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救済の余暇

作者:中西亮太
最新エピソード掲載日:2025/12/12
彼の救いは、彼女の恐怖だった。
正義は、いつも誰かを傷つけている。

──私はあの夜、人を生かしてしまった。
そして、その人に最大の恐怖を与えてしまった。

物語は、医師・緒方の手記から始まる。
取り調べ室と留置所を行き来しながら、彼は自分の行為を「救い」と呼ぶか「犯罪」と呼ぶか、言葉の境界で迷い続けている。

緒方は、昔から「正しくありたい」と願う人間だった。
中学では教師に反抗し、高校では理想を演じ続ける同級生たちの中で、
自分にだけ“役”がないことを恐れた。
誰かに必要とされたい。その渇きが、やがて他人を救おうとする衝動に変わっていく。

医師になった彼は、ある日、自殺未遂の女性・美月と出会う。
彼女を救った瞬間、緒方は思う。
「自分はまだ間に合った」と。
だがその信念は、いつしか“治療”から“支配”へと変わっていく。

美月を守ろうとするたび、彼女の自由を奪っていく。
生かすことが救いではなく、恐怖へと変わる。
そして、取り返しのつかない夜が訪れる。

彼は法の前に立たされ、「医師としての責任」を問われる。
だが、緒方が向き合っているのは法ではなく、自らの“善意”そのものだった。
──救いはいつも、誰かの痛みの上に成り立つ。

『救済の余暇』は、優しさの裏に潜む支配と、正しさの名を借りた暴力を描く。
人を助けることは、ほんとうにその人を救うことなのか。
それとも、自分を生かすための祈りなのか。
プロローグ
2025/10/24 22:23
自己融解
2025/10/25 00:20
妥協
2025/12/12 18:09
舞台
2025/12/12 18:10
太陽
2025/12/12 18:15
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