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心鬼 〜シンキ〜  作者: 栗谷
第1章 始動
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第9話 病室

目覚めたとき、まず一番最初に目に入ったのは、見知らぬ天井だった。

ゆっくりと体を起こし、辺りを見回す。

どうやらここは病院らしい。

なんで俺、病院になんか――


その時、俺が見たあの光景がフラッシュバックする。

ああ、そうだ、思い出した。

血だまりの中にあった剣菱の死体。

俺はそれを見て倒れたんだ。


「…………」


未だに信じられなかった。

あの光景を現実として受け止める事が出来ない。

夢だったんじゃないかとも思う。

だが、あの時見た光景、吐き気を催す程の血生臭さは、鮮明に俺の脳に焼き付いていた。


「真尋!」


俺のことを呼ぶ声が聞こえ、そちらの方を振り向いてみる。

そこには、叔父さんと叔母さんがいた。


「目が覚めたんだね、よかった……」


叔母さんが、俺に覆いかぶさる。

叔母さんの目の下には、クマが出来ていた。

どうやら、随分と心配させてしまったらしい。


「私は、先生を呼んでくる」


叔父さんはそう言って、病室から出て行った。


「叔母さん、心配掛けましたよね。本当にすみませんでした」


「いいのよ。気にしないで?」


「……はい、ありがとうございます」


「私じゃなくて、夏絵ちゃんにお礼を言ってあげて。あの子、あなたが倒れた時、すぐに病院に連絡してくれたのよ? それに、あなたの事、ずっと見ていてくれたんだから」


「え、本当ですか?」


思わず聞き返してしまう。


「ついさっきまでここにいたのよ。ただ、流石にそのままってわけにもいかないから、一旦家に帰したの」


そうか、夏絵――

退院したら、絶対にお礼を言おう。




それから暫くして、医者がやって来た。

簡単な検査を幾つか受け、異常なしと判断された。


「これなら明日にでも退院できるよ」


「今日退院は出来ないんですか?」


「問題ないと思うけど、一応ね」


「そう、ですか」


本当は、今すぐにでも退院したいのだが、仕方がない。




それから、3人で談笑をしながら、時間を潰す。

叔父さんも叔母さんも、会話中昨日の事件については、一切ふれてこなかった。

知らない筈は無いだろうが、多分、気を使ってくれたんだろう。

本当に、優しい人達だ。


その時、病室のドアがノックされる。


「ああ、私が出るわね。はいはい、どちら様でしょう――え、ちょっと、何なんですかあなた、ちょっと!」


叔母さんがドアを開けると、スーツを来た男が一人、ズカズカと病室に入ってきた。


「前野真尋さん、ですね。私、こういう者です」


男は、胸から警察手帳を取り出す。


「警視庁捜査一課の光田です。どうぞ宜しく」


男はそう言って微笑んだ。





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