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4.酔いどれ軍団ミニスカサンタにキュンとする

4.酔いどれ軍団ミニスカサンタにキュンとする



 秋元が店に入ると、一緒に来た女の子が席に案内し、秋元との隣に座った。 良介たちは適当に散らばって席につくと、とりあえず二人のミニスカサンタがやってきた。

「いらっしゃいませリサでーす」ロングヘアーのミニスカサンタが井川の横に座った。 誰が親玉かちゃんと見極めているようだ。

「ユウでーす」少し小柄でショートヘアのミニスカサンタは軍第一のイケメン小暮の隣に座った。 名取がいきなり、その子にちょっかいを出す。 どうやらタイプらしい。

 すぐに店長らしい黒服がやって来て秋元に耳打ちした。

「今日イヴなので女の子たちは早めに返します」

秋元は頷いた。「そんなに長居はしないよ。 いちばん安いセットで頼む。 それからあと一人…。 ミキちゃんを呼んでもらってもいいかな?」

「かしこまりました」店長らしき黒服の男は柔らかな笑みを浮かべて下がって行った。 そして、すぐに秋元が指名したミキがやってきた。


 “コ”の字型の席の真ん中に秋元。 右隣にミキ、中川、井川、リサ。 左側には最初についたレイ、名取、小暮、ユウ。 良介と青田は通路側の丸椅子に座っていた。

 つまりは、こういうカップルが自然と成立する。 秋元・レイ、ミキ・中川、井川・リサ、小暮・ユウ。 名取と良介、青田があぶれる。

 この配置で、いちばん貧乏くじを引いたのは名取のようだった。 良介と青田は女の子に対する独占欲はない。 適当に話をしてみんなが楽しんでいる様子を眺めていればそれでよかった。 名取はタイプのユウに一生懸命声をかけるが、なかなかうまくいかない。 レイが気にして、名取に話しかけるが、名取の心はユウに一直線だった。

 名取は席を立つと、小暮とユウに席を詰めるように言うと、ユウの反対隣に陣取った。 小暮は名取の気持ちを察して、ユウとレイの二人を相手に適当に会話を楽しんだ。 

 名取が、これでユウを一人占めできると思った矢先、井川が叫んだ。

「チェンジ! お前ら全員取っ替えだ!」

『また始まったよ』良介と青田はそう思いながら、顔を見合わせ苦笑いした。


 これは井川の悪い癖だった。 ちょっと話が合わないとすぐに女の子を交換する。 しかも、自分についている子だけでなく、その場にいる子を全員。 良介と青田は以前に同じ状況を経験しているので、こう言う店で、井川と一緒の時は女の子に固執しないようにしている。


「えー! なんでですか? まだいいじゃないですか」せっかくユウちゃんとゆっくり話ができると思った名取は納得がいかない。

すぐに、店長が飛んで来て、女ん子たちに何か不手際があったのか聞いた。 良介は事情を説明して店長に誤った。 クリスマスイヴで女の子達も目いっぱいだからすぐには変えられないということだったので、席替えをした。 井川にはレイが付き、良介がお守役として隣に座った。 

 どうして井川が怒りだしたのか分からないリサはショックで泣きそうになりながら青田の横に移動した。

 レイは上手く井川の相手をしているようだった。 しばらくして店長が新しい女の子を二人だけ連れてやってきたが、井川は「もういい」と突っぱねた。 しかし、せっかく連れて来たので何とかしてくれと良介に言うので傷心のリサとユウに代わって貰うことにした。 ユウは席を立つ際にこっそり小暮に名刺を渡した。 名取が反対するかと思ったが、名取は新しく連れてこられた女の子にハートマークの目で見とれていた。

『なんだ、こいつは?』良介は呆れた。


 ようやく席が落ち着いた。 4組のカップルが楽しそうにイチャイチャしている。 組み合わせはこうだ。 井川・レイ、秋元・ミキ、中川・ヨーコ、名取・サオリ。 ユウとリサに代わってやってきたヨーコとサオリはどちらも“アゲハ”というファッション雑誌のモデルだという。

 良介と青田、小暮は丸椅子で楽しそうなオヤジ達を眺めながらこの後の話をしていた。

小暮はそろそろ電車の時間が危ないというので、会社に泊る覚悟を決めたようだ。

「秋元さんはちょっとヤバいぞ。 前も気が付いたら池袋だったと言ってたからな」と良介。

「えっ? だって、千葉でしょう? どうやったら池袋にたどり着くんですか?」小暮は目を丸くした。

「今日あたりは、赤羽とかにいそうな気がするよ」良介が冗談交じりに話していると、店長がやってきた。「そろそろお時間になりますが…」良介は井川に話して、これで切り上げることにした。


 楽しい一時はあっという間だった。 名取は未練があるようだったが、一人で残っても金が無い。 諦めるしかなかった。

 井川はとっととタクシーを捕まえて行ってしまった。 中川は上の辺りのカプセルホテルに泊まると言い、同じくタクシーを拾って乗り込んだ。 青田と秋元は、灘電車が間に合うと言って駅へ走った。 名取は良介と小暮が会社に泊ると言うので同行することにした。

「ちょっと小腹がすいたなあ。 ラーメンでも食っていくか」良介が言うと、小暮も名取も賛成した。

 

 深夜1時過ぎ。 赤羽駅の下りホームに空かばね止まりの京浜東北線の葵電車が入ってきた。 降りてきた乗客たちは早足でタクシー乗り場へ向かう。

 酔っ払って起きられない乗客を駅員が起こして歩いている。

「お客さん、終点ですよ」泥酔した客を揺り起こす駅員。

「なに? 終点?」うつろな目つきで立ち上がる酔っ払い。 千鳥足でホームに降りる。 駅の看板を見つめて呆然とする。

「あ、赤羽? あれっ?」思わず時計を見る。 時刻表を見る。 上りの電車はとっくになくなっている。

「またやっちまった!」天を仰ぐ秋元だった。



こんなことにならないように気を付けて下さい。

それではよいお年を!

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