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1.忘年会はクリスマスイヴ

1.忘年会はクリスマスイヴ



今年も残りあとわずか。 良介たちも得意先へカレンダーを持ってあいさつ回りに出る。

 小林商事は12月28日が仕事納めとなる。 忘年会は24日に決まった。 例によって良介が幹事を任された。


 今年は景気が悪く、会社の業績も上がらなかった。 とはいえ、忘年会くらいはやらなければ社員の士気も上がらない。 井川が発起人となって音頭を取った。 音頭を取っただけで段取りするのは良介だった。

「おい、日下部。 忘年会24日がいいんじゃないか? 休み前だし」井川がこう言ったのは12月13日。

 小林商事では仕事納めの納会が忘年会の代わりと言うのが慣例になっていた。 良介たちは仲間内でやっていたから既に17日で場所も確保していた。 しかし、井川は24日に全体会議があるからその後の方が人が集まると考えたのだ。 良介は面食らった。

 飲み会には賛成だが、同じ会社で2回もやるのは経済的にも辛い。 17日の線は保険として残しつつ、24日の場所探しをした。 インターネットで検索した飲み屋に片っ端から電話をかけたが、クリスマスイヴで金曜日。 忘年会のピークであろうこの日に、20人からのメンバーをこの時点で受け入れてくれる店はなかなか見つからなかった。 そしてようやく1件だけ見つかった。


 会議が終わり、良介と井川、それに秋元は先に会場へ向かった。 有名な居酒屋チェーンのその店は大部屋で小林商事の他にもう一つのグループが忘年会を予定しているということだった。

 席に着くと、コートを脱いで、ハンガーに掛けると、秋元はカバンを出窓の上に置いた。

「ちょうどいい置き場所だな」その瞬間、秋元は靴箱のカギを掘りこたつ式になっている足元に落としてしまった。「わあ! 鍵を落っことしちゃったよ」

「なんだよ! 世話が焼けるな」そう言いながらも一緒に鍵を探す井川。

 鍵も無事見つかり、ひと息ついたら早速、生ビールで乾杯。 飲み放題ではあるが、時間前なのでとりあえず別料金になる。

「まあ、いいな。 乾杯の練習だ」井川がジョッキを掲げる。

「カンパーイ! の練習」良介と秋元がジョッキを合わせる。


 三人のジョッキのビールが無くなる頃、メンバーが集まり始めた。 良介は到着順に会費を集めた。

「なんか、佐竹と宮西が来られなくなったらしいぞ」中川が良介に報告する。

「えー! ドタキャン? 今からじゃあ、キャンセル聞かないぞ」良介は参った風に言った。 しかし、こう言うのは想定しているので、実際の予定より3人くらい少ない人数で予約しておいた。

「しょうがないじゃないか。 社長が遅れてくるから足りない分は全部出させろ」いつもの調子で井川が言う。

「そうですね」良介も笑いながら相槌を打った。

「さあ、そろそろ揃ったか?」井川は席を見渡した。

「社長以外は揃ったみたいです」良介が言うと、他のメンバーも手で○のポーズを取って井川に合図した。 井川は頷いて立ちあがった。

「それでは、これより忘年会を始めます。 本日は飲み放題になっていますので、好きな物を好きなだけ飲んで下さい。 それでは乾杯!」井川が本日2回目の乾杯を宣言。 こうして酔いどれ軍団今年最後の宴会が始まった。


 鍋に火を付けると部屋の中が急に熱くなった。 加えて煙草の煙も充満してきたので窓を開けた。

「あー!」秋元が叫んだ。 窓際に置いていた秋元のカバンがなくなっていた。 名取が窓の下を覗くと、頭を抱えてしゃがみこんでいるサラリーマン。 その脇に秋元のカバンと散乱した書類。

「なんでこんなところに鞄なんか置いたんだ?」秋元は慌てて外に出て行った。

のっけからこんな調子で、いったいどうなってしまうんだ? このおやじたちは…。


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