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スカル・ヘルモンド

作者:浮草堂美奈
「スカル・ヘルモンド?」
 彼は問う。
 びょうびょうと風が吹く。
「スカル・ヘルモンド?」
「スカル・ヘルモンド?」
 足元の躯から、銃がぼろりと落ちた時、彼はようやく納得した。
 それが、自らの名だと。
「スカル・ヘルモンド!」
「スカル・ヘルモンド!」
 彼は叫ぶ。自らの名を肯定する。
 スカル・ヘルモンド。荒野を彷徨う、骸骨だ。


Ⅰ 特殊保安官試験

 ジョン・ジャクソン!
 二十歳!
 一次試験合格!
 二次試験合格!
 三次試験合格!
 よって、特殊保安官最終試験を、現刻をもって開始!
 試験内容!
『殺人技術に特化した、凶悪殺人犯と行動を共にし、二日以内にこれを殺害すべし!』
 以上!
 聞いた通りの試験内容が繰り返され、ジョンはその独房に入る。
 ヴィクトリア・ホームズ保安官長が、鉄格子の鍵を閉めて、その喫煙者に似合わぬ玲瓏な声で命じた。
「しっかりやりたまえ」
 囚人はスカル・ヘルモンド。
 ジョンが殺す男だ。
 彼は煙草を吸っていた。
 煙草の煙が身体中の穴という穴から出ていた。
 否、それは正確ではない。
 彼――スカル・ヘルモンドは、骨しかなかったからである。

「そんなにびびんなよ」
 スカルは髑髏の顎部分を開けてカタカタと笑った。
「だだだだだって! 骸骨って聞いたから、痩せてるだけだと思ってたんだ! それがッ! 本当に骨しか無くて生きてるなんて!」
「んー? 骨だけえ?」
 腕の骨が動き、ボロボロのカーキ色のマントをごそごそとする。
 それがマントを脱いでいるのだと気付いた時には、彼の骨が全てむき出しになっていた。
 長い間風雨に晒されたような、傷んだ骨。
 その左胸、肋骨の隙間を、スカルは指した。――指の骨で。
「見ろ、心臓だ」
 はっとジョンは息を呑んだ。
 肋骨の隙間から覗く物。それは握りこぶし大のルビーだった。
「俺はこいつで動いてる。俺を殺したけりゃ、この心臓を止めるこった。そうしなきゃ、俺は絶対に死なない、く、あ、は」
 掠れているのに近い、低い声で笑う。
「そんなもの――試して見なくちゃ――」
 ジョンは銃を構えたSAA、通称ピースメイカーと呼ばれるリボルバーだ。
 それを両手で構える。
 スカルは正面に立っている。
 まるっきり無防備に。
 両手を広げて、『さあ歓迎だ』
 ジョンは引き金を引いた。
 鋭い銃声が響いた。
 しかし、
 スカルが頭を振ると、頭がい骨の中で弾丸がカランコロンと音を立てた。
 そのまま数度頭を振り、
「あったあった」
 ぱかっと開いた口から、弾丸を取り出した。
「それにしても、お前、意外とはしっこい奴だな」
 スカルが摘み上げたのは、二発目の弾丸。
 ジョンが心臓を狙って撃ったものだ。
 ジョンは、動く事が出来なかった。
 被っていたはずの革製の帽子は、スカルの足元にあった。
 手で取られたのではない。
「アンタ……その銃は」
「お前と同じ、SAAさ。改造しまくってるからちょっとごついけどな」
 その通り、カスタマイズされたリボルバーには、スカルの頭と同じ髑髏が彫られている。
 スカルは心臓を帽子についていた金具で止めた。
 ジョンが撃つ直前、スカルも銃を抜き、ジョンを帽子を狙って撃ち。
 帽子はふわりと飛び上がり、スカルの方へ移動し。
 その金具はスカルの左胸を守ったのだ。
「返す」
 帽子を頭に被せられて、ジョンは呻いた。
「化け物め」
「おう、サンクス。二日間仲良くやろうぜ」
 二日の期限を過ぎても殺害できない場合、試験は不合格となる。
 試験中、囚人の武器携帯は認められる。
 囚人が保安官候補を殺害した場合のペナルティは、懲役に十年のプラス。
 保安官候補の遺族には、金貨三枚の見舞金が出る。
 それが特殊保管巻試験のルールだ。
 ジョン・ジャクソンは呻く。
 自分は、この試験で死ぬかもしれない。

 Ⅱ 脱走

 ジョンが帽子を拾った矢先だった。
「なあ」
「ん?」
 独房の埃を、スカルから目を放さずはらう。
「俺が逃げたら如何する?」
 スカルはもうもうと立ち込める煙草の煙に構わず、顔を近づける。
 ジョンは咽ながら答えた。
「そりゃあ、殺すさ。おい、ちょっと離れてくれ」
「そうか」
 骸骨男は煙草を弾いた。
 ピンと軽く音を立てて、吸殻が足元に落ちた。
 その瞬間、ジョンは、吹き飛ばされた。
 スカルの蹴りだと気付いた時には、体は反対側の壁にぶつかり、痛みが全身から訴えられていた。
「スカル……!」
 ジョンは呻きながら、スカルを見上げた。
「悪いな」
 頭蓋骨がぽこんと鉄格子の枠から出た、ついで、肩甲骨、肋骨、心臓、骨盤、大腿骨……スカルの体―骨は鉄格子の隙間から這い出ていく。
「俺にはやらなきゃいけない事があるんだ」
 ジョンの体がようやく動き出した時には、再構築された体は完全に鉄格子の向こうにあった。
「待て!」
 ジョンは痛みを堪えて、独房の鍵を取り出した。
「待つさ。みんなをハッピーにしてやるから」
 そのまま、スカルの体は窓の外に消えた。
 ジョンは独房の鍵を開けて(こういう時には、こんな簡単な事でも上手くいかない)、外に飛び出した。
「待て! スカル!」
 大声を上げたその瞬間だった。
「よう。遅かったな」
 あっさりと、塀の向こうから返事が返ってきた。
「ほら、俺の得意技」
 空にぽっかり、髑髏型の煙が浮かんでいた。
「どういうつもりだ……? スカル・ヘルモンド」
 スカルはのっそりと姿を見せた。
「言っただろ。みんなをハッピーにするって、その為に俺は、ある女を狙ってるんだ」
 煙草の煙の髑髏が、歪に崩れ始めた。
「お前とは仲良くしたい。それ以上は何も望んでないさ」
Ⅲ 役所

「ホームズ官長!」
 やっと電話が繋がっている食堂を発見し、ジョンは迷わず転がり込んだ。
「ジョン・ジャクソン候補。何をしていた?」
 ヴィクトリアの冷静な声を聞き、上がっていた息に気付く。
「説明できる状況にない――か。ならば、私が君が見てきたものを再現してやろう」
 それはそうだ。あんな事が起きておいて、この鋼の女に伝わっていないはずがない。
「君は何度もスカルを止めようとした。しかし、ヤツの銃捌きには全てが無駄だった」
 昨日の夜―。
 まさに脱走した夜に、スカルは市役所に押し入ったのだ。
 いきなり入ってきた骸骨男に、窓口の女は悲鳴を上げて逃げ出した。―これが、彼女の生存要因である。
「何が目的だ!」
 同じく窓口の中年男は、コルトのリボルバーを抜いた。―端的に言えば、これが彼の死亡
要因となった。
「キャシーの居所を探してるんだ」
 スカル・ヘルモンドはSAAを男に向けた。
「貴様! キャシーまで殺すつもりか!」
 中年男は、発砲した。
 銃を正式に両手で構える事、発砲までの躊躇いの無さ。
 彼も、南北戦争の従軍経験がある事は明白だった。
 しかし、スカルは――戦争の英雄だったのだ。
 窓口職員は、スカルの銃を封じようと、腕を狙って撃った。
 残念ながら、それはスカルが戦場でもっとも受けた戦法だった。
「一家皆殺しの大悪党が! キャシーまでは殺させんぞおッ」
 そう、スカルが小麦農家のその一軒家を襲撃した時も、父親はスカルの腕を狙ったものだった。
 スカルは、腕を狙って撃たれるのに慣れていた。
「この化け物が! 落ちたものだな! 英雄!」
 スカルは、戦場でよくやった様に、キャシーの父親を相手にやった様に。
 腕を狙って撃つ弾筋を読み、その弾丸に向けて発砲。
 戦場で何度もと、小麦農家で一回のみやった事がある経験と同様に。
 中年職員が撃った弾丸は、スカルが撃った弾丸に当たって弾かれ、中年職員に当たった。
 弾丸の一粒は、命の一粒だ。
 当たれば、大抵死に至る。
 男にとって運が悪かったのは、それが即死部位。眼球であった事だ。
 かくして、小麦農家一家襲撃殺人事件の犯人にして、南北戦争の屍の上の骸骨王、スカル・ヘルモンドに、殺人の罪状が一件加わった。
「キャシーというのは、スカル・ヘルモンドが襲撃した小麦農家の一人娘だ。家族構成は、他に両親と祖父母。キャシーを除く全員が、スカル・ヘルモンドに射殺されている。見事な手並みだったよ。まず、父親を射殺。そして、直線状に居た祖父母を、たった一発の弾丸で射殺。更に、逃げようとする母親を背中から撃ち抜いた。全員が即死。使用された弾丸はたった三発。もはや職人技だな」
 ヴィクトリアは冷徹に説明する。
「そうですか――。何故……」
「スカル・ヘルモンドが何故凶行に到ったかか。南北戦争の骸骨王が、試験対象の囚人まで落ちたのは――」

 ジョンがテーブルに戻ると、スカルはアスパラサラダをむしゃむしゃと食っていた。
「おかえり。ここのオムレツはいけるぞ」
 何処に入っているのかは知らないが、ケチャップだけを残した皿には、スパニッシュオムレツが乗っていたはずであった。電話の前までは。
「アンタ、いい食いっぷりだねえ! 何処に胃袋あんのさ!」
「うん? たぶん、これが別腹ってヤツだ」
 店のおばちゃんと談笑しながら、サラダの皿も空にする。機嫌を良くした彼女は、パンのお代わりをサービスして行った。
「嗚呼、美味い。独房の飯ってのはなあ、心をこめて冷ましてあるんだ。その点、此処の飯はサイコ―だ。見ろ、このパン。かりっとした皮がたまらないだろ」
 むしゃむしゃとパンを咀嚼し終えたスカルに、ジョンは重い口を開いた。
「スカル、アンタはキャシーの保護された孤児院に行くつもりだろ」
「ん? だから言ってんじゃん。お前いらないのか、じゃあくれ」
「いらないとは言ってない。あ! もう食いやがったな!」
 香ばしいバケットをバリッと食いちぎったスカルは、決して返さんと不退転の決意を示すポーズをした。
「はあ。スカル、ホームズ長官はもう手を打っている」
 ため息を零して、アスパラにフォークを突き刺す。
「そりゃあ、そうだろう。ヴィクトリアはそういう女だから、あの戦争で生き残れたのさ」
「じゃあ、もう勝手にしてくれ」
「何だ? 降りるのか」
「降りないよ。代金を払いに行くんだ。どうせお前、金なんか持ってないんだろう」
「おお! じゃあ、オムレツお代わり頼む!」
 骸骨男の嬉しそうな声は、無視する前に店のおばちゃんによって、オーダーが通ってしまった。

Ⅳ 孤児院

 その孤児院は開拓されてから、長いこと放置されていた山奥にあった。
「なんかオバケでも出そうな山だなあ」
「お前がそれを言うのかよ」
 頭蓋骨を掻くスカルに、思わずつっこむ。二人は揃いのランタンを握っている。
「何言ってるんだ。俺の故郷じゃ、こういう山にはゴブリンだのトロールだのが住んでるって、相場が決まってたんだ」
「お前にも故郷があったんだな」
「なんだ? そりゃあ、俺だって、戦争に行く前は紅顔の美少年だったんだぜ?」
「いや……悪い。皮肉のつもりは無かったんだ」
「何だ気持悪い」
 俯くジョンに、スカルは肩を竦める。
「スカル……彼女は」
 ジョンが言いかけた瞬間だった。
 スカルは抜銃した。
「居る……居るぞ骨男」
 きいいいいいいいいい!
 周囲から一斉に蝙蝠が現れたのを見て、ようやくジョンは声の主を理解した。
「俺はスカル・ヘルモンドだ。蝙蝠男」
 スカルはニヤリと笑うと、蝙蝠の中心に発砲した。
「私は、ヘンリー・アーチャーだ。蝙蝠は私の体の一部に過ぎない」
 目の前の男は、タキシードにシルクハットの正装で、悠然と笑う。
「じゃあ、ヘンリー、ヴィクトリアの使いと見て間違いないな?」
「ああ、間違いないとも」
「じゃあ、一騎打ちといこうじゃないか」
「勿論だ。私が保安官候補の血を啜ったとあっては、ミス・ヴィクトリアは私の終身刑を解きはしないだろう」
「OK.みんながハッピーになれる方向に変更は無い」
 にたり。
 二人が笑った。
 ヘンリーの体がまた無数の蝙蝠と化した。
 何十匹? いや、何百匹だ!
 ジョンは銃を構えた。
 この一戦の間こそ、スカルが最も無防備になるはずであった。
 きいいいいいいいいいいい!
 蝙蝠が甲高い声を上げて、スカルに襲い掛かる。
「うわっ! わぶっ」
 蝙蝠達の狙いはスカルの心臓だ。
 肋骨に齧り付き、がりがりと嫌な音を立てる。
 それを一匹ずつ撃ち落し、手で握りつぶすスカルだったが、装填中はどうしようもない。
 たちまち、スカルは真っ黒い蝙蝠の塊となった。
 スカルが死ぬ!
 ジョンは、それを理解した。
 そして、ヴィクトリアから聞いた、スカルが狙う女の事を思い出した。
 それから先の行動に、迷っている暇はなかった。
 ジョンは、大きくランタンを放った。
 いや、ランタンと同時にあるものを放った。
 蝙蝠は音に敏感だという。
 故に、ランタンと爆薬が起こした、ドカンという炸裂音に、全ての蝙蝠が落っこちた。
「ジョン! Thanks!」
 落下した蝙蝠が、元のヘンリーの姿に戻っていく。
 スカルはその上空を撃った。
「スカル! 何やってんだ!」
 あちこちの骨がボロボロになったスカルは、ニヤリと笑った。
「まあ見てなって」
 ヘンリーは体を見せて、くふ、と笑った。
「スカル・ヘルモンド、私を、ばらばらの私を、幾ら撃っても無駄だぞ」
 しかし、スカルもまだ笑っていた。
「ああ、分かってるさ」
 笑うと同時に、轟音。
 ジョンは思わず首を竦めた。
 スカルは空中を撃っていたんじゃない!
 ヘンリーの背後から、崖の上から!
 巨大な岩石が雪崩のように迫ってくる!
「な! スカル……貴様!」
「HAHAHAHAHA!」
 スカルの哄笑が地響きの中、なお響く。
 ヘンリーは、岩石の中に轢き潰された。
 最後に残った一匹の蝙蝠を、撃ち落とし、
「地獄で会おうぜ、フリークス同士」
そう言って、煙草を銜え、スカルは首を三百六十度回転させた。
「ときに、ジョン」
 また、百八十度首を傾けて、スカルが問う。
「お前、俺を助けて良かったのか」
 ランタンを無くした手を、所在無く振って答える。
「そうだな……あのヘンリーと言う男には、何の恨みもないよ。ただ……お前は俺が殺さなきゃ、試験に合格できないだろう」
「OK.借り一つだ。何で返して欲しい?」
 大きく息を吐いた。
「今から行く孤児院では、キャシーを銃では引きずり出さないで欲しい。そう、要するに、武力で突入しないで欲しい」
 スカルも大きく煙を吐いた。
「お前は欲の無いヤツだ」
 差し出されたシガーケースから一本取る。
「人並み程度なだけだよ」
 口に銜えたが、火は拒否した。

 孤児院では、スカルが姿を見せた途端、院長がライフルを向けた。
 しかし、スカルが撃たれても。
「はは、キャシーを出してくれってだけだ」
と笑うと、
「化け物……」
と呟いて、床にへたりこんだ。
 その後ろから、甲高い声が発せられた。
「骸骨……あの骸骨なのね!」
 十歳になるというのに、小さな体。
 あちこちにある痣。
 金髪の下のブルーの瞳は、スカルを掴んで逃さない。
 キャシーだ。
 スカル・ヘルモンドが皆殺しにした一家の生き残りだ。
「骸骨じゃない。スカル・ヘルモンドだ」
「どうだって構わない。あなたは、パパもママも、おじいちゃんもおばあちゃんも殺した」
「ああ、そうだ」
 骨だけの掌が、キャシーに銃を渡した。
 両手で、そっと押し付けるようにして。
「罪滅ぼしに来た。俺を撃て、キャシー。六発の内、一つは心臓に当たるはずだ。ほら、これだ、このルビーだ。ようく狙え」
 キャシーは、銃を正面に向けた。
 小さな体に、大きな銃はいかにも重そうだった。
「ママはあたしの為にアップルパイを焼いてくれた」
「ああ、そうだ」
 スカルは頷く。
「ママがアップルパイを焼くとね、パパは必ずつまみ食いするの。おじいちゃんもおばあちゃんもアップルパイが大好きなのに、必ず一欠けら無いアップルパイが出てくるの」
「ああ、そうだ。俺はそんな幸せを壊した大悪党だ」
 キャシーの銃が震えだす。
「ママはあたしがいい子にしてないと、金切り声をあげて叫びだすの。パパはあたしを殴って、物置に閉じ込める。おじいちゃんとおばあちゃんは、「躾とはそういうものだ」って笑って見てる」
「……キャシー、迷うな」
「ママやパパやみんなの、機嫌が悪いから殴られるんだって、心のどっかでは分かってた」
「キャシー……だけど、みんなは」
「みんなは、優しい時もあった」
 銃口は震えた儘、動かない。動くのは水だ、キャシーの瞳から溢れた涙だ。
「優しい時もあったんだよおッ!」
 ドン
 弾丸が、スカル・ヘルモンドの心臓を撃ち抜いた。
「どうして……?」
 キャシーが銃を落とした。
 鳴ったのはSAA。
 しかし、撃ったのは
「これで良いんだ。これが、みんながハッピーになれる方法さ」
 ジョンは、未だ硝煙の香りをさせる銃を、ホルスターにしまった。
 そして、スカルの躯に跪いた。
「アンタは、殴られる子供を見て、頭に来た。そこじゃない。問題はそこじゃないんだ」
 そして、シガーケースをマントから探り当てると、煙草を十字の形に置いた。
「アンタは、戦争を越えてきた。だから、忘れちまったんだ。引き金の重さってヤツを。アンタはこうするべきだった」
 ジョンは、泣きじゃくるキャシーを抱きしめた。
「家族になろう、キャシー。幸せにするよ」
 髑髏朽ち逝く中、月下、二人は抱き合った。強く、強く。

 エピローグ
「スカーレット・ジャクソンねえ……」
 オーディション担当者は、渋面を作る。
「キャシー、君は声が素晴らしい、容姿もとてもキュートだ、おまけに十四歳だ。ミュージカルの一員には最適と言えるだろう」
「ありがとうございます」
 薔薇色に紅潮させた頬を見て、オーデション担当者はとんとん、と書類を叩く。
「問題はこれだよ、芸名だ。新人が芸名を自分でつける、しかもこんな時代がかった芸名だよ。ちょっと古典的すぎないかい? スカーレットだなんて」
 キャシーはコケティッシュな笑みを浮かべた。
「あたしのハッピーの道を拓いてくれた人に、一番似た名前なんです」
「ううん、でもねえ」
 内心でキャシーは今回もダメかと思う。
 なあに、帰ってジョンの「ミュージカルなんて浮草稼業やめておけ」って話を聞くだけだ。
あなたが特殊保安官を諦めなかったように、あたしも、まだまだ、諦めやしない。
                                     了

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