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アナタと歩く英雄譚  作者:
第三章
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第二話 王道と邪念

 ネナさんから話を聞いた後、アリュラがよく利用していた宿の女将さんを訪ねた。

 アリュラに関する話を聞くが、最近は姿を見ていないらしく、近状は分からないそうだ。

 彼女が不当な罪に問われ奴隷となった。この話が何処まで本当なのか、やはり直接街まで行って知るしかなさそうだ。


 女将さんにお礼を言うと、宿を出て再びギルドへと向かう。

 ウルカグルの詳しい場所は分からないが、確かアクセルから馬車が出ているはず。

 真奈美が来るときはそれに乗ってくればいいと、言っていた。

 ネナさんにでも聞けば、何処から出ているか教えてくれるはずだ。


「ソラトさん。助けに行くんですね?」


「助けるかどうかは、本人に会ってから決める。だけど、それをアリュラが望んでいないのなら助ける」


「くぅ~、久しぶりにドキドキしてきました! 囚われた姫を救い出すこの王道! これでアリュラさんは、ソラトさんのことを……グフフ」


 前半は俺でも王道だと思うし、理解も出来た。

 しかし、後半からこいつの脳内でどういう変換があったのか、気になるが聞いたら負けのような気がする。


 ギルドの建物に入ると、視線を集めるがそれを無視して、受付にいるネナさんへと一直線で向かう。


「ネナさん。ウルカグル行きの馬車は何処から出ていますか?」


「えっと……もうすぐ夕方なので、今日の便はもうありません。早くても明日の朝になります」


 こればっかりは仕方ないか……

 本当は今すぐにでも街を発ちたい所だが、馬車が出ていないのであれば仕方がない。

 そう思い、ネナさんに礼を言って踵を返した時、声をかけられた。


「馬車が必要なのか?」


 振り返ると、カウンターの上に座るギルドマスターの爺さんの姿。

 行儀が悪いな、と思うが今はそんなこと言っていられない。


「はい。今すぐウルカグルへと行きたいのです」


「交換条件をのんでくれたら、馬車を渡してやろう。と言っても、手綱は自分で握ってもらうがのぉ」


 ニヤリと笑みを浮かべた爺さんに、また厄介事を押し付けられる、そう思うが話を聞いてみても悪くない。

 馬車さえ手に入れば、今すぐに発つことが出来る、道は知っている人に教えてもらえばいい。


「条件はなんですか?」


「ネナも一緒に連れて行ってくれ。出張でギルド本部行かないといかんのだが、最近は物騒なのでな。お主が一緒なら安全じゃ。それにネナなら道も知っておるし、知り合いもウルカグルにおる。街に着いてからも色々とスムーズじゃと思うぞ?」


 想像以上に俺にとっていい話だった。

 てっきりウルカグルに行く間までに、魔物の討伐でも押し付けられると思っていた。

 馬車がもらえる上に、道案内人が付いてくる、しかもその人と目的地は同じだから最短距離を移動することが出来る。


 返答はすぐに決まった。


「お任せ下さい。喜んで引き受けます」


「ええ!? マスター! いいんですか!?」


「構わん。どこの奴ともしれん冒険者に任せるより、よっぽど安心じゃ」


「そ、それはそうですけど……」


 ネナさんは俺の方を横目で見る、心なしか顔が赤いような気がする。


「だ、だって、ソラトさんとふ、二人だなんて」


「チャンスじゃな」


 爺さんはニカっと笑みを浮かべ、階段を上って行ってしまった。

 ホント、あの爺さんは油断できない人だ。


「もう! からかわないで下さいっ」


 爺さんの背中に向けてそう叫ぶネナさんを見て、改めてそう思った。
















 ネナさんの準備もあるため、ギルドマスターの豪邸の前で馬車の御者台に座り、彼女を待つ。

 馬車は四輪の屋根付きで黒塗り、真奈美らと迷宮に行ったときに使っていたタイプと同種だった。

 もしかいて、このタイプはギルドの基準型なのかもしれない。

 上級冒険者パーティの彼女らのことだ、ギルドから贈呈品として貰っていても不思議ではない。


「ソラトさん! ソラトさん! 私、ウキウキが止まりません! 二人の煮え切らない関係にピリオドが打たれる、そう思うと鼻血が出そうです!」


 俺の目の前で宙に浮き、固く両こぶしを握るホルにため息をこぼす。


「なんでため息なんですか! こんなチャンスがあるのなら、エロいスキルを覚えさしておくべきでした。私は猛烈に反省しています!」


「貴重なSPをそんなことのために使えるか」


「そんなことってなんですか!? 女の欲求を満足させることの出来ない男が、ハーレムを名乗ろうなんて、世の中なめすぎです!」


「名乗ったこと無いからな!?」


 ネナさんに聞かれたら軽蔑されそうなやり取りをホルとして、自分のステータスを開いた。


============================


名前:ソラト・アイバ

種族:人間

レベル:55

SP:0


ギルドランク:B


筋力:312

生命:282

敏捷:304

器用:280

魔力:297


スキル

相思相愛:《ユニーク》

魂の刻印:《Ⅰ~Ⅴ》

剣術:《5》

弓術:《4》

槍術:《4》

火魔法:《4》

詠唱破棄:《2》

生活魔法:《1》

索敵:《4》

神力適正:《2》

刻印魔法:《3》


============================


 新たに追加された『神力適正』と『刻印魔法』のスキル。

 この二つは俺とホルの間になされた契約が原因で現れたスキルだ。


 今の俺にとって切り札となる『魂の刻印(ルーン)』は、ホルの神殺しとしてのポテンシャルを五段階で引き出すことが出来る。

 ただし、本来は神が使用するように設計されたその力は、人間の俺にとっては過剰すぎるため、最初に使った時のように意識を失くすなど、身体にかかる負担が半端ではない。


 それを軽減するための『神力適正』である、しかし、完全に負担が無くなるわけではなくあくまで『軽減』だけだから、使いすぎは危険だ。


 そして、魂の刻印(ルーン)を使い、『神殺し』となった俺がその状態で初めて使える魔法が『刻印魔法』である。

 まだ試していないので、実際に使えばどんな被害が周りに出るのか分からない。

 身体能力だけでも桁外れになるのに、魔法はどれくらいの規模なのか、想像しただけでゾッとする。


 基本は今までと変わらないが、死なないためには必要な『力』だった。

 いざとなれば躊躇なく俺は『神殺し』の力を使うだろう。

 生きるために、目の前の人を守るために……


「お待たせしました!」


 豪邸から鞄を背負い、持ち運ぶには少し大きい手提げ鞄を持って、ネナさんが出てきた。

 てっきり馬車の中に入るだろうと思っていたら、彼女は俺の横に座った。


「ここですか……」


「だ、ダメでしたか……?」


「いえ。全然そんなことありません。少し驚いただけです」


「じゃ、じゃあ。よろしくお願いします」


 控えめに頭を下げたネナさんに「こちらこそ」と返し、馬を走らせる。

 ギルドマスターの爺さんが門の前で見送っていることに、ネナさんは気が付いていたのかは、聞かないことにした。

 金色に光る雲の下、ウルカグルへと向けて走り始めた。





















「すいません……」


「気にしなくていいですよ。俺の手綱が悪かったのも原因ですし」


 焚火を挟んで、ネナさんが申し訳なさそうに頭を下げた。

 パチパチと音を立てる火に、先ほど集めた枝木を放り込む。


 勢いよくミスオンを飛び出した所まではよかったが、近くの村にたどり着く前にネナさんが馬車の揺れに酔ってしまった。


 ゆっくり走れば動けるかもしれないが、視界の悪い夜をのんびり走るわけにもいかず、野宿という形になった。

 ウルカグルまで数日かかるので、毎回村や町の宿に泊まれるとは限らない、野宿する場合もあるはず。

ネナさんに野宿に慣れてもらうには、早めの方がいいから悪い選択肢ではないと勝手に思っていた。

 それに寝るときは馬車の中で寝れば、地面に女性を寝かせる必要もない、雨もしのげるし何気に馬車は万能のいい乗り物だ。


 小腹も減ったし、食べ物が欲しい。そう思いアイテムボックスを開けた。

 この謎のボックスは持ち運べるものが多いし、真骨頂は何と言って生物(なまもの)が圧倒的に日持ちすることだ。

 ミスオンを離れる際は、食料を多めに入れても問題なく、食器やコップも入れているから、基本的に野宿とは思えないほど、食事の品は充実している。


「ア、アイテムボックス……そんな物まで持っているのですか?」


 しまった……この世界でアイテムボックスは幻のアイテムと呼ばれているんだった。

 時たま迷宮の奥深くで手に入れることが出来る、何処かの国が作っているなど、様々な憶測が流れている品で、市場に出ればすぐさま売れる幻の品なのだ。

 

 そのことを忘れていた……


「まぁ、色々とな」


 適当に誤魔化し、リンゴを二つ取り出す。

 普段は魔物の肉を焼いて食べることが多い、しかし乗り物酔いで気分の悪いネナさんにそれは酷だと思う。

 あっさりした果物がいいはず。


「ホル。ナイフになってくれ」


「りょーかいです」


 片手で扱える大きさになったナイフ(ホル)で、リンゴの皮をむく。

 この世界に来てから、無駄に包丁さばきがうまくなった気がする。

 一口で食べられる大きさに切って、木の皿の上に置いて、ネナさんに渡した。


「すいません。何から何まで」


「気にしないでいいですよ」


 こうして夜、焚火を挟んで誰かと会話していると、初めてこの世界に来た頃を思い出す。

 森の中でアリュラに助けられ、ミスオンに着くまでこうして夜を明かした。

 今、彼女はどうしているだろうか……奴隷に対しあまりいいイメージを持っていのは俺が異界人だからなのだろうか。


 だけど、もし彼女がそのことを苦しんでいるのなら、今度は俺が助ける番になりたい。

 パチパチと音を立てる焚火を見つめ、そう思った。


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