4話 新イベントステージ!
すぐ別の事に目移りして集中が出来なくなるヤツは誰だ?
俺です。
前回と比べてなお一層出来が悪い、一度真剣に書かなくては。
このゲームが開始され二十日経った頃、俺達は強制的に一番近い拠点に戻され、意識を失った。
その間に行われていたのは大型アップデート。
俺達が意識を飛ばしている中、そんなことして大丈夫なのかとは思ったが、現に何の問題も無く動いているため心配は多分要らないだろう。
そしてこの大型アップデートの内容だが、ギルドメンバーの役割の増加、防具の映像化、調理スキル実装、髪型や色の変更、毎時で更新される最大レベルプレイヤー、対人戦ランクの実装、などなど。
対人戦ランクの実装は今までの勝負も加算されるらしい。
ちなみに俺のランクはEだった。
防具の映像化というのは今までに防具を変更しても外見が全く変化する事が無かったのだ。
流石にこれではプレイヤーの気が滅入るだろうと製作チームPGRからの贈り物だそうだ。
全く持って大きなお世話だと言ってやりたいところだが、このアップデートによりミヤビがやる気を出してしまったのだ。
製作チームの無駄な計らいなのか何なのかは知らないが、鍛冶スキルには防具製作も含まれるらしい。
さて、これからどうするかなのだが・・・
「大型アップデートの防具の外見実装を記念して特別イベントボスが出てるみたいだよ。各地に居る黒フードの女性に話しかければ暗闇の森っていう期間限定ステージに行けるみたいなんだ。それでそこのイベントボス、アラクネを倒せば特殊な服系防具装備を作れるらしいんだ・・・どうかな?」
ミヤビは静かで落ち着いた声だけどもその奥には確実に制作意欲が見える。
確かに倒す事が出来ればいい装備が手に入るかもしれないけどデスゲームとかいうぶっ飛んだものを作る奴らだ、どこかで落とし穴を作ってるに違いない。
俺が渋い顔で頬杖を突き窓の外を見つめていると、ミヤビは『寄生している身だし、無理は言わないよ。聞かなかった事にしてくれ』と、気遣いの言葉を掛けてくる。ああ違うんだそうじゃない、前も行っただろう俺とお前は同じだと、助け合っているんだと、仕方ない。
「・・・前言ったでしょ、私とミヤビは同列だって、寄生とか言わないで、ね?それじゃ行ってくるからさ」
笑いかけると少し俯くミヤビ、気にするなと一言残してから部屋を出て街に出たが、きっと帰って来てもあの調子だろうし、良い戦果を挙げて良い装備を作ってもらうか。
★――――――――――★
「ここが暗闇の森・・・」
ヘアーカラーは薄い青。髪色変更¥100,000
髪型は腰まであるロング。髪型変更¥100,000
プレイヤーネームはツバメ、レベルは51、対人戦ランクはFからSまである中のAランクである。
メインとして使う武器は刀、振るわれた一太刀は敵を一刀両断してきたという。
レベル51ともあれば十分前線で活躍できる、活躍していたのだが、何故彼女ともあろう者がアップデートによるイベントステージに来ているのかと言うと、その理由は至極単純。
「新防具・・・絶対に手に入れないと!」
装備のためだ。
それ以前にこのイベントステージはその防具のためだけに作られたわけなのだが、PGRが優しいのはここまでだった。
「ッ!」
ツバメは反射的に【抜刀】を発動し、後ろに寄って来たNPCモンスターを一太刀で切り捨てる。
消える前にそのモンスターは何なのか確認するとそれは四番目の街を越えた所のはずれにある魔女の森と名のつくステージの草手という草が寄り集まった人型をしたモンスターだ。
そいつの攻撃範囲は広く、攻撃力も高い。
もしその攻撃を受けてしまえば、生命や耐久が低いものなら一撃で全てを持っていかれる程だろう。
その分HPと防御は低い。
「このイベントステージが魔女の森と同等の難易度なら一撃死も必至・・・ならこっちも一撃で仕留めていくしかないかもしれませんね・・・」
ツバメはこのイベントが魔女の森と同等の危険度があると仮定して進む事にした。
魔女の森は目に見えて分かる程レベル適正が高く、未だに奥まで辿り着いた者は一人もいないのだ。
そこに挑んだプレイヤーは何人もいたが、その大半が帰って来る事は無かった。
★――――――――――★
「暗闇の森とか・・・怖すぎ」
両手に銃を既に装備した状態で超絶不気味な新イベントステージを歩く一人の女性、俺。
最初の場所には黒い葉を付けた大木と申し訳程度のランプが8個、後は黒フードの女性NPCと大きな掲示板だけだ。
どうやらこのスタート位置は安置でHP自動回復機能も付いている。
いや、うんスタート位置が安置じゃなかったらこんなとこからすぐに帰るけどね、ミヤビには悪いけど。
きっと彼女なら分かってくれる。
ウッドブルーム。
攻撃はそこまで高くないが(レベルの割には)物理防御魔法防御が異様に高く、暗闇の森における強さの序列の中で防御はトップクラス。
「んなヤツになんで会っちまうんですかね」
俺の目の前には木の姿をした化け物が口を歪な形に変化させて笑っている。
これは確実に見下しているようだ。
せっかくさっきまで順調に進んでいたというのにここにきてまさかの面倒な敵に遭遇、おそらく出会いがしらにパリィ速攻戦法は活かせないだろう。
だからといってどうするのか、選択肢はただ一つ。
「やるっきゃないっしょ」
先手必勝電光石火。
「三連凶弾!」
【一発目命中!】
【二発目命中!】
【三発目命中!】
「おいおい、マジで?」
ウッドブルームはただそこに佇んでいる。
俺の一撃瞬間最大火力技はウッドブルームに受け切られてしまった。
【辻斬り】
【ローグガルフを倒した!】
「これで22体目・・・防御が低くて良かったです…」
ツバメは太刀、黒真・小烏を鞘に収めつつ安堵する。
彼女がこの森に来て戦った敵の数は89体、それのほどんとがローグガルフと草手だ。
ローグガルフはクルウルフの上位種の亜種体である。
魔法タイプに強化された亜種体は攻撃は物理のみだが魔法防御がこれまた異様に高く(ウッドブルームよりは低い)クルフルフの上位種と舐めてかかると怪我では済まない。
「うぉぃぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!まだかあああああ!!!」
ちょっと息抜きのために背を伸ばしているとシャウトの混じった怒鳴り声が別の場所から聞こえてくる、続けてバララララララッという音やガウンとか、まるで銃声だ。
おそらく敵が硬すぎて倒しきれないせいで叫んでしまったのだろう。
「助けに行った方がいいんでしょうか・・・」
口から発した言葉には疑問だったが、既に身体は声の方向に向かって走り出していた。
「はよ逝けやああああああああッ!!!」
【三連凶弾】
【一発目命中!】
【二発目命中!】
【三発目命中!】
喰らうウッドブルームは怯まない。
「うぇぇぇぇぁぁぁぁあああああ!!!!」
【速射】
【ウッドブルームにダメージ!】8発
【ウッドブルームにクリティカルダメージ!】32発
怯まない。
「ああくっそ!やっぱパリィをキメてやんないと通らないか!」
自分の容姿を気にしない素の喋り方に戻っている事にすら気付かず愚痴る。
見た感じ攻撃は通っているのだろうが全くひるむ様子が無いとすると防御は当たり前に高く、HPも馬鹿みたいに多いのだろう。
「危ない!」
「は?」
声に反応して敵に目を戻すと近づくのは木の枝。
「ヤッバ・・・」
俺の恐怖に染まる姿でも見えたのか、ウッドブルームの口の形はなお一層歪になる。
「避けて下さい!!」
「バーカ、こいつを待ってたんだ」
【直感】
【パリィ】
あたりにピシッと気の抜けた音が鳴り響く、その音はパリィが確定的に成功した音だった。
【確定的成功だ!】
「そこの人!今の内に一番強い技叩きこんで!お願い!」
「は、はいっ!」
ウッドブルームを挟み反対側の刀を持った人に頼みこむ、これで俺も速射をぶち込めばある程度は・・・
「【抜刀】」
柄に手を添えたかと思ったら既に刀を振りぬき、ウッドブルームを怯ませる。
「・・・え?」
「まだまだッ!【刺突】!」
振り抜いた刀を滑らせるように左手に添え、狙いすますように腰を少し下げたとまた思ったら、青い剣筋だけを残して俺の隣で刀を収めていた。
同時にウッドブルームは光る粒子となって消えていく。
「…マジか」
「大丈夫ですか?」
こうして俺は今回のゲームの初めての実力者と出会った。
Name:ツバメ
LV:51
STR(筋力):84(+10)
DUR(耐久):1
CON(体力):1
VIT(生命):1
AGI(敏捷):76(+10)
DEX(器用):26(+10)
POW(精神):1
FOR(理力):1
INT(知性):1
LUK(幸運):1
〔メインスキル〕
刀スキル【抜刀:LV・M】発動までにラグがあるが、範囲内ならば必中、クリティカル確定。
刀スキル【辻斬り:LV・M】すれ違いざまに斬り付けを行う。
刀スキル【一閃:LV・M】目にもとまらぬ速さで相手を斬り付ける。
刀スキル【刺突:LV・M】クリティカル確定。
刀スキル【二即斬り:LV・M】当たれば二度のダメージ。
刀スキル【連続斬り:LV1】スキルレベル、AGI、DEX依存により変化。
〔サブスキル〕
動作スキル【跳躍:LV・M】【隠密:LV・M】【観察眼:LV・M】
付与スキル【武器使用速度:LV・M】【氷属性:LV・M】
右手武器:黒真・小烏
左手武器:無し
〔特殊スキル〕
【筋力増強】解放条件:STRが50を越える。
【瞬時加速】解放条件:AGIが50を越える。
黒真・小烏
あるダンジョンでのレアドロップ武器。
刀系統。
【筋力増強】
基本攻撃力が上昇する。
【瞬時加速】
名前通り目に見える範囲でなら瞬時にそこまで移動できる。