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10、家

ノリオの九々の歌を散々聞かされゲンナリしているところへ、ババアが泣きながら綾乃に抱きついて礼を言っているのが見えた。

それで、ガキのころからババアがとんでもねぇ苦労をしてた事がちょっと頭をかすめた。


で、そう思うと、怒りの矛先はやっぱり亭主の方で。

少しはババアを大事にしろと言ってやりたくなって、ギロリと睨みつけたが。

禿げた頭を下に向け、小柄な肩を震わせていた。


え。


驚いて、ヤスオをみると。

ヤスオも目を潤ませていた。


確かに、ノリオは九々が出来た事が嬉しそうで。

考えてみるとノリオは、本当に九々が覚えられなくて苦労していた。

俺もヤスオも随分教えたんだが、ダメだった。

だけど、ダメなんてこと・・・無かったんだな。

綾乃は、やっぱすげぇ。


ノリオが九々を言えた事を自分のことのように喜んでいる綾乃をイイ、と心の底から思った。


「綾乃ちゃん、イイ女だよなぁ。懐が深ぇっていうか。いや、それは単なる結果か。おい、クソガキ。お前にはもったいないくらいのイイ女だ。大事にしろ。」


ボソリとそれまで黙っていたクソジジイがつぶいやいた。

今まで黙り込んでいたのに。

知った風な口きくんじゃねぇよ、とギロリとクソジジィをにらみつけた。


「あ?1人の女さえも大事にできなかったクソが、何いってんだ?」

俺の吐き出すような言葉を聞いて、クソジジイは喉の奥でクッと笑った後、違いねぇと言い、立ちあがった。


帰るんだろう。

いつもなら、意地でも声はかけねぇが。


だけど。

どうしても今日は言っておきたかった。


「・・・言われねぇでも、わかってる。何よりも大事な女だ。」


俺がぶっきらぼうにそう言うと、クソジジイは。


「おう。」


とだけ、応えて居間を出て行った。

何とも・・・何とも言えねぇ気持ちになって。


俺はどうしようもなくて。

まだ泣いているババアから、無理矢理綾乃を取り戻し。

代わりに、土産のビーフジャーキーをババアに押し付けた。


ババアは魚屋のくせにビーフジャーキーに目がなくて。

俺の海外土産は、いつもこれだ。

ジャーキーをみて喜んでいるババアに、帰ると告げた。




ババアんとこからの帰り道。

たまんなくなって、綾乃を抱き寄せた。

すると、小さな声で。


「はやく、丈治と、キスしたい。」


「!!!」


やっぱ約1週間ぶりの、綾乃の爆弾発言は、クるな・・・。

は、鼻血でそうだ。

もう色々我慢も限界になってきたので、俺は綾乃の手を引っ張ってマンション迄の道を走った。


はやく。


はやく。


はやくっ!!


鍵を開けるのももどかしく。

玄関に入ったとたん、抱き寄せ。


キス。


もう、どちらの息が上がっているのなんかわからねぇけど。

舌、で確認し合う。

お互いの欲望を・・・。


そして、唇をいったん外して。

綾乃を抱き上げた。

やべぇ。


このまんまだったら、ここで抱いちまう。

ダメだ、ベッドへ行こう。

そう思い、玄関をあがり、綾乃を抱いたまま、リビングへ。


そして――


寝室へ・・・行くつもりだったのだが。



足が。



足がっ。



止まった・・・。



なんで、なんでっ。

こんなに散らかるんだよっ!


だめだっ。


寝室へ行く前に掃除だっ!!


そう思い、俺はガックリしながら違う意味で、上着を脱いだ――





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