テストでありがち風景
今日は初めてのテスト返しの日だ。
「ねぇねぇ、紗鶴、テストの点数どうだった?」
澤石が猫なで声で聞いて来た。
あぁ、またか、と思う。
テストが返却されてから五度目である。
他人の点数などどうでもいいじゃないか、と考える自分がおかしいのか。
他人の点数に興味は無い。
(実際、自分の点数は聞かれて答えることはあっても、人のは聞かない)
大体他人の点数を聞きたがる奴と言ったら、点数高い自慢したがりか、自分より下を見つけたい、自分に自信が無い奴しかいない。
私みたいなタイプはそう言う連中にとっては聞きやすいらしい。
それ以前に、順位や点数も貼り出されていると言うのに。
「…83」
不快感をあらわにしたまま答える。
別に恥ずかしいとも思わないので、聞かれたら答える。
ちなみに学年平均点より少し上である。
私は基本的に平均か平均より多少上の点数しかない。
「私は90点だったんだ〜紗鶴さ、点数が私より無いの情けなくない?どうして私の頭は悪いのって、神様に訴えたいんじゃないの?」
かく言う澤石は成績優秀である。
あんたからしたら、私の点数が悪いからゴミなんだろうけど、なら更に順位が下のあの子らに…って、もういい、言っても空しくなるだけ。
「あーよかったねー」
私の返事は棒読みである。
「紗鶴ったら、これ間違えたの?」
嬉々として私のテストの間違えた箇所を示す。
「あーうん」
「えぇ?簡単なのに」
澤石が近くにいた知りたがり仲間、美富利の肩を叩いた。
「ねぇ、紗鶴ったらこんな問題間違えてるよ」
「へぇ?簡単なのにね」
小ばかにした口調。美富利も頭がいいのだ。
「これで美富利が紗鶴より点数下だったら笑えるよね」
「あははっだね!安心しなよ、ちゃんと上だから」
これからテストがあるたび、こんなのを毎回相手にするのかと思うと、正直死にたくなる。
「私はあんたらみたいな、ごりっぱな点数の方に付き合うのはもうたくさんだから、あんたらからの干渉一切いらないから」
私はもう誰からも相手されたくないから、無視で結構なんだよ。
あんた達はいつもそう。
私の苦しさを思いやる事も無く、自分らがいいほうにばかり話を持って行けて、いいね!
しかし美富利は楽しそうに、
「私はそれでもよかったんだよ、あなたは点数無いから情けない思いをしてるんだろうし、私達みたいな頭のいいのと関わらない事であなたが救われるなら、私はそれでよかったと思うよっ」
「あー…頭が良くて全部自分で処理して生きていける人間はイイデスネ」
それからもう口を開くものかと思った。
「紗鶴はそうじゃないもんねぇ、そうじゃない人って自殺するみたいだよ。紗鶴は自殺しないの?しないから周りは紗鶴の情けなさに気づかないと思うわ。それで…」
澤石の言葉を意識して締め出し、自殺について考える。
糞澤石や糞美富利いわく、私はその立場にいるらしい。
自殺した周りの人は言う、死ぬくらいなら打ち明けてくれたらよかったのに。
みんなサインは出してるのに、周りがそれを受け止めなかったんだ。
誰もそのサインを受け止めないから、自殺まで行くんだろうな。
私は自殺しない、これは糞どもの仕打ちの度に誓う。
私の周りに私を受け止める人はいないし求めていない。
私が一番私を受け止めている。
自殺しないだけましなのか、自殺しないからわから無いのか…。