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アナタと歩く英雄譚  作者:
第四章
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第十話 修羅場


 魔王軍の王都強襲。テクノス王国の主力である『魔王討伐部隊』と騎士団への壊滅的被害。

 そして、その隊長が『魔王』だったという事実を受け、王国とギルドの首脳陣での緊急会議が決定した。


 何時また、魔王軍が当然攻めて来るか分からない状況、ギルド本部の街ウルカグルが王都と同じように、火の海に染まる可能性があるからだ。

 真奈美と滉一君の護衛を受けて到着したのは、三人のギルドマスター。

 その中にはミスオンでお世話になった爺さんの姿もあった。


 ニアミリアの父である国王。生き残った騎士団団長を加えた五人による会議。

 その重要な会議に王都に在中していた俺が呼び出された。

 すでに俺が『ケルベロス殺し』・『魔王軍の将軍、マンファンの撃破』・『王都を強襲した魔王軍の撃退』をした冒険者だと言うことは、すでに明かしている。


 相手の狙いが俺とホルである以上、周りをあまり巻き込みたくないからだ。

 だから、すぐに王都から発とうとすると、今の王都には魔物から防衛する戦力が殆ど残っていないと、ニアミリアからの要請を受けて、王都に残ることになっていた。


 そんな俺に告げられたのは、Sランク冒険者への昇格。そして三日後、魔王軍に総攻撃を仕掛ける際、魔王城へ先行し魔王を倒して欲しいということだった。

 

 現状の戦力で魔王軍と正面から戦うのは分が悪い。

 かと言って、戦力が整うまで待つと、再び魔王軍が強襲してくるかもしれない。

 短期決戦に持ち込み、敵の大将を討ち取る。それが首脳陣の判断らしい。


 そして、俺の役目は騎士団とギルド冒険者の連合部隊が、魔王軍を引き付けている間に魔王城を強襲して、魔王を倒すというものだった。

 俺が魔王を倒すために時間を稼ぐための作戦。魔王を倒すことに手こずれば被害は大きくなるばかりだ。

 最悪全滅するかもしれない。一度しか行えない、文字通り全てを賭けた作戦だった。


 いつの間に魔王なんて倒すようなことになったのか、考えるだけで頭が痛くなったが、断ることも出来るわけがなくこれを受諾。

 俺と共に真奈美・滉一君・千佳ちゃんの三人が魔王城へ行くことが決定。


 俺は反対したが、三人が頑なに引かないらしく、認めてくれと王様に頭を下げられた。

 国のトップにお願いされたとあれば、頷くしかなく、俺たちは三日後、千佳ちゃんと新しく契約したレッドドラゴン『シルヴィック』の背に乗って戦いに向かう。


 ホント、いつの間にこんな国の存亡をかけた、大きな戦いに巻き込まれたのか、どこで選択肢を間違えたのか、考えるだけで頭が痛くなりそうだった。


「ソラトさん! ベッドがフカフカで気持ちがいいですよ!」


 日がすっかり沈んだ夜。

 俺に用意された城内部の一室。そのベッドの上でホルがゴロゴロして感触を楽しんでいる。

 こいつは、自分専用のベッドが有るということを忘れているのだろうか?


「この弾力なら十分楽しめそうね」


 そして、何故か俺の部屋に居るベストラが、ベッドを掌で押して弾力を確認している。

 何をどう楽しむか、考え始めると卑猥な方へと流れそうなのでやめた。

 今のこいつは魔族とばれないように、コウモリの羽を隠している。

 どこに隠しているのかは知らないが、見た目はちょっと露出度高めのお姉さん。


 魔族でなく人間に近づいたとあって、俺の理性がより危険に晒されそうだ。

 因みに魔王軍の本部である魔王城の位置は、ベストラが教えてくれた。

 あっさり教えてくれた、その理由を聞くと、「旦那に尽くすのは、妻の役目よ!」と返されので、礼だけ言って後はスルーした。


「ベストラ。その色香でソラトさんを独占しないで下さい。ハーレムに支障が出ます」


「あらぁ? 私は愛人公認よ? 女遊びも男のステータス。でも、ソラトが私を求めるのなら仕方ないわ♪」


 ベッドの上で言い合う、魔族と妖精に頭が痛くなる。

 まるで俺がハーレムしながら、ベストラに手を出しているようなクソ野郎に聞こえる。

 机に座り、広瀬の私室に残された資料を読んでいる俺をそんなに妨害したいのだろうか。


「おい。お前らうるさくするなら、邪魔だから出ていけ」


「「この女が悪い」」


 お互いを指さしてそう言った二人にため息。最近は王都にある宿に泊まっていたので、一人でゆっくりすることが出来た。

 しかし、Sランク冒険者になり、魔王城への攻撃が決定したことにより、ニアミリアの助言もあって、城の一室を使わせてもらうこととなった。


 それが今日の話で、断ろうにも決定事項だと言われるとどうしようもない。

 ネナさんやアリュラも城で寛いでおり、同じく魔王城に行く真奈美たちの部屋も用意されている。

 と言っても、真奈美と滉一君は今日ギルドマスターの護衛を完了し、王都に帰って来たばかりで、まだ城には到着していないらしい。


 ベストラが居るって知ったら、真奈美はどんな顔するだろう。

 ふとそんなことを思った。


「ソラト。どの子のこと考えているの?」


「さすが、ハーレムの主人公! 今からどの子と過ごすか、予定の確認ですね!」


 もう二人の言葉に反応することすら、面倒くさくて手に持った紙に視線を戻す。

 どこまで読んだのか、横文字を見ながら考えているとベストラが紙を取り上げた。

 見上げると、ご立腹そうな顔。そして、肩にはホルの姿。


「ソラト。ちゃんと返事はして」


 ホルが便乗して「そーだ。そーだ」とガヤを入れている。 


「いやいや、根も葉もないことを言っているからだろ」


「ふーん……そういえば、ソラトは女の子と夜を一緒にしたことあるの? もしあるのなら、私その子を殺しちゃうかも♪」


「愛人は公認じゃないのか?」


「初めては私じゃないと嫌!」


 もう意味わからん。

 頭を抱える俺を余所に、ホルが彼女に耳打ちした。


「なるほどねぇ……女の味を知らないんだ……」


 ベストラがペロっと舌を出して、得物を見つけたような猛獣の目をしている。

 発言から、ホルが大体何を言ったか想像はつく。

 変態妖精を見ると、テヘッと舌を出しておどけて見せる。


 この妖精は俺の秘密を暴露しやがった。


「おいホル! お前とは一度キッチリ話合おうじゃねぇか!!」


 俺は立ち上がり、ベストラの肩に座るホルを指さす。


「機は熟しました……後はソラトさんが一歩踏み出すだけです! ベストラなら失敗の心配もないですし、安心して身を委ねてください!!」


「そうよ♪ 私が素敵な夜をア・ゲ・ル」


 ベストラが迫って来るのも回避し、部屋を脱出するために入り口の扉へと急ぐ。

 密閉空間でベストラと二人など俺の理性が持つわけがない。


「あ! 待ってよ!」


 ベストラの言葉を無視して、ドアノブに手をかけようとした時、扉が開いた。


「空人~居る?」


 入って来たのは、真奈美を先頭にアリュラとネナさん。

 なんで彼女たちが同時に訪ねて来たのは、後で考えるとして、俺としては退路を塞がれ困っていた。


「ソラト~!!」


 後ろからベストラが俺に抱き付き、豊満な二つの山を当てて来る。

 背中にかなりいい感触を感じるが、この状況はマズい!


「ベストラ……なんであんたが居るの?」


 真奈美の声は完璧に怒っていた。


「あなた達こそ。私とソラトの愛の部屋に何かよう?」


「あ、愛の部屋!!?」


 ネナさんが顔赤くして、手で顔を抑える。

 その姿にかなりグッと来るけど、この人のことだからきっと変な勘違いしていると思う。


「そう愛の部屋よ! だって、私はソラトの妻ですもの!」


「妻ねー」


 アリュラがジト目で睨んでくる。

 とりあえず、意味不明なことを言うベストラを、身体を左右に振って引き離す。


「お前はいつから俺の妻になったんだ!!」


「あんな優しいキスしてくれたのに……嘘だったの!? 恋人と思ってキスしてって言ったらしてくれたのに!!」


「ちょっと待って、空人? 一体、何時の話をしているの?」


 怖い。俺の背後から真奈美の殺気を感じる。死なないために何か良い手は無いか考えていると、ベストラが口を開く。


「あなたが気持ちよさそうに寝ている時よ♪ あれは素敵だったわぁ」


 うっとりとした表情を浮かべるベストラ。もう、頭が痛い。

 しかも、嘘は言っていないから余計にタチが悪い。


「だから私がソラトの正妻に最も近いのよ!」


「そんなの勝手に認められるわけないでしょ!」


 真奈美とベストラが口喧嘩を始めてしまった。時々アリュラの「私、キスもしてないのに……奴隷のままでよかったかも」とか聞こえるけど、聞こえないふりをする。

 これ以上の爆弾の投下は、俺の命が消し飛びかねない。


「そ、それならっ、私だって、ソラトさんと一緒のベッドで寝たことがありますっ」


 ネナさんの発言に場が凍り付く。

 視線を一手に集めたネナさんは、口をパクパクさせて、俺を見ると後ろに隠れた。


「ソ、ソラトさん……説明お願いします……」


「ここで俺!?」


 俺の後ろに隠れて、ネナさんが小さくなる。いつの間にか俺の肩に乗っていたホルが「いつだ!? なんで見逃したんだぁぁあ!!」と頭を抱えてうなだれている。

 俺も出来れば頭を抱えてうなだれたい。

 

「ソラトが童貞だって嘘だったの!?」


「アンタは……なんでこう次から次へと……」


 ベストラと真奈美が問い詰めて来る。

 どう言えばいいんだ!? ネナさんに襲われた?

 いやいや、ダメだろそれは。彼女がベストラのような痴女になってしまう。


「一回、落ち着け!」


「じゃあ。ネナさんと寝たのは嘘なの?」


「真奈美!? その……いや、嘘じゃないんだけど……」


「初めては私って約束したのに!」


「うるせぇ痴女! そんな約束は存在してねぇ!」


「私を助けてくれたのに……」


「違うんだアリュラ……これには語弊があってだな……」


「あ、あんなにアツイ夜を過ごしたのに、ひ、ヒドイです!!」


「ネナさん!? 何の話をしているの!!?」


「ハーレムは大変ですねぇ」


 ホルが呑気にそんな事を言う。

 これがこいつの望んだハーレムなのか分からないが、こんな炎上するようなハーレムを俺は見たことがない。

 おかしい、俺はどこで選択肢を間違えたんだ?


 頭を悩ませる俺をそっちのけで、何故か彼女たちは『誰が俺の部屋で寝るか』で討論を繰り広げている。

 二人にするとか、ダメだ絶対に一人だとか、何故か部屋主である俺の意見など皆無である。

 

 誰か助けてくれ……


 そう思う俺に救いの声がかかった。


「ソラト様。私の部屋で寝ますか?」


 いつの間にか、俺の傍に来ていたニアミリアが言った。

 俺は彼女の手を掴み、半泣きで答えた。


「ぜひ!」


 







 真奈美やベストラの猛抗議を振り切り、俺はニアミリアの部屋へと移動した。

 何故かすでにベッドが二つ置かれていのは、こうなると予想していたのかと思ったが、そこは深く考えないようにする。

 まだ幼いニアミリアが、そこまで考えているとしたら、相当腹黒い……


 何故か俺について来たホルは、真奈美たちに何か言われていたが、今はニアミリアに話しかけている。

 多分、真奈美らに言われたのは、俺を監視しとけとかそんな所だろう。

 ロリコンじゃないんだし、そこは少しくらい信頼して欲しい。


 そんな事を考えてベッドで横になっていると、瞼が重さを増していった。











「ん……」


 女性の声。聞き覚えのある声だが違和感がある。

 近い。かなり近い。


 朝日が瞼の刺激となり、ぼんやりと意識が覚醒する。

 薄らと目を開けて、目の前の光景に固まった。

 そこには、ホルの顔があった。あいつが俺のベッドに入りこんできた? 

 いや、問題はそこではない。彼女の顔は俺の顔と同じ大きさだった。


「は!!??」


 飛び起きて、ベッドから出る。

 まだ肌寒いが、そんなことを言っている場合ではない。

 

 夢か!? 俺は夢を見ているのか!!? ホルが大きくなるなんて……


 かけ布団がもぞもぞと動き、ピンク色の髪が覗く。


「ソラトさん……? 何をそんなに……」


 ベッドから出てきたのは、人間と同じ大きさになったホルだった。


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