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一冊目:自殺

死は万人に訪れるものである。

死は神が決めた運命である。

人間はそれに従う使命を負ってこの世に生を受けるのである。

運命に逆らう術は、何人たりとも持ちえない。




それでもその運命に逆らおうとする店が、存在する。



自殺屋




*****

古めかしい住宅地の中に、一際古そうな店が佇んでいた。

磨りガラスと木材で出来た引き戸が、ほんの少しだけ開いている。

ゆっくりと手をかけて戸を開け中に入ると、一人の男がただ黙って静かに座っていた。

目が合うと、ゆっくりとその口元を笑みの形に変える。

「いらっしゃいませ。どうぞお掛けください。ここは自殺屋です。貴方の為に本をお貸し致しましょう」

そして男は本を開く。



『自殺』


File1:東京都/18歳/男性

大学に落ちた。

もう俺なんて生きていても意味がない。

高校でも失敗して私立にいったのに、浪人までしてこれ以上親父や母さんに迷惑はかけられない。

どうせ生きていてもなんの役にも立たないなら、せめて死んでこれ以上周りに迷惑をかけない。

それが今俺にできる、一番の親孝行。

ごめん、親父、母さん。


File2:千葉県/15歳/女性

辛い。

学校に行けば皆からいじめられて、家に帰ればお父さんが私を殴ってくる。

こんなに痛い辛い思いをするなら、死んでしまうほうが楽。

もう誰も信じられない。

お母さんはどうして私を生んだの?

捨てるなら生まなければ良かったのに。

もう耐えられない。

もう二度と人間になんか生まれたくない。


File3:兵庫県/21歳/男性

何もうまくいかない。どうして俺ばっかりこんな目に遇わないといけないんだ。

俺は何も悪いことなんてしてないのにどうしてこんなに責められないといけないんだ。

こんなろくでもない人生、とっとと終わらせてやる。


File4:福岡県/25歳/男性

鬱と診断された。

何もする気が起きない。体がだるい。

こんなこといつまでもしていても仕方がない。

薬のせいで頭が痛い。

俺なんて生きていても意味がない。

もう、疲れた。



これはほんの一部ですが、これまでに自殺をした方の遺書です。

手紙に書いて遺せるならば、なぜ誰かに話せなかったのでしょうね。

苦しい気持ちを持ったまま、なぜ逝ってしまったのでしょうね。

この本は彼らが生きていた証拠です。神に逆らえなかった、哀しき証です。

貴方はこれを書かずに済むと良いですね。



自殺を、するのですか?

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