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三冊目+第四章:一冊目

更新が遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。

少女は温かい布団の中でゆっくりと目を開けた。

家の中は静まりかえり、外を飛び回る雀たちの声がよく聞こえる。

壁に目を遣ると時計の針は12時過ぎを指していた。

両親は仕事に行っている。久し振りに穏やかな平日だと、少女はぼんやりと天井を眺めた。

夕べのことを一つずつ思い出していく。

いつものようにいじめの標的にされ必死に逃げたこと、自殺を考えたこと、自殺屋という店に、出会ったこと。

そしてその店を借りたこと。いつの間にか家に帰ってきていたこと。

思い返してみれば、まるで夢のような出来事だった。

自殺屋などという聞いたことも見たこともない店が、存在したのだ。

そこまで考えて、少女は首を机の方に向け、その上に積んである3冊の本を見た。

静かな部屋の中で、その本の周りは一際静かで重い雰囲気に包まれている気がする。

考えてみれば、自殺屋も、あの店主も同じ雰囲気を持っていた。静かな家が立ち並ぶ中に、一層静かな佇まいの店。その中にいた、店主。彼もまた静かな、少し怖いような悲しいような雰囲気を纏っていた。形は同じ人間なのに、どこか異世界の生き物のような。

それでもその目は優しかった。おそらく少女が今まで出会ってきた生き物の中で、一番。

布団の中から腕を出してじっと見つめる。手首の絆創膏は、夕べ店主が貼ってくれたものである。

そっと剥がしてみると、傷痕は残っているものの、血は完全に止まり皮膚はくっついていた。それでもこれは確かに、自殺をしようとした証拠。

いじめられる苦しみから逃げ出そうとした、証拠なのだ。

「………」

少女はゆっくりと体を起こし、ベッドから出て立ち上がった。

机の上の本へと向かい、1冊の表紙を片手で開く。そこには一枚の紙切れが挟まっていた。何かと思いめくるも、まっしろである。

しかしよく見ると、何かが書いてあった跡がある。年月が経ち、文字が消えてしまったのだろう。

「………名前…かな……」

かなり薄くなってはいるが、そこに書いてあるのは誰かの名前らしかった。おそらく男性の名前だろう。これが一体何なのかわからなかったが、今度店に行ったときに店主に聞いてみようと、少女はその紙切れを元に戻した。

少しの空腹を感じて、少女は部屋を出てリビングに向かった。

歩いていると少々足首が痛い。昨日逃げている間にひねったのだろう。人間とは何かに必死になっていると、痛みなど感じないものなのだ。

リビングに入り、そこからつながっているダイニングに入ると、テーブルの上に二つの皿と書置きが見つかった。皿で固定されている書置きには、母親の字が書かれていた。

「体は大丈夫?目が覚めたら食べてください。今日は少し帰りが遅くなります。お父さんも出張です。何かあったら電話してください」

少女が幼い頃病弱だったせいもあり、母親は過保護だった。少し熱があるだけでも必要以上に心配し、頭が痛いなどといえば病院に電話をする騒ぎなのだ。普段は心配しすぎではないかと思うが、今日はその過保護に少し感謝した。

用意されていた食事を電子レンジで温め直し、空腹を満たしたあと、少女はまた自室に戻った。

椅子に座り、自殺屋の本を手に取る。そして、硬い表紙をゆっくりとめくった。



『自殺とは』


自殺 [名]自分で自分の命を絶つこと⇔他殺


自殺とは

自らを殺すと書き、そのままの意味の言葉である。

自殺とは

自らという人間を殺める、殺人である。

自殺とは

取り返しのつかない行為である。


自殺とは


悲しみを生み出す行為である。


空を見上げて考えて見てほしい。

あなたは自分を殺したいのだろうか。

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