48、良
次の章で完結となります。0時か1時頃に投稿予定ですが・・・多分。最後までお付き合頂けたら嬉しいです。
写真撮影の後、午後2時からグランドヒロセ横須賀の一番デカい『賀殿の間』で、俺ん所綾乃ん所と合わせて1,000人を招いての披露宴を行った。
何だかんだで綾乃の方も仕事関係は勿論、両親の関係者、そして氷室製薬の関係者を含めると500人を超した。
俺の方はシンプルだと思ったが、芸能関係者が結構来た。
つうか、綾乃の方より50人くれぇ少ないだけだった。
俺、そんなに知り合いいねぇし・・・と思ったんだけどよ、事務所の方で勝手に決めやがって。
まあ、俺もこんなんだし。
綾乃もあのとおりの面倒くさがりだから、披露宴は全部人任せだった。
つうか。
もともと式だけ挙げて、披露宴なんて肩が凝るもんやるつもりはなかったんだが。
船津プロと、氷室の祖母さんがそれを許さず。
結果、船津プロと氷室の祖母さんに丸投げで披露宴をすることになった。
一応段取りとかは聞いているけどよ、料理だとか、引き出物なんつうものは、どんなもんを選んだのかは一切知らねぇし。
俺も綾乃も面倒以外のなにものでもなかったけど、仕方がなく従った。
まあ、公式のもんだし、俺の方も綾乃の方もお偉いさんばっかで。
魚富士や養老軒、金平のジイサンや近所の連中は披露宴には出なかった。
綾乃はそこら辺が不満だったらしいが。
実は向こうから辞退してきた。
まあ、ノリオはそんなに長い時間じっとしていられねぇし。
他のやつらも、綾乃の実家の方の連中とは気があわねぇのはわかってるしな。
ただ、事務所関係者だからケータは出席した。
ああ、ケータの女の日向野も。
「丈治、どうだ?一張羅着て、見世物になった気分は?」
長ぇ祝辞が終わり、歓談になって皆飯を食いだした頃、ケータが女を連れてニヤニヤしながらやってきた。
「あ?うるせぇよっ。てめぇの披露宴の時はおぼえてやがれっ。」
明らかに冷やかしているのがわかるから、ケータを睨んでやった。
綾乃が隣でクスクス笑う。
「本日はおめでとうございます。綾乃さん、本当に綺麗です・・・ウエディングドレスも綺麗でしたけど・・・そのドレスも素敵です。とてもお似合いです。」
やっぱ、日向野はそつがねぇ。
こういう時にちゃんと言うべき言葉を心得てやがる。
まぁ?確かに?
今日の綾乃は格別に綺麗だけどな?
お色直しっつうのか?
今身に着けているドレスは、綺麗な明るいブルーで。
ああ、よく綾乃が着ている色だ。
この色好きなんだろうな。
ウエディングドレスはお袋さんのものだったが、このドレスは新調した。
勿論、テーラー寺門で。
「ふふっ、ありがとうございますぅ、椿ちゃん。椿ちゃんも、もうすぐじゃないですか?私、お2人の結婚式を楽しみにしているんですよ?」
綾乃が嬉しそうに笑った。
おお、披露宴が始まって初めての本物の笑顔だな。
日向野は日向野で、照れたように顔を赤くした。
そして、慌てたのだろうか。
ガタンッ――
水の入ったグラスを倒した。
直ぐに、ボーイが飛んできて慌てて片づけている。
日向野は舜時にケータに抱きかかえられて、グラスの近くから離された。
ぷ。
何だか綾乃に通じるもんがねぇか?
ボーイに必死で謝っているし。
そんな日向野を見つめるケータは・・・。
「キモイ。木村さん、鼻の下伸びすぎ。」
毒舌女、志摩の言うとおり・・・鼻の下が伸びていた。
ケータマジ惚れてんだな・・・。
本当に、よかった・・・。
「丈治、良かったな。」
志摩が日向野を席に連れ戻し、ケータも席にもどると綾乃に言った後。
俺に向き直って、珍しくマジな顔をしてそう言った。
「あ・・・?」
「・・・まあ、俺もお前も女なんて、ってところあったろ?だから、綾乃ちゃんに出会えてよかったな、って・・・安心したぞ?」
んだよ、俺と同じ事考えやがって。
だから、俺も。
「それは、こっちのセリフだ。クソジジイ街道まっしぐらだったお前が、女みて鼻の下のばすなんて・・・お前も、良かったな。」
ケータに向き直って、珍しくマジな顔をしてそう言ってやった。
そんな俺にケータは。
揺れた瞳で俺を見つめると、小さく、おう、と返事をした。
席に戻って行くケータの後姿を目で追い、何かがこみ上げて来そうになった。
だけど、自分でそれに気がつかないようにして、何となくその後ろのテーブルに目をやると。
まだ、クソジジイは。
顔を赤くして・・・俯いていた。
それに、広瀬、戸田、青山のジイイどもが、泣き笑いの顔で何か言葉をかけていた。
誰にも。
言う気なんてねぇけど。
ふと。
頭ん中に浮かんだ言葉・・・。
『親孝行』――




