集団無視のかわし方
私は小学校からほぼ集団無視をされ続けだった。
むしろそれが普通だった。
たまに声をかけられたと思うと、内容はどれも同じような言葉で、しかも他人が言う悪口、イヤミにあたるものなので飽き飽きしていた。
声をかけられるのが嫌いだった。
一緒にいるなんてもってのほか。
なので集団無視状態は私にとってとてもリラックス出来る快適なものだ。
だが、利点もあれば欠点もあり。
集団で何かされる事があるのだ。
それはマジックで上履きや机に落書き(私は気にせず馬鹿、クズ、死ねetcと書いてある上履きや机を使っている。特に上履きなんかは買い直す金が勿体無い)あるいはばい菌扱い、あるいは体育の時間にサッカーやバスケでわざとぶつかられたりするなど、まぁお決まりの行動だ。
私はこんな大多数奴等より人間としてずっと劣ってるらしい。
大多数の考えでずっと、嫌な思いをしてきた
自分は大した人間じゃないのは認めるけど、大多数に何かにつけて見下されるなんてもう沢山。
落書きはともかく、直接私に近付いて行われる種類の行動はとても鬱陶しい。
私は常々どうしたらこれを解決できるか考えていた。
そしてとうとう有効な方法を見つけた。
答えは私以外の他人に矛先を向けること。
その為には他の人間にとにかく声をかけることである。
他人に声をかけるのは、私にとっては重労働なのだが、私が受ける集団無視の場合、大体核となる西納がいて、その西納の友人(下僕みたいなもんか)伊津美、国妻がいる。
私が今まで観察した限り、きちんと意思統一出来るのは最大でも
3〜5、6人までである。
それ以上の人数になると各自が余程強固な絆で結ばれていない限り、完全な意思統一はほぼ出来ない。
私の周りの他人にそんな強固なまとまりなどないように思えた。
特に集団無視なんてのはその気でない人に無理矢理無視を強制する事が多い。
無視する人数が多い程必ず可哀想だとか、本当は嫌だけど…と、変な良心に苛まれているのが一人二人はいる。
特に優しいとか、いい子、お人よし、大人しい、あたりが狙い目だ。
見つからなければ、あるいは見つける事が出来ないならねぇ、と手当たり次第にを声をかけてみよう。
どんなに話し掛けても目を合わせずに無視する賢い奴は除外。
「え?」
とか、複雑そうな表情で、
「あー…」
とか、少しでもリアクションを返す奴がいたらそいつに犠牲になってもらおう。
見つけたら、
「ノート見せて欲しい」
でも何でもいいからとにかく会話をする。
次に相手につきまとう。
嫌な顔をされてもつきまとうのだ。
連中は無視をする割に隙あらば傷つける材料を探そうと見張っているのでそれを逆に利用するのだ。
ちなみに私は、
「気が弱くて大人しい」
莉倫を見つけ話しかけた。
辛抱強く声をかけると、根負けしたのか莉倫は
「あ…はい、どうぞ」
嫌々そうにだが結局ノートを渡して来た。
「ありがとう」
にこっと笑いかけ、そして心の中で馬鹿な奴だ、と思う。
中途半端な良心は身を滅ぼす。
案の定ノートを貸してくれた莉倫は西納達に呼び出され、責められた揚句無視され仲間となった。
一人こう言う奴を作れたら後は同じような奴を見つけ、これを繰り返していけばいい。
ここから重要なのは、こうやって一人にされた奴は大抵同じ一人である自分の元へ寄って来る。
だが、絶対近付かせてはならない。
無視しろとは言わないが、側に置いてはいけない。
つまり一緒に行動をしない事。
「私といると貴女が迷惑だから…」
とか言って逃げるのだ。
私は以前、他の高校の友人である万川に別のクラスにいる友人の芽也子を助けたいと言われ、このやり方を試してみろと教えた。
が、芽也子は寂しさのあまり、無視される人間を増やす事をせずに最初に罠にかけ、近付いて来た雨市と行動を共にしてしまった。
嗤うわ。
結果、芽也子が声をかけた雨市はすぐに元のグループに復帰してしまい、(考えてみれば当然である。頼りにしてる雨市を取り上げれば、そりゃ芽也子を傷つける格好の材料以外何物でもない)雨市は当然、芽也子を無視するようになった。
雨市だけを頼りにしていた芽也子は、とても傷ついていたそうだ。
嗤うわ。
良心があろうと、一時でも集団無視に加わる奴を信用するなんて救いようもないが、こう言うのはよく起こりがちだ。
ちなみにこの方法は自分に友人を作るためのものでは決してない。
私はもう自分以外の人間を、他人かそれ以下の見知らぬ人としての気持ちで見始めている。
他人を哀れむ心、良心がほんの少しでも残っている人には絶対に向かないのでくれぐれもご用心を。
成功する保障は一切ありません。