46、誓
初めてのキスは、完全に不意打ちだった。
睡魔に襲われてぼーっとしている綾乃を抱き寄せて唇を奪うことなんて、簡単だった。
だけど唇が触れた途端、もうたまんなくなって、気がつけば夢中で綾乃にキスをしていた。
「んっ・・・はぁ・・・。」
綾乃の悩ましげな声でハッと我に返り、ベッドに押し倒し気づけば馬乗りになっていた俺は、自分の下にいる綾乃に目を向けた。
うわ。
ダセェ、何で・・・こんなに余裕ねぇんだよっ。
そう心の中で自分に突っ込みながら、綾乃の顔を覗きこむと。
濡れた瞳が俺を見つめていて。
今まで俺がむさぼっていた可愛い唇からは、赤く妙にエロい舌がのぞき、そして。
湿った甘い吐息がこぼれていた。
つまり、これは。
綾乃も俺に欲情しているってことだと、瞬時に悟った。
それからはもう。
狂ったように、綾乃を抱いた。
綾乃も、同じように俺を求めた。
綾乃の体は、見事に俺に反応して、スゲェ相性がいいと思った。
それから、夢中で綾乃を抱いた後。
床に落ちているコンビニのレジ袋が目に入り。
せっかく買ったコンドームを、使い忘れた事に気がついて、また驚いた。
今まで、こんなことはなかった。
どんな女を抱いたって、こういう事を忘れるなんてことはなかった。
つうか、使わねぇとどこか気持ち悪くて、耐えられなかったのが事実で。
こんな、女に狂ったような状態になった自分に、かなりビビった。
しかも、今・・・俺何やってんだ?
自問自答するが、そんなのは明らかで。
ヤッた後で、すっかりクールダウンしているはずなのに。
腕枕してやって・・・髪に・・・キス繰り返してるよなぁ・・・。
つうか、クールダウンって・・・ダウン、全然してねぇし。
まだまだヤれるし?
つうか・・・つうか・・・俺。
こいつ、もう離したくねぇんだけど?
で、思ったんだよな・・・あの時。
ああ、俺、こいつと。
絶対に、結婚するって―――
「では、誓いのキスを。」
広瀬のジジイは立派な牧師だっつうが、俺にしてみりゃどこかうさん臭ぇ牧師の言葉に、俺は綾乃のベールを上げた。
今、一生の愛を誓い合った事に想いが溢れたのか、純白のドレス姿の綾乃の大きな可愛い瞳は潤んでいて・・・。
そして、綾乃はそっと指を俺の顔に伸ばしてきた。
「丈治、そんなに、泣かないで下さい。」
そんな生意気な事を言いながら、綾乃は指で俺の目じりをぬぐう。
いつも可愛くて綺麗な綾乃だが、今日の綾乃はまた格別で・・・。
「・・・・泣いてねぇ。」
「ふふっ・・・そうですか?」
綾乃が笑いながら、俺の目を何度もそっとぬぐう。
俺のための、ウエディングドレスだと思うと・・・。
クソウ・・・。
「お前、随分余裕じゃねぇか。」
「え?」
「これから、何やるんだっけ?」
「誓いのキスです、よね?」
「そうともいうけどよ・・・。」
「え?」
首を傾げた綾乃に、俺はニヤリと笑った。
「聖なる場所ですよ?おしゃべりは慎んで、早く、誓いのキスを――」
うさん臭ぇ野暮な牧師が、段取りをせかしてきやがった。
おいっ、空気読めよっ!
ギロリと睨んで、俺は牧師に、俺のテクにいちいち指図すんじゃねぇっ!と怒鳴ってやった。
広瀬のジジイが俺を怒鳴る声が聞こえたが、その他の笑い声の方がでかくて。
「じょ、丈治っ・・・誓いのキ、キスにっ、テクニックも何もありませんよっ?」
目の前の綾乃は真っ赤になって俺にたてつきやがるし。
だから、俺は。
「あんだよ、これが。お前とのキスはどんなんだって、俺が感じさせねぇわけねぇだろうが?もちろん、これから一生な?」
そう言って。
うさん臭ぇ牧師が言いやがるところの、聖なる場所で。
綾乃の顔を両手で、ガッシリつかんで。
可愛い唇に、舌をねっとりとこれ以上ないくれぇエロく差し込んでやった。
聖なる場所だからか、綾乃が必死で声を抑える様子にムラッときながらも。
とりあえず。
誓いのキスは。
綾乃の腰が砕けるまで、頑張った―――
まあ?
誓いだしな?




