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私はお兄様を愛している  作者: こつめ
本編第3章 変化

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§お知らせ§


年内の更新は今回の、お話で最後となります

キリがいいかなと思い、いつもより多めに投稿しました


続きは年明けになりますので宜しければブクマなどして、お待ち頂ければ嬉しいです


本年は大変お世話になりました

来年も引き続き宜しくお願い致します

 問われたティアナは少し考えた。


 いけなかったのかな?


「一ヶ月くらい前に、私からお願いしたの。お兄ちゃんが欲しかったから、そう呼びたいって。そうしたらお兄様が許してくださったの。」


 エリオットは緊張しながらティアナを見つめた。アリーは胸の疼きを抑え、ティアナの頭を撫でる。


「そうだったの。知らなかったから驚いただけよ。お兄様が出来て良かったわね、ティアナ。」

「はい。」

 嬉しそうに、はにかんで答えるティアナを見てエリオットは息を吐いた。心臓に悪いな、と内心溢す。あれ以来タウンハウスの中でティアナに会うことは一度もなく、呼ばれるのは久しぶりだった。


 アリーが不快に思ったかもしれない。

 ティアナが叱られるかもしれない。


 色々考えて動揺を抑えるのに苦労した。気持ちを切り替え、給仕を見やり付け加える。


「コースはデザート以外全て並べるように。」

「畏まりました。」


 テーブルに料理を並べ終えるまで、三人とも黙っていた。給仕が退室するとエリオットが話し出す。


「すみません。何度も出入りされるのは煩わしくて。いつもこうして食事しているんです。合わせてもらえると助かります。」

 エリオットが告げるとアリーとティアナが頷いた。もう一度、ベールを外す。顔を晒さないようにしている自分への気遣いもあるのだろうとアリーは有り難く受け取った。


 それから食事をしながら、会話を楽しんだ。エリオットにとってそれは、今まで数えるほどしかなかった両親との晩餐とは全く違っていた。少しも苦にならず、会話が途切れても気詰まりにならない。和やかな晩餐風景だった。


 そういえば、とエリオットが切り出す。

「エマからそろそろ淑女教育の見直しを終えると報告を受けました。」

「あら。良かったわ。」

 ふふふっとアリーが笑う。

「ティアナは勉強を頑張っていると聞いた。これからも励むように。」

「はい、お兄様。」

 にこにこしながらティアナが答える。


 エリオットは水を飲むとナプキンで口を拭い、アリーに向き直った。


「私が当主になって五ヶ月経ちました。そろそろ領地に戻って領主就任の挨拶をしなければなりません。明後日、発つ予定です。」

「そうですか。確かに、自領の領民や近隣の領主たちに顔見せは必要ですよね。」

「ええ。ついでに、染色技法に用いる植物がどう育つのかも視察してきます。なのでおそらく戻りは一ヶ月程かかるかと。」


 ティアナが寂しそうにエリオットを見つめる。


「今後のことも考えて植物学者と地質学者を手配したいのですが、カーリア商会に打診すれば紹介して頂くことは可能でしょうか?」

「あら。ではバルクはどうでしょう?学位はありませんが、商人は訪れた土地で急に取引の話になることがあります。薬草などが取引対象の場合ある程度知識がないと話が出来ないので、それなりにあるはずですよ。」

「バルク殿が?」

「はい。土壌を観るのは流石に無理でしょうけれど、草花などの知識はあるはずです。カーリア商会の上級商人と呼ばれる極一部の商人は必ず、そういった知識を叩き込まれます。バルクもそうです。一度観れば専門家の手配も、しやすいのではないかしら。」

「そうですね、確かに。ではバルク殿に手紙で相談してみます。」

「ええ。是非。」


 話は進み、食事も終わる頃。最後にデザートと紅茶がサーブされ再び給仕が退室するとベールを外したアリーにエリオットが話しかけた。


「実はティアナのことですが。専属侍女をつけたいと思っています。」


 ティアナはデザートに手をつけていたが自分の話だと気が付くと、そっと手をテーブルの下に下ろした。戸惑ったようにアリーが瞳を揺らす。


「ティアナは子爵令嬢として淑女教育を受けている。いずれ貴族学園にしろ学校にしろ、侍女は必ず必要になります。その時に急拵えで付けても遅いと思うのです。気心知れた侍女が側に居るだけで、ティアナの助けになると思います。その為にも早くから信頼出来るものをつけるべきではないでしょうか。」

 至極尤もでアリーは黙り込んだ。


 確かに、そうだ。


 本来なら乳母の娘だったり、親戚の子女だったりが専属侍女としてつく。ティアナはもう10歳だ、進学まで三年しかない。


「そうですね、確かに必要です。」

「では、こちらで手配しますが構いませんか?」

「エリオット様が?」

「ええ。選ぶのはエマに任せます。彼女ならティアナと気が合う侍女を見つけてくれるでしょう。」

 エマが選んでくれるなら安心だ、とアリーは頷く。隣で、そわそわとティアナがアリーを見上げた。


「お母様、私に侍女がつくの?」

「ええ。そうよ。あなたが心を許せる、気の置けない侍女をエリオット様がエマと一緒に探してくれるって。」

 にっこり笑って答えるアリーにティアナは喜んだ。エリオットを見ると弾んだ声で話しかける。


「ありがとう、お兄様!私、すごく楽しみです!」


 全然慣れない呼び名に、どう顔を作れば良いのか分からずエリオットは淡々と答えた。


「ああ。」


 素っ気ない返答でもティアナは満面の笑みを返す。幸せな気持ちで、再びデザートに手を付けた。ほろり、とケーキが口の中で溶けた。

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