嫌味な女教師
どうしてもとりたいと思う選択授業があった。
それは美術の授業で、他に音楽や体育や書道がある。
表向きは全クラス対象だが、
実際は金持ちの上品なお嬢さん達が選択する事がほとんどだった。
友人達は誰ひとりとして選ばず、私が美術を選ぶというと、
珍しがるのと同時に一緒に体育にしないかと誘ってくれたが、
私はどうしても美術を選びたいので断った。
今日は初めての選択授業。
教室に入ると知った顔は無く、
すでにお嬢様同士でグループで固まっていて、不審そうに私を見ている。
とりあえず、彼女達と離れた所に一人で座った。
「あら、貴女が私の授業を受けますの?」
教室に入って来るなり担当の女教師が聞いて来た。
「はい」
「貴女、この前の音楽の授業を受けていて?」
「いいえ」
実は、この女教師は、前は音楽を担当していて、
美術の授業でも音楽の話を交えながらするのだった。
選択授業の注意書きにそれは書いてあったが、
その音楽の部分は独学で何とかなると思うし、勉強するつもりだった。
教師は更に続ける。
「私の授業が前は音楽、今は美術の二つに分かれてるのは意味がありますの。
普通はもう一つの方を先に受けるんです」
私の反応を確かめるようにちらりと私を見る。
「まぁ、わたくしの立場上、拒否は出来ませんけれども。
拒否は出来ませんけれども」
私は心の中で溜息をつく。
はいはい、二度も繰り返さなくても私を追い出したいのは分かってますから。
出ていかないけど。
とりあえずこのババア(本名は夢乃沢純花、本当は35)とは一年付き合うのだ、
事は荒立てないでおこう。