acte,rose rouge
《シーヴァス暦357年 晩夏》
シーヴァス王国、第一王女ロゼリア・シーヴァス殿下。
人々は彼女を「王国の高貴な赤い薔薇。」と呼んでいる。波打つ艶やかな赤色の髪。濃く深い青色の瞳。艶やかな白い肌。豊かな胸。細い腰。丸く切り上がった臀部。すんなりと伸びた手足。誰もが振り向く容姿と、淑女教育で培った教養やマナーは人々から称賛を受けていた。
「聞いた?なんでも王女殿下は心に秘めた方がいらっしゃるそうよ。」
「私も聞いたわ、お相手にも秘めて想っていらっしゃるのだとか。」
「素敵よねぇ、どんなお相手なのかしら?王女殿下からお心を頂けるのなら、お相手だってきっと幸せでしょうに。」
王宮内の貴賓室を清掃しながらメイドたちが語り合う。
「気になるわ。」
「全くよ。」
「なんでも身分が低いのではないかと言われているらしいわ。」
「それならわかるわね、王女殿下が降嫁されるのですもの。公爵位が妥当でしょ?」
「そうよねぇ。」
メイドたちは手を休め、ため息をつく。高貴な女性の秘めた恋に夢中だった。
「聞いたか?また王女殿下に婚約の打診があったらしいぞ。」
「ああ。すごいな。何件めの申し込みだ?」
「数えきれないな。」
仕事の手を休めず、声を顰め噂し合う文官たち。
「それなんだが、ここだけの話。」
「なんだ。」
「どうやら王女殿下は思いを寄せている相手がいるらしい。」
皆が驚き、動いていた手が一斉に止まる。
「初耳だ。」
「どこで聞いたんだ。」
「どこだったかな。だが、それでなかなか婚約を受け入れないそうだ。」
「誰なんだよ。」
より声を顰めて囁く。文官たちが一人の同僚を食い入るように見つめた。
「それがあの、アーガン伯爵だと言われているんだ。」




