追放先の辺境で始めた薬草園が王都を救うなんて聞いてません ~元悪役令嬢の静かな逆転劇~
最終エピソード掲載日:2026/03/08
断罪、と声が響いた瞬間、私の足元から音が消えた。
広間を埋める貴族たちの顔が、蝋燭の灯りに照らされてぼんやりと揺れている。誰もが正義の顔をしていた。誰一人、私の目を見ない。
王太子が宣告を読み上げる声は、どこか他人事のように平坦で、私はそのことに妙な安堵を覚えた。ああ、この人は最初から、私のことなど見ていなかったのだ。
隣に立つ金髪の女性が、目元をハンカチで押さえている。その指先に震えはない。
爵位剥奪。領地没収。辺境への追放。
言葉が並ぶたびに、周囲からため息が漏れる。
けれど私の心は、不思議なほど凪いでいた。
背筋を伸ばしたまま、広間を出る。石畳を踏む靴音だけが、長い廊下に反響した。振り返らない。振り返る理由が、もうここにはない。
馬車の窓から見えた王都の門が、ゆっくりと小さくなっていく。
懐に手を入れると、指先にひとつだけ残った薬草の種が触れた。前の世界で覚えた、あの薬草の種。
――辺境には、土がある。水がある。そして今の私には、誰にも奪えない知識がある。
唇の端が、わずかに持ち上がるのを感じた。
広間を埋める貴族たちの顔が、蝋燭の灯りに照らされてぼんやりと揺れている。誰もが正義の顔をしていた。誰一人、私の目を見ない。
王太子が宣告を読み上げる声は、どこか他人事のように平坦で、私はそのことに妙な安堵を覚えた。ああ、この人は最初から、私のことなど見ていなかったのだ。
隣に立つ金髪の女性が、目元をハンカチで押さえている。その指先に震えはない。
爵位剥奪。領地没収。辺境への追放。
言葉が並ぶたびに、周囲からため息が漏れる。
けれど私の心は、不思議なほど凪いでいた。
背筋を伸ばしたまま、広間を出る。石畳を踏む靴音だけが、長い廊下に反響した。振り返らない。振り返る理由が、もうここにはない。
馬車の窓から見えた王都の門が、ゆっくりと小さくなっていく。
懐に手を入れると、指先にひとつだけ残った薬草の種が触れた。前の世界で覚えた、あの薬草の種。
――辺境には、土がある。水がある。そして今の私には、誰にも奪えない知識がある。
唇の端が、わずかに持ち上がるのを感じた。
第1話 断罪の朝
2026/03/08 07:10
第2話 辺境の土は冷たくて温かい
2026/03/08 07:10
第3話 薬草は嘘をつかない
2026/03/08 07:10
第4話 熱と手のひらの記憶
2026/03/08 07:10
第5話 雨の日に届く沈黙
2026/03/08 07:10
第6話 名前のない処方箋
2026/03/08 07:10
第7話 王都からの使者と偽りの聖女
2026/03/08 07:10
第8話 証拠は土の中に眠っている
2026/03/08 07:10
第9話 断罪は二度鳴る
2026/03/08 07:10
第10話 陽だまりの薬草園
2026/03/08 07:10