プロローグ?
「我は帰ってきたぁ!」
学校から自室のドアをケアぶるような勢いで開け、鬱憤を晴らすように放り投げた学園指定の鞄はクッションの上に上手く跳ねて乗る。
それを確認せず机に向かいパソコンを立ち上げ制服のブレザーをベッドの上に投げ、シャツのボタンをはずしながら皆が集まり会話ができるツールを開く。
「チャット立ち上げてっと・・・うわ、集まってるな。やべぇ更新されまくりで重いぜ」
ツールを立ち上げて見ると既にそのメンバーの核なる方々はもう揃っていて、俺が会議部屋に入室した事を確認するなり早速絡んでくる。
シャツを投げ捨て朝に椅子にかけて用意しておいた私服を素早く着込む。
既にチャットには「おいおい無視ですかー?」などの煽りを含めた言葉が俺に向けて発せられている。
☆ー☆
【ルーフェさんが入室しました】
愚民 :おぉやっと登場だな
ラッカー :姐さん待ってました!
ルルイエ@旧支配者:これで七人かー
華艶 :こんばんはー
★レグルス :遅かったな
てんかす :せやな
愚民 :反応無いな
ラッカー :おいおい無視ですかー?
☆ルーフェ :やはー☆皆のアイドルるーふぇちゃんだぜっ
ラッカー :いつにも増してキモイっすね姐御!
☆ルーフェ :お~っと?らっくんそんな事言うなんて酷いよ!
★レグルス :うるせぇ、面倒だから本題に入るぞ馬鹿共
:お前等今回出たアレ持ってるよな?
☆ー☆
アレというのは世界初らしいVRMMORPG【The World】というものだ。
俺はこの名前を聞いて少しの期待を持ちながら「時間は止めれるの?」と聞いたところそんな話は無いらしい、詐欺だ。
もちろん背後霊は使えるのかとも聞いたさ、お前が思ってるような都合の良いヤツはいないって言い切られたけどね。
とにかくこのVRMMORPG【The World】は数量限定販売となって抽選で当たった者のみ遊べるという形になったらしい。確かに抽選の方が平等とも言える気がする。
そして今回俺は抽選クジを10枚程買ったら運良く四つも当ててしまい、何かイカサマ、インチキしたんじゃないかとか言われてしまったが、俺にそんなイカサマしてもらえる繋がりとか技術を持ってないので何事も無く無事にこの件は終了した。
一個は俺が使うとして残りの三つはどうなったかというとレグルスとてんかすと愚民に恵んでやった。
ちなみにレグルスとはリアル友達的関係だがてんかすと愚民はレグルスの友人だ。面識は無い。
どうやって恵んだか?それはレグルス経由であの二人に届いただけという話、もちろん報酬は頂いている。
あと俺はルーフェだ。
☆ー☆
★レグルス :もう明日の午前10時から開始だぞ、楽しみで胸が張り裂けそうだ
☆ルーフェ :その時には私がバラバラにして埋めてあげるねっ☆
★レグルス :比喩に決まってんだろ
ルルイエ@旧支配者:そろそろ落ちますね、早く寝ないと寝坊してしまいそうなので
ラッカー :おっつー
☆ルーフェ :お疲れ様♪
華艶 :お疲れ様ですー
愚民 :おつおー
★レグルス :お疲れ様です
てんかす :乙
★レグルス :もう俺も落ちるわ、お前等どうする?
ラッカー :なら俺もーおつおつー
愚民 :んじゃ俺もー
てんかす :便乗
華艶 :では私も落ちますね
☆ルーフェ :じゃあ解散だねっまた明日☆ミ
ラッカー :やっぱ姉さんキモイっすわ
☆ー☆
★ー★
【レグルスさんから1対1で連絡があります】
レ「おい、いるか」
ル「どうしたよ城谷」
レ「前情報だと女に化けれるらしいぞ、お前どうするんだ?」
ル「女キャラだろ」
レ「ぶれないな」
ル「泣く子をさらに泣かするーふぇちゃんここに参上っ☆」
レ「やっぱキモイな」
レ「しかしお前本当運良いよな」
ル「そうか?」
レ「ガラガラで旅行券当てたり事故に遭った時も車が目の前スレスレで通り過ぎていったりと、お前なんか加護でもついてんじゃねーの?」
ル「幸運の女神と呼んでくれていいよ?」
レ「・・・まぁいいや、また明日な」
ル「早く寝るんだぞっ☆」
レ「なんでも星付ければ良いと思うなよ」
★ー★
晩飯と風呂を済ませ自室に戻る。
大して何もすることがないのでパソコンの電源を落とし、投げ捨てた制服を雑にしまい込み、目覚ましをセットしてベッドの上に寝転がる。
20分くらい携帯をいじっていたが疲れがたまっていたようで欠伸が少し漏れる。
気付けば11時を過ぎていたのでエアコンにタイマーを掛け、布団を被り部屋の電気を落とし目を瞑る。
明日が楽しみで少し寝付けそうになかったが、以外と早く眠りに付けた。
【ようこそ、The Worldへ】
入門してないよ。
周りは薄い青の世界、よくゲームで見る設定とかキャラ作成の背景画面だ。
気付けば自分の前には体型だけのマネキンのようなものがあり、説明文にはここで操作するアバターを作成してくださいとある。
【キャラクター作成】
もちろん女性、名前は安定のルーフェ。そして髪の毛はレイヤーミディ・・・いいなこれの栗色の髪でいこう。
身長はあまり下げたくないので170代をキープ、やっぱ長身の方が好きだ。
どうやらバスト変更もできるようなので平均的な大きさに設定、服を着たら膨らみがそれなりに分かる程度だ。
おおまかな設定をした後細かい設定まで無駄にこだわりをかけてやったおかげで睨めばキリッとした感じのキャラを作る事が出来た。
流石にチャットのような語尾に☆が付く様な茶目っ気のある演技をする自信が全くないのでそこんところのフォローのための形だ。
【スキル・能力値】
スキルか、一通り見た所ソードスキルとかなら剣技が使えるとか、メインとサブが二個まで序盤で得られるらしい。
俺はそこであえてメインに受け身(盾系含む)スキルを取得、サブに射撃スキル・投擲スキルを取ってみる。
次は能力値
STR(筋力)=基本攻撃力上昇
DUR(耐久)=基本防御力上昇
CON(体力)=スタミナ上昇
VIT(生命)=基本HP上昇
AGI(敏捷)=速度上昇
DEX(器用)=命中率回避率
POW(精神)=ダメージ発生時反動減少
FOR(理力)=魔法攻撃力防御力上昇
INT(知性)=魔法発動速度上昇
LUK(幸運)=色々と恩賜があるとかないとか
どうやら初期ボーナスで30もらえるようなので適当に振り分けて見る。
STR(筋力):1
DUR(耐久):1
CON(体力):1
VIT(生命):1
AGI(敏捷):1
DEX(器用):1
POW(精神):1
FOR(理力):1
INT(知性):1
LUK(幸運):31
なんてふざけた振り方なんでしょうか。
どんなゲームをやる時でも絶対に運系に一度は全振りしてみたくなる性格なんだこれが。
【初期武器・支給アイテム】
武器の種類は剣・槍・斧・杖・銃と五つあったので、射撃スキルも取った事だし何も迷う事は無く銃を選択した。
アイテムの方はHP小回復P×10とMP小回復P×10と帰還の移術の三つが自動的に貰えて、他に一つだけ自由に選んでもらえるという事なのでボム(小型)×5を取っておいた。
一通りキャラクター製作を終わらせて決定を押す。
すると最後にVRMMORPG【The World】をお楽しみください!という文が大きく出されたかと思うと周りの景色が真っ白になる。
だがそれも一瞬の事で、瞬きをすればいつの間にか綺麗な街並みが見えた。
そこには他にもキャラクター作成を終わらせた人達が大量に街の中央・・・広場に集まっていた。
とにかく外に出て戦闘なるものをしてみたく、他の6人を探すのを後回しにして探検をしようと思った矢先、突然この大きな広場に人がたくさん転送?されているのだ。
瞬く間に人は広場に群がり周りからは一体何なんだという疑問の声からイベントでも始まるのか?という歓喜の表情をしながら楽しむ者まで色々な輩がいる。
そして俺の隣には見知った友人が転送されていた。髪の毛が赤色だ、そういう趣味だったんだな。
あと少し目つきが悪くなってる。
「おぉっ!レグルスじゃん!」
「・・・は?お前誰だよ」
「這い寄る美少女ルーフェたんですっ☆」
「お前か・・・リアルの欠片もないな、それが理想のタイプか?」
思わずいつものテンションで挨拶をしてしまった。俗に言うキラッ☆のポーズでの自己紹介である。
なんだかんだいって俺も浮かれているらしい、だが楽しいから仕方が無い。
「しかし良く出来てるなー、どんだけ作成に時間かけた?ん?」
レグルスが目だけが笑っていない笑顔で容赦無く頬を抓ってくる。
さっさとキャラクター作成してすぐ遊ぼうと最初に言ったヤツは俺なのでその言い分を忘れたのかという俺怒ってるからアピールに見える。
「痛い!痛い痛い!痛いって!物凄く痛みを感じるよ!」
ガチ目に痛かったので涙目で手を引き離そうとするが、離れる気配がしない。
きっとSTRをガン上げしたんだろう。
流石に気がすんだのか、最後に思いっきり引っ張ってから解放してくれた。少しヒリヒリする。
そんな風に茶番劇をやっているといきなりメニューが開かれ、ヘルプから一番上の項目にある【最初で最後の説明】が開かれる。
次の瞬間その選択画面から真っ白な球体に口の様なものが描かれた物が飛びだしてきたのだ。
訳も分からずその光景を見ていて、レグルスの方を向いてみると彼もまた同じように白い球体が飛び出ていた。
その白い球体はが口を開く、内容は「今からこのVRMMORPG内で死んだらリアル連動タイプであの世逝きだよ~簡単に言えばデスゲームだね!クリアすれば出れるから頑張って!」
というもの。
最後に
「みんなにプレゼントだよ!アイテムボックスの浄化石ってアイテムさ!ほら使ってみて!」
と、その白い球体は勧めるのではなく強制的にそのアイテムを取りだし使用したのだ。
同時に周りの人たちから悲鳴とか、そういう叫び声が聞こえる。
俺は反射的にレグルスの方を見やった、彼はそこまで細かなキャラクター製作をしなかったらしいが、髪の毛の色は赤色に変えていた。だが今の彼の髪色全く曇りの無い赤色ではなくいつもの黒髪だったのだ。
あと目つきの悪さが元に戻ってる。
我に帰りメニューを見直すと既にその白い球体はどこにもおらず、この最初の街の広場に混乱だけを残して消え去ってしまったようだ。
レグルスは口をぽかんと開けたままこちらを向き固まっている。
どうかしたのかと問い掛けると我に帰ったのか、頭を振り俺に指を刺してくる。
「お前・・・何も変わって無いじゃないか」
「はぁ?お前が変わって俺が変わって無いはずが・・・」
言いかけた、頬に触れるはずの無い自分の髪の毛がそこにあるのだ。もちろんあの栗色だ。
身体を見下ろし振れて見れば男の時とは全く違う華奢なもので、胸もある。
メニューから写真というものがあったのでそれを自分の方向に映してみる、そこには時間を掛けて製作したキャラクターが存在していた。
「えっ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええー!!」
街の広場に【女性オリジナルボイス:072】の一際大きな叫び声が響いた。