表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/49

25、炭

木島が去った後、俺は酷く頭が混乱していた。

俺が見てきた、クソジジイは本当にどうしようもない男で。

母ちゃんとヤるだけヤって、遊びだったとはいえ母ちゃんが妊娠したのに、結婚もしなかった。

女には執着しねぇ癖に、信じられねぇくらい手が早い。

んで、ガキの頃から悪だったせいか、この街の繁華街じゃカオで・・・仕切っているようなもんだし。

本職のやつらだって、クソジジイには頭があがんねぇ。

母ちゃんが、酒におぼれて行くのも止めなかった。

俺にとっちゃ、父親と到底認められない最低の男だ。

何より、人を殺そうとして捕まった過去なんて――受け入れられるはずがねぇ。

だけど。


「浜田が殺そうとした相手は、俺の妻の親父・・・浜田の育ての親を殺したやつだ。それも、横須賀の土地買収を成功させるために、横須賀を仕切っていた叶の親父さん・・・妻の父親を闇撃ちしたんだ・・・酷い事件だった。」


広瀬のジジイがそう、説明した。

感情のない低い声だった。




混乱している俺を、綾乃は抱きしめて眠ってくれた。

いつもは俺が、抱きしめるのに。

その夜は、ベッドの中で綾乃は、俺を胸に抱いてくれた。








ガラガラガッシャーン―――


すんげぇ音で目が覚めた。


俺を抱いていたはずの綾乃がいねぇ。

急に不安になって、飛び起きた。


「ああっ、丈治!?起きてしまいましたかっ?」


俺がリビングに入ると、綾乃の焦った声がした。

つうか。

すんげぇ、焦げ臭いんだけど?

換気扇フル稼働させってっけど・・・。


テーブルの上を見ると・・・炭!?

いや、多分形状からして・・・ウインナーだったんだろうな。

いや、どうやったらウインナーをそこまで真っ黒にできっか、それが不思議なんだけど?


俺が無言でウインナーを見ていると、泣きそうな顔で綾乃が俺に謝ってきた。

いや、もうその顔だけで・・・可愛すぎてごちそうさん、なんだけど?


「た、たまにはっ・・・私も丈治に朝食くらいは作ってあげたくて・・・でも、ウインナーを焼いているうちに、ついでにコーヒーをセットしておこうと思って・・・でも、フィルターがみつからなくて、探すのに夢中になっていたら・・・何故か、煙が立ち込めてきて・・・匂いも臭くて・・・それでとりあえず換気扇を回したのですが・・・ダメみたいで・・・で、団扇で煽ごうと思ったら、洗ってあった鍋にパジャマの袖が絡まって、床に落ちてしまって、凄い音で、吃驚していたら・・・ウインナーが真っ黒になってしまって・・・最初に、火を止めておくべきでした。」


「・・・・・・。」


無言の俺に、かさねて綾乃がまた謝った。


「本当に、ごめんなさいっ。ウインナーが黒くなっただけじゃなくて・・・フライパンのテフロン加工まで・・・ベロベロっと・・・めくれてしまいました・・・これ・・・ボンドで、くっつかないでしょうか?ちょうど綺麗にめくれいているので、きちんと貼れば上手くいくかもしれません。」


「はっ!?」


俺が綾乃の言葉に驚嘆していたら、綾乃が引き出しをあさり始め・・・木工用ボンドを取り出した。


いや、それはダメだろ!

ボンドに熱を加えたら、普通に考えて溶けるだろ!

いやいや、その前に、それ木工用だし!


そうだった、こいつ・・・家事能力、皆無だった・・・。




結局。

フライパンは綾乃を説得して、捨てた。

勿論、炭化したウインナーも。


焦げた臭いがたまらなくて、換気扇を回しっぱなしにしたまま、俺達は『みのり』に飯を食いに行った。

もう、昼飯の時間だ。

『みのり』は今日から店を開けているはずだ。





「・・・・・・・。」


店の戸を開けた途端、物凄い後悔が俺を襲った。

何で、いやがるんだ、ここに。


「・・・・・・・。」


麦とろ定食を食っていたクソジジイも、何とも言えない顔で無言だった。


「ジョージ、どうした?そんなとこに突っ立ってないで、入れよ。あ、綾乃ちゃん!元日ぶりだね、改めて今年もよろしくね?」


シュウが入口に立ちつくす俺に怪訝そうな顔を向けたが、綾乃を見るなり満面の笑みで新年の挨拶をした。

つうか、1日に魚富士で会って挨拶しただろうがっ。

しかも、俺よりも綾乃、という態度をしやがって!

と、いつもなら、ムカッとするのだが。


今は、そんな事よりも――


目の前のクソジジイをどう対処していいかわからなくて、俺は踵を返した。


「綾乃、店変えるぞ。」


だけど。

ガシリと、腕をつかまれ。


「クソガキ。話がある。奥の座敷に来い。」


どうやらこのまま、サシで話をするらしい。


はあ。

こんなことなら、綾乃の炭ウインナー食ってればよかったぞ。


いや、食えねぇけど。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ