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アナタと歩く英雄譚  作者:
第一章
3/51

第二話 初戦闘

 さて、次は戦闘方法を把握しておかないと。

 魔王が居るってことは、魔物も居るってことだろう。

 自衛する力や手段は早めに理解しておく必要がある。


 ステータスと呟き、再び自身のステータスを確認する。




============================


名前:ソラト・アイバ

種族:人間

レベル:1


筋力:60

生命:40

敏捷:60

器用:50

魔力:40


スキル

相思相愛:《ユニーク》

剣術:《1》

弓術:《1》

槍術:《1》

火魔法:《1》

詠唱破棄:《1》

生活魔法:《1》


============================


 


 試しにスキル欄をタップしてみると、説明が出てきた。





========================================================


相思相愛

 自分が相手に向ける好意が相手から向けられる好意となる。

 ただし、異界人には適応されない。


========================================================





「これって、嫌いな人には嫌われるってことですかね?」


「さぁな。こればっかりは人に会って体験するしかないだろう」


 次に詠唱破棄:《1》をタップしてみた。





========================================================


詠唱破棄:《1》

 スキルLvが《1》の魔法に限り詠唱を破棄することができる。


========================================================





 なるほど、横の数字が大きくなればなるほど、破棄できる魔法のレベルも上がっていくのか。

 今、俺の持っている魔法は『火魔法:《1》』だから、詠唱を破棄して使うことができる。

 とりあえず使ってみよう。


 使いたいと念じると、頭に詠唱のような言葉が浮かぶが、無視する。

 そして、次に浮かんだ回路を書くイメージで、自分の中の何かを動かす。

 この何かが魔力と呼ばれるやつなのだろう。


 回路を書き終えると人差し指の先に炎が点った。


「ホル、ちょっと来て」


「なんですか、って、あつぅ!」


 ホントに熱いのか。


「何するんですか!? 丸焼きにするつもりですか!?」


「そうだな。食料に困ったときは、お前を焼いていただくとしよう」


「ひぃぃぃい!」


 次に頭に浮かぶ火属性の魔法を適当に試していく。

 ステータスには魔力という表示はあるが、MPの表示はない。

 無制限に使える訳でもないと思うが、魔法の規模が魔力に依存していることだけは分かった。


 例えば今、俺の作れる火の玉は最大で4つまで、それ以上は作れない。

 他の魔法にも規模に差があるので、魔力が上がれば威力も上がってゆくのだろう。

 この辺は早いこと詳しい人に聞かないといけない。


 次に武器だ。

 武器を使った戦闘は、喧嘩もしたこのない現代っ子の俺にとっては一番の問題かもしれない。

 

 しかし、死なないためにはやるしかない。

 今手元に武器はないが、変身可能な変態妖精がいる。


「ホル。武器になってくれ。試し振りがしたい」


「今……ですか?」


「今だ。急な戦闘時に、経験のない武器を使うのは怖いだろ。今のうちに把握しておくんだ」


「り、理屈は理解できます……しかぁし! 乙女の心情を察するべきです!」


「は?」


「そ、その……恥ずかしい話なんですが……私、武器化して他人に振られたことないんです……素人処女ってやつですね……」


「……で?」


「分からないんですか!? だから、17年間、彼女の一人も。ごめんなさい、嘘です、頭から手を離してください」


 ホルのお願い通り、頭から手を離した。


「初めてって……大切じゃないですか? だから、こうもっとムードを大切にして欲しいって言うか……」


 顔を赤くしてモジモジする、この変態妖精は雰囲気を大切にして欲しいらしい。

 武器化にとって大切な雰囲気が俺には分からない。


「どんな雰囲気か分からねぇよ。優しく振ってやるから、早く武器化しろ」


「なんて強引!! ソラトさんは絶対に相手の子を強引に押し倒して、前戯もなしに入れるタイプです!!」


「人を強姦魔みたいに言うな!!」


 ――ガサ


 茂みから音がした。

 音の方を振り向くと、狼のような白い毛並みをした、2mほどの生物が出てきた。

 これは、もしかして初遭遇というやつですか……


 その狼は小刻みに息をして、俺たちの方を見ている。

 緊迫感が俺の体を駆け巡る。

 今からするのは命のやりとりかもしれない。

 そう思うと、自然と身体が緊張する。


 どうする? 魔法で先手をかけるか?

 どうするか、考えを巡らせているとホルが突然叫んだ。


「これです! これこそが、私の望んだ雰囲気! ソラトさん、いきますよぉぉお!!」


 ホルの身体が光を放ち、俺の右手へと収まる。

 光はやがてロングソードへと形を変えた。


『さぁ! 私の記念すべきデビュー戦です! 思い切って行きましょう!!』


「この状態でも話せるのかよ!!」


 ホルの驚異的とも言える、しゃべり精神に驚きを隠せない。

 こいつは自分の口に人生を賭ける芸人かよ。


『ソラトさん! 来ますよ!!』


 狼が真っ直ぐ俺の方へと向かってくる。

 俺はファイヤボールを発動させ、作り出された4つの火球を狼に向かって投げつけた。


「キャウ!!」


 連続で4つの火球が直撃した狼は炎に包まれた。

 炎に包まれ最初は抵抗していたが、次第に抵抗が弱くなりやがて動かなくなった。

 火が消えるとそこには黒く焼き焦げた、狼の姿があった。


『ちょ! ソラトさん! 私が変身した意味は!!?』


「ない。でも、雰囲気が良くてよかったな」


 相手は近距離しか攻撃手段がないのに、こっちがわざわざその土俵に立つ意味もない。

 ホルには悪いが、魔法を使わせてもらった。

 さてっと、このまま試し振りでもして……え?


 気が付くと、俺の周りには倒したやつと同種のものが8体いた。

 やばい、完全に囲まれている。

 そう言えば狼って、群れる習性があるんだっけ?

 これは完全にピンチだ、戦闘経験が皆無に等しいのに1対8の戦闘なんて自殺行為だ。


『どどどどど、どうします、ソラトさん!!!?』


「落ち着け! 今、考えてる!」


 魔法で攻撃?

 でも、同時に8体の相手を攻撃できる魔法など、今の俺には使えない。

 逃げるにしても、攻撃すれば隙が生まれて、余った奴らに攻撃される。

 しかし、囲まれたこの状況では何処かしらを攻撃して、相手の陣形に穴を開ける必要がある。


「ホル、弓になることって出来るか?」


『弓本体にはなれますが、今はまだ矢を作ることが出来ません』


 熟練度的な何かの概念があるのか。

 遠距離からの攻撃は無理か……


 正面にいる一体が動いた。

 真っ直ぐ俺の方へと突っ込んでくる。

 さっきの奴よりも遥かに早い。


 魔法を発動させる隙もなく、その一頭は飛びついてきた。

 反射的にロングソード(ホル)を、その一頭の首へと入れる。


 ――ザク


 え?

 思っていたよりも簡単に狼の首が飛んだ。

 外套に血がつき、不快感に眉間にシワが寄る。

 洗い流すのは後だ、次が来る。


『ソ、ソラトさん……いきなり、激しすぎです』


 ホルが何か話しているが無視をする。

 次に後ろにいた二匹が同時に飛びついて来た。

 しゃがみこんで、左手を地面につき、ファイヤーウォールを発動させる。


 発動時間は5秒ほどだが、飛びついてきた二匹の攻撃を防ぎ、焼くには十分な時間だ。

 俺を囲むように出現した炎の壁に触れた2匹は、火が体に移り地面にのたうち回り苦しんでいる。

 殺せなかったが、無効化に成功した。


 残りは5匹、そろそろ隙を見つけて逃げる頃合だと思う。

 仲間が3匹やられたせいか、残りの奴らは闇雲に動こうとしない。

 俺を警戒してのことだろう。


 さて、このまま引いてくれると助かるんだが……


 引いてくれれば隙を見つける必要もないし、安全に逃げることができる。

 そんな俺の思いとは裏腹に5匹は、同時に動いた。


『ソラトさん!! みんな来ましたよ!!?』


「分かっとるわい!!」


 これはやばい、もう一度、ファイヤーウォールで壁でも作るか?

 しかし、5匹は連なって向かってくる。

 波状攻撃というやつだ、その攻撃が終わるまでの長い時間、炎の壁は発動できない。


 いきなり、絶体絶命かよ!!


 退路を絶たれた、そんな重い気分が俺に芽生え始めたとき、狼の先頭の一匹が唸り声を上げて絶命した。

 何が起きたのか、最初は分からなかったが、残りの狼に弓矢が打ち込まれてゆく。

 小さな唸り声と共に狼たちは次々と死んでいった。


「あなた、大丈夫?」


 現れたのは、金髪の髪をポニーテールに括った、耳の長い女性だった。


「お、おう。助けてくれてありがとう」


 エルフだろうか?

 髪と同じ金色の瞳と長く伸びたまつげ、胸は残念なことになっているが、長く伸びた手足とそれを包み込む、透き通るような白い肌。

 エルフは長寿で美しいという、イメージだがまさにそれにピッタリの彼女は、弓を背中に背負うとナイフを腰から取り出した。


「何、するんだ?」


「ホワイトウルフの剥ぎ取りよ。丁度、牙が欲しかったの」


 彼女は手馴れた手つきで牙をナイフで切り取り、袋へと入れてゆく。


「売れば金になるのか?」


「少しだけね。あなた、あんなに囲まれて何していたの? 冒険者?」


「……田舎から出てきたばかりでな。冒険者じゃないんだ」


「ふーん……私はアリュラ。今から近くの町に戻るけど、一緒に来る?」


「ソラトだ。もちろん一緒に行く。色々と聞きたいこともあるし」


『あのー……ソラトさん? 戻ってもいいですか?』


「ごめん! 忘れてた! いいぞ」


 右手に握られたロングソードが光を放ち、人に姿へと変わる。

 エルフは口をポカーンと開けて、せっかくの美人が台無しになっている。

 もしかして、見られるとマズイものだったのだろうか?


「もう! ソラトさん! 切るときはもっと優しくしてださい!」


 若干空気の読めないホルは俺の顔の周りを呼びまわり、プンプンしているが、俺にはエルフのリアクションが気がかりだ。


「あ、あなた……今のは?」


「あぁ……こいつは俺の相棒のホル。時々、武器になったり食料になったり色々と役に立つんだ」


「ちょ! 食料にはなりませんからね!!!」


「妖精さん?」


「生物学上、そうゆう分類になるな」


「れっきとした妖精ですから! 一応、妖精みたいなふうに言わないでください!!」


「妖精を連れているなんて、珍しいのね。武器になる妖精なんて聞いたことないわ」


「まぁ、家が色々と……な」


 なんとか誤魔化せただろうか、アリュラと名乗るエルフの女性はそれ以上、何も質問はしてこなかった。


「ねぇねぇ、ソラトさん?」


 ホルが俺の肩をトントンと叩き、耳元で囁いた。


「もしかして、《相思相愛》が発動してるんじゃないですか?」


 あれは常時発動型のスキルなのだろうか?

 確かに能力的にも、常時発動していないといけないような気がする。

 つまり、今のアリュラの好感度はおれが彼女に向けている好感度と言うことか。


 エルフの美女と出会うことができて、ラッキー程度の考えだ。

 好感度で言えば間違いなくいい方だと言い切れる。

 カワイイは正義と言うべきか。


 つまり、アリュラも俺に対してそう思っている?

 しかし、確証がない。


「なんでそう言い切れる?」


「だって、目を全然合わせませんよ? せっせと剥ぎ取りに勤しんでいるじゃないですか? それに、初めて会った男と街まで行くって誘いますか? あれは絶対に気があります。つまり……ソラトさんもそう思っていると」


 確かに彼女は残りの剥ぎ取りをしていて、俺と目を合わせてはくれない。

 単に忙しいだけじゃないかと思ってしまう。


「絶対、照れ隠しですぜ、旦那。どうしやす? 調教して性奴隷にでも……グヘヘ」


「アホか」


 ホルに軽くデコピンを食らわせる、俺の指のサイズは彼女の顔ほどだが、まぁ大丈夫だろう。


「なんでですか!? 男はみんなそうゆう願望があると本に書いていました!」


 その本はきっとダメな知識しか詰まっていのだろう。

 このダメ妖精は無視だ。


 剥ぎ取りが終わったのか、アリュラはナイフを腰にしまった。


「さて、行きましょうか」


「分かった。短い間かもしれないがよろしく」


 手を差し出すと、彼女は俺の顔と手を交互に見る。

 あれ? 握手のつもりだったのに何か悪い事したかな?


「よ、よろしく……」


 アリュラは少し俯き俺の手を握った。

 ホルは「キタキタ! チートきたぁぁあ!!」と叫んでいる。

 後でしめておこう。


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