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私はお兄様を愛している  作者: こつめ
Interlude-Ⅳ 自存

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acte,Baruk Caria

 バルクは元孤児だった。


 孤児院を7歳で放り出されて四年、市場で日雇いの荷運びをして暮らしていた。

 仕事の合間に他国の日常会話を覚えたり、計算をしてみたり。

 身につけた特技を使って、仕事がない日は観光客相手に通訳をしたり。

 結構身入りがいいし、重宝された。


 しかし、どうやらそれが同じ境遇の奴等には面白くなかったらしい。


 ある日盗みの濡れ衣を着せられ、殴る蹴るの暴行を受けていたら仲裁に入って助けてくれたのがダビデ・カーリア男爵だった。


 市場を出入りする商人たちから、バルクのことを聞いて見にきたらしい。

「お前、うちで働かないか?」と軽く誘われた。

 何を気に入ってくれたのかは分からない。ただ、これはチャンスだと思った。


 いつまでも底辺なんて嫌だ、冗談じゃない。


 青タンだらけの顔で叫んだ。

「働く!」

 そう言ってついて行った。


 今思えば口の利き方が全然なってないし、なんなら馬鹿丸出しで酷かった。


 まぁ今も素はあんま変わってねぇけどな。


 カーリア男爵からは「これから私のことは旦那様と呼びなさい。」と言われた。


 まずは下働きから。

 いわゆる雑用だったが、同時に読み書きと他国語をみっちり教わりながら、いろんな国を旅した。

 それでも年に数回、シーヴァス王国に帰った。


 シーヴァス王国に帰国すると、必ず王都の屋敷へ連れていかれる。

 初めは、あまりの大きさにびっくりした。

 中に入って豪華さに、もっと驚いた。


 更に、そこには旦那様が目に入れても痛くないほど可愛がっているお嬢様がいた。


 アルマ・カーリア様は俺より三つ下だった。


「私のことは、お嬢様と呼びなさい。」

「……はい。お嬢。」

 睨まれた。

「さま。」


 最初は何もしていないのにいるだけで怒られた。よく分からないから近寄らなかった。

 どうやら結構気が強い。しかも中々お転婆だった。見るたびガヴァネスに怒られていた。

 

 何度も帰国のたびに屋敷に連れられていたら、少し仲良くなってきた。何がきっかけかは分からない。


「ま、いっか。」

 そんな風に軽く考えてお嬢とは、それなりに仲良く過ごした。


 下働きを二年勤め、13歳で学校へ入った。学校に通いながら見習いとして三年間、事務や経理を覚えた。

 15歳で学校を卒業して更に二年かけ、取引の補佐や外回りについてまわり、商人のやり方を学んだ。

 そうして17歳で初めて一人で契約を取って、一人前として認められた。


「晴れてカーリア商会の商人だ!」


 ずっと這い上がる為、商人を目指していた俺は仲間の商人たちにご褒美として大人の遊びを教えてもらった。

 

 もちろん、仕事は楽しい。だから、そっちが優先だ。

 でも気持ちいいことにだって興味がある。男だし。

 今までは金も時間もなかった。必死だった。

 これからは仕事も女も上手くやる!


 俺は誓った。

「妊娠や病気なんてヘマはしない、ちゃんと薬は飲むし相手は素人。一人とヤるのは一回だけ。」


 ある日「女癖悪いのね。」とお嬢に言われて吹き出した。


 いやまぁそうだけど。

 いい女はいっぱいいる、そりゃもう世界中。絞れないわけよ。

 てか平民なんて男も女も多少は、こんなもんだろ?

 

 処女や童貞を有り難がるのは高貴な方々くらいだって。


 なかなかにクズだと思うが、いかんせん俺はモテた。

 結構ガタイがいい。あっちもデカい。体力もあるから、いわゆる入れ食いだった。


 商人って自己紹介しなければ騎士を通り越して、傭兵と間違われる体躯。

 まぁ強面なのも、あるんだろうな。


 寄ってくるのは自分に自信がある、豊満美女が多かった。


 分かりやすくていいね、おっぱいと尻はデカいに限る。


 因みに商人てバレたら尚モテる、金あるし。


 そんなふうにして、あっという間に二年が過ぎたある日。


 お嬢が突然、病に罹って療養することになった。


 「はっ?」


 聞いた時には出国してた。

 そういや少し前になんか相談されたな?

 いやでも病気のこととか聞かなかったよな?


 なんだっけ?


 確か「好きな相手いないの?」とか?

 みんな好きだけど床上手な女が特に好きだなって答えた気がする。ゴミ見るみたいな目で見られたっけ。


「想像通りの答えだったわ。」って言われた確か。


 お嬢見た目裏切って毒舌だよな。昔からか。


 つーか元気だったろ?病気ってなんの病気だよ?


 旦那様に聞こうにも目に見えて落ち込んでるし、何やら忙しそうで聞けなかった。せめて手紙をと思って執事に聞いても、どこの国かも知らないって返された。


 それでも仕事はあるから、気にしつつも働きながら一年半が過ぎた頃。


「バルク。来月から他国の支店を回って視察してくるように。」


 旦那様から突然、特命が下りて俺は他国を飛び回ることになった。時々帰国して視察の内容を報告するように言われる。他国の支店を回るから、どの店も長期間になった。

 

 そうして五年が過ぎた頃。


「え?養子?」

「ああ。養子縁組をして、いずれはカーリア男爵家と商会を継いで欲しい。」

「お嬢は?」

「アルマはまだ療養中だ。継承権は放棄させる。」

「親戚とか、そう言うのは……。」

「誰にも文句は言わせん。その為に、この五年お前を一人で外に出したんだ。結果も出しただろう?」


 なるほど。

 そう言うことか。

 しかしお嬢そんなに悪いのか……。

 どこにいるか分かれば飛び回ってた時、会いに行けたかもなぁ。


「バルク、受けてくれ。」

「はい。」


 旦那様とお嬢の為だ。男爵家も商会も俺が守ってやる!!!


 奮起した俺はその後すぐ、屍になった。


 26歳までに貴族の教養とかマナーとか!覚えろってそんなん無理だって!死ぬ!


 養子縁組と後継者お披露目の夜会をする為、毎日来る日も来る日もみっちり扱かれた。


 なんとか、お披露目の夜会を終え貴族になってから、あっという間に四年が過ぎていった。


 その間、王都の下町で流行病が広がり義父上は支援をすることに決めた。その責任者に決まった俺は、同時に商会の副会頭になり日々対応に追われた。


 特に王都大教会には他の教会とは別に寄付もすることになり、何度か訪問することになった。


 流行病が収まると、俺はとりあえず腹心の部下を作るべくせっせと動いた。


 義父上は、どうやらまだまだ現役で頑張るみたいだから俺の代で困らないよう人材育てとかねぇと。


 今では、もうすっかり旦那様のことを義父上と呼んでる。


 最初違和感凄かった。慣れってすげぇ。


 しかし、俺が素人と思い切り遊べたのってあの二年間だけだったなぁ。


 もう俺、コルティザンとしかヤってねぇよ。

【コルティザン】

・貴族男性を相手にする高級娼婦

・教養や知識に優れ、口が堅いことなどが求められる

・夜会によっては同伴が許されている

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