無双で成り上がり  作者: DIOMASU
第1章 絶望の三姉妹! 俺はここから成り上がる!
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第1話

「おいガキィ! お前もこの犬みたいになりてえのか? あーん?」



 ユウジは頭部に強烈な一撃を喰らい既に死に絶えた獣を再度足蹴にしながら1つ思案した


 おかしい・・

 いくらガキでも犬ッコロは食糧の乏しい現代じゃまさに『ごちそう』

 俺もガキの頃、クソまずい野犬をよう食べたもんだ

 

 ガキとはいえこんな犬一匹対応できずに手こずってるとはな

 ガキ1人とってもみてもこれじゃあこのオアシス。

 相当ぬるいようだぜ



「あ・・ありがとう」

「ああっ!?」



ファサッ・・



 子供はホッとしたように一息つくとフードをとった

 長く薄い緑の髪が顔から出る



(あ? 女か?)

「た・・助けてくれてありがとう」


「ケッ。その歳でブリーチかよ。ませやがって」

「?」

「おい! 話は聞いていたんだろうな!? 食糧と水を今すぐ残らず出すんだよ!」



 こう言うと大抵の弱者はどういう反応をするのかユウジは知っている

 老人は必死に許しを乞い、女子供は泣き叫ぶ

 強奪するユウジからしたらこの反応がたまらなく快感であった


 だが、相手の反応はとても意外なものであった



「ど、どうぞ!」

「は?」



 手を差し出してきた相手の両の手にはあふれんばかりの水がなみなみとある



「容器がなくてごめんなさい・・汚い手で・・」

「・・・」



(このガキ。いつの間に出した? そんな素振り全く無かったぞ)



クンクン・・



(毒は、ないみたいだな)



 ユウジは深く考えるのをやめ少女の手の水を飲み始めた



「うっ! なんだこの水は!? 泥の味が全然しねえっ!」



 荒廃したトウキョウで育ったユウジにとっては初めての味だったのかもしれない

 汚染された井戸の泥水か塩素で強力に消毒されたダムの水

 ダムの水はトウキョウの支配者階級にほとんど飲まれるので、実質ユウジが口にしていたのは殆ど泥水であった


 もっとも略奪ができる歳になってからはしばしばトウキョウのオアシスから上質な水は手に入ることはあったが、それも支配者の手に渡るのが常であった



「ペチャ・・ペチャ」

「うう。やめてくだ・・さい」



 ユウジは少女の手の平を余すことなく夢中で一滴残らず舐めまわした

 


(こりゃあとんでもねえオアシスだ!)


 

 先の少女の水の出どころの疑問などとうに頭から消え今飲んだ水の味をかみしめていた



「お、おい! 次は食い物だ! 食い物をよこせ」

「ハァ・・ハァ」



 ユウジは声を荒げ乱暴に言い放つも

 少女は恐怖の表情を浮かべるどころか頬を赤らめモジモジしている

 

 イマイチ強奪している側のユウジからしたら納得のいかない相手の態度に苛立ちはじめた



「わ、わたしのお弁当でよければ・・」

「よこせっ」



 少女の手から出てきたものを乱暴に取り上げるとユウジは戦慄した



「ううっ! パ・・パン!?」

「こんなものしかなくてゴメンなさい・・」



 基本的に支配者のみが口にする、パン。

 荒廃したトウキョウにおいて小麦を育て収穫するのは非常に難しく

 それ故の高級食でありユウジが口にしたことなど数える程しかない



(コイツ・・支配者階級の娘か?)

「あ、あの。近い・・です」



 ユウジは改めて少女を見て思った


 汚れてはいるが高級そうなローブを着ていて首から宝石のペンダントをさげている

 そしてガキのくせに髪に緑のブリーチ!

 犬っころごときに対応出来ねえ弱さといい、コイツ間違いなく・・

 

 支配者階級に甘やかされているガキだ!



「チッ・・クソッ」

「す、すいません! すいません! そんなものしかなくて」



 そして少女はチラチラと好意の眼差しでこちらを見る

 かと思うと、何かを思いついたかのように急に声をあげた



「あの! よろしければウチまで! 命を救って頂いたお礼を改めてしたいので・・」

「うせな」

「え・・?」



 腕力も知力も平均クラスのユウジだったが、ただ1つだけ才能があった

 生来の気の弱さからくる慎重過ぎた性格である

 

 本来才能と呼ぶには微妙なその性格だが

 こと暴力が支配する荒廃したトウキョウではその才によって生きながらえてきた


 支配者階級に関わるとロクなことがねえ! 笑顔で笑っておいて後ろからズドンだ!

 

 この頭のイカレたガキの言う事も信用できないし

 仮に本当だとしてお礼とやらを頂いてもガキのいないところで親御に殺されるのがオチだ。事実何人もそういうヤツを見てきた!



「よくよく考えれば宝石なんぞ今じゃなんの価値もないしな」

「あ、あの」



 そういってユウジは足早にその場を後にした

 

 散々身ぐるみ剥いだ後人買いに売り飛ばす算段も立てていたが

 少女の脅されているとは思えないその態度もあいまって急に少女がとても不気味な存在に思えてきたからだ

 

 関わると命がねえ

 俺のカンがそういっている!



「だがここのオアシスがとんでもねえことだけは分かったぜ。後は弱そうなヤツを見つけて・・へへっ」

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